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【親権・監護権】不倫したら親権・監護権は不利になる?親権獲得できた事例・できなかった事例を解説します。
離婚の原因として民法でも認められている不貞行為。配偶者以外と不倫をすると有責配偶者となり、有責配偶者からの離婚請求は認められないなど、離婚する上では不利になってしまいます。
では、不貞行為が原因で離婚する場合、親権は獲得できないのでしょうか?
このコラムでは、不貞行為と親権・監護権についての基礎知識と、不貞行為が原因の離婚で親権・監護権獲得ができた事例・できなかった事例をもとに、不貞行為において、具体的にどのような行為をすると親権が獲得しにくくなるのか解説していきたいと思います。
親権・監護権の基礎知識についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
共同親権ついてはこちらの記事で詳しく説明しています。
不貞行為と親権・監護権に関する判断が直結するわけではない
親権・監護権の判断基準として、親の監護能力・適格性が考慮されます。具体的には、心身の健康や、育児の関与の度合い、子との情緒的結びつきが強固であるかといったものです。
不貞やDV・モラハラ・モラハラなど、婚姻関係の破綻原因になった行為が親権者として不適格だと主張される場合は、婚姻関係が破綻した原因がどちらにあるということよりも、その行為が子に与えた影響という観点から検討されます。子の性格・年齢・父母との関係性によっても子の受ける影響の度合いは異なるため、婚姻関係の破綻原因だけをもって親権者として不適格と判断されることはありません。
では、不貞行為が親権・監護権に影響を及ぼすケースはどのようなものでしょうか?「森公任,森元みのり.「子の利益」だけでは解決出来ない親権・監護権・面会交流事例集,新日本法規,2019」では、不貞行為と親権・監護権の決定についての事例が掲載されていますので、その中から紹介します。
不貞行為をしていたが親権・監護権を獲得した事例
母親が不貞行為をし、父親が子どもを連れて別居したが、最終的に母親が監護者に指定された事例
- 4歳と2歳の子がいるパート主婦の母親が、別居を機に友人と肉体関係を持つようになり、深夜まで頻繁にメールのやりとりをする、子が寝静まった後に会う、母方祖母、一時保育に預けるなどして不貞相手と交際していた。また、不貞相手を子らに会わせていた。
- 夫婦は再び同居することになったが、父が母の不貞相手とのメールのやりとりを偶然見てしまい、不貞が発覚。親族会議が開かれ、協議の末、父が子らを連れて父方実家で生活することになり、母も意義を述べなかった。
- 別居後、母が監護者になり、子らを引き渡すよう裁判所に申立てた。調査の結果、父母それぞれの予定する監護態勢には問題が無く、子どもも健康で、父母とも安定した情緒関係を形成していることが分かった。調査官は、母が子らを不貞相手に会わせたことに抵抗を感じていないことを問題視していた。
- 家庭裁判所では、父親の元で子らが順調に成長していることや、父親の監護態勢に不適格な点が見当たらない一方で、母親が不貞相手と長時間交信したり、夜間に子ども達を放置して不貞相手に会いに出かけたこと、子ども達を不貞相手に会わせたことは、子らへの心情に対し甚だ配慮に欠く行為であり、監護者としての適格性に欠けるとして、子らの監護者を父と指定した。
- 母は家庭裁判所の決定に不服申立をし、高等裁判所での審理の結果、母の不貞行為により子らの監護が疎かになったという証拠がないこと、子ども達の年齢では不貞行為の意味を理解していないため、現時点では心身の成長に悪影響を及ぼすとまでは言えないこと、母と暮らしていないことの方が子らの不安を助長しているという理由、そして母が不貞相手との関係を断ち監護養育に専念すると誓約していることから、母親が監護者と指定された。
出典:森公任,森元みのり.「子の利益」だけでは解決出来ない親権・監護権・面会交流事例集,新日本法規,2019,p54-59より
母親が不貞行為をしたが母が監護者に指定された事例
- 5歳と2歳の子がいる母親は、子らを寝かしつけてから深夜まで遊びに出かけ不貞行為に及んでいた
- 裁判所は、不貞行為によって子らの監護を疎かにした具体的事実や、子らに対して悪影響を及ぼした事実は認められないこと。不貞行為の意味を理解できる年齢に至っていない段階では、現在の日常的な監護の必要性が優先されるとし、母親を監護者に指定した。(東京高決平20・10・22)
