物にあたる行為はDV?モラハラ?

配偶者からの暴力と聞くとどういったことを思い浮かべますか?
多くの方は殴る・蹴るなどの身体的暴力(DV)や、無視をする・心無い発言をするなどの精神的暴力(モラハラ)の2種類を思い浮かべると思います。

さまざまな離婚相談をお聞きする中で「直接暴力を振るうことはないけれど,怒ると物にあたっている。」といった話をよく耳にします。
他にもドアを強く締める,配偶者に物を投げつけてくる等 物に当たり,相手に恐怖心を植え付ける行動はたくさんあります。
今回は物にあたる行為がどのような暴力に当てはまるのかを考えていきたいと思います。

目次

なぜ物にあたってしまうのか?

そもそもなぜ怒ると物に当たってしまうのでしょうか?

怒りを言葉で表現することが難しい

怒りの感情をうまく言葉にできなかったり,感情のコントロールができないがために
ストレスがさらに増大し物に当たってしまう人がいるようです。
普通の人であれば『ここで物を投げれば相手がどんな気持ちになるか?』などを考えることができると思いますが,
感情のコントロールを苦手とする人は,怒ると冷静な判断がまったくできなくなってしまうのです。

相手を服従させたい

DV・モラハラの加害者には共通して“配偶者よりも自分の方が立場が上”という考えがあります。
そのため配偶者から,注意されたり反抗されることを極端に嫌い,夫婦喧嘩となった際に,物にあたることで相手を恐怖で支配し,自分の優位性を保とうとするのです。

幼少期の環境に起因するもの

DV・モラハラには幼い頃の生活環境が原因となる場合もあります。
幼少期に親に叱られた際に,親が物にあたっている様子を見て育ってしまうと,「怒ったときは物にあたってもいいのだ。」と学習してしまうことがあります。

物に当たることはDVなのか?


一言で“物に当たる”といってもそれだけでDVなのか,モラハラなのかと判断することは難しいです。
例えば配偶者に対し物を投げつけ,それにより怪我をおってしまった場合にはDVに当てはまりますし,
怪我を負わずとも威嚇のために物を投げ,相手を怖がらせるような場合はモラハラに当てはまるといえるでしょう。

物を相手に投げ,怪我を負わせるパターン

相手に向かって物を投げつける行為は身体的暴力(DV)に当てはまる可能性が高いです

ドラマの夫婦喧嘩のシーンで罵声とともに何かを投げ合う音や、お皿を投げて割る音が響く…そういったものをイメージしてみてください。
投げたものが相手にぶつかり怪我をした場合は傷害罪、けがをしなかった場合でも暴行罪に当てはまることがあります。
また物を投げられた結果、人に当たらなかった場合でも暴行罪は成立しうることがあります。

もしもこのような暴力を受けて、けがや打撲など、体に何かしらの異変があったら病院へ行って診断書をもらうようにしましょう。
自分にぶつからなかった場合でも、壁や床などがへこんでいたら後々暴力の証拠になりますので、写真や日記などで記録に遺しておくことが大切です。

物にあたることにより相手に威嚇するパターン

物を相手に向けて投げなくても、威嚇のように物を壊すだけの行為をする場合もあります。
壁を蹴る,ドアを強く閉める,スマホを投げるなどの行動により,相手を怖がらせたり精神的に追い詰めてしまうことはモラハラに当てはまる可能性があります。

また、相手が大切にしていたものを物を床に叩きつけて壊すといった行為に出る人もいます。
破片などがこちらに飛び散ってこなくても、心が傷つき、恐怖をおぼえる行為ですよね。
自分が昔から大切にしていたものや、思い出のものを壊すことはモラハラになりえます
身体は傷つきませんが、思い出のものを壊されることは何より心が傷つく行為です。また、「自分の言うことを聞かないとまた別の大切なものを壊すぞ」「今度はお前を傷つけるぞ」という言外のアピールとも受け取れます。

対処としては物を投げつける暴力と同じです。いつ何を壊されたかの記録を写真や日記などできちんと残しておくことが大切です。

壊されたものが自分の特有財産(結婚前に買ったものなど)であった場合は損害賠償を請求できる可