出典:森公任,森元みのり.「子の利益」だけでは解決出来ない親権・監護権・面会交流事例集新日本法規,2019,p59より
上記の事例から、
- 子どもを世話しなければならない時間帯にも関わらず不貞相手とLINEのやりとりをしていた
- 不貞相手と会うために子どもを慣れない一時保育に預けた
といった事実だけでは、監護が疎かになったり、子の心情に悪影響をおよぼしたと裁判所に認定されない可能性があります。また、子の年齢が低い場合も、不貞行為の意味を理解できず、子の心情に悪影響をおよぼすとは言えないと判断される可能性があります。
不貞行為が原因で親権・監護権を獲得できなかった事例
母親が不貞相手との交際を優先する姿勢が著しく、父親が監護者に指定された事例
- 母親が長女、次女、長男を寝かしつけた後、不貞相手と密会を重ねる、次女を連れて不貞相手と食事をする、自宅に不貞相手を連れ込み長男の遊び相手をするなどしていた。
- 母親は一度交際をやめる旨を誓約したにも関わらず、高等裁判所での審理では前言を撤回し、不貞相手と交際を続けること、不貞相手と長男の接触は長男に悪影響はないと名言した。
- 高等裁判所は、母の監護継続期間は長く、子との親和関係も強固であるものの、母の不貞相手との交際を優先する姿勢が著しく、その点において監護者としての適格性に欠けると指摘し、嗣子を監護者に指定した(大阪高決平22・15)
出典:森公任,森元みのり.「子の利益」だけでは解決出来ない親権・監護権・面会交流事例集新日本法規,2019,p59より
母親の不貞行為が子に悪影響を与えたとして、父親が監護者に指定された事例
- 父、母、長男と3人で暮らしていたが、母が友人と不貞関係になり、父が仕事で不在の際に不貞相手をアパートに上げ、長男が眠っている間に性交渉に及んだりしていた。
- 不貞が発覚し、父親は長男を連れて実家に帰った。母は当日父の実家を訪れ、長男を帰してもらおうとしたが、父は応じなかった。
- 翌日夜、父は1人で母と同居していたアパートを訪れたところ、母が不倫相手と室内にいるところを確認したため、双方の両親を呼び、協議の上、今後の夫婦の方向性が決まるまで父側で長男を監護することになった。
- その後、母から監護者の指定と子の引き渡しの申立がされた。
- 裁判所は、別居前も父親が監護に関与しており、今後も監護環境や監護状況に特段の問題はなく、長男も父や父の父母に親和している様子がみられること、現状を変更することはかえって長男を不安定な状態に置くことになりかねないことから、父親を監護者と指定した。審判では、母の不貞行為に対する直接の評価はなされなかったが、家庭裁判所の調査官は、「不貞行為を持って、母が監護者として不適格とはいえないものの、長男在宅時に、男性と自宅において性的関係を数回持った行為は、父に対しても、長男に対しても配慮を欠いたものと言わざるを得ない」と意見を述べており、本事例においては、母の不貞行為の態様が悪く、マイナスの事情として評価された可能性が極めて高い。
出典:森公任,森元みのり.「子の利益」だけでは解決出来ない親権・監護権・面会交流事例集新日本法規,2019,p61-p66
上記の事例から、以下のような行為・状況は、親権者・監護者としての適格性を否定する事情となりえるということは留意しておいた方がよいでしょう。
- 子を放置して不貞相手と会う
- 子を不貞相手に頻繁にデートに同伴させる
- 子が在宅時に自宅に不貞相手を招いて性的行為を行う
- 不貞行為を継続する姿勢を見せる
- 子の年齢が高く、不貞行為が原因で子が監護者との同居を拒否している
まとめ
不貞行為があったとしても、親権・監護権は子の監護環境、監護態勢・監護補助者、子の意思など、さまざまな観点から総合的に判断されるため、不貞行為をしてしまった側が親権を獲得したい場合は、今後の監護環境や監護状況に問題がないことをしっかりと主張すること、子どもを優先する姿勢を見せることが重要になります。
また、不貞行為をされた側が、相手を親権者・監護者として不適格だと主張する場合は、不貞行為の事実をできる限り具体的に立証すること、不貞行為によって子の成長が阻害される事情や、子の心身が不安定になる事情を具体的に立証することが必要になってきます。
法律事務所リベロの弁護士は、約17年にわたり離婚事件を扱っており、過去の裁判等での実際の経験や現在の裁判実務等で培ったノウハウが豊富であることを強みとしております。親権についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
また、不貞行為の慰謝料請求・離婚については解決事例を掲載しておりますので、そちらも合わせてご覧ください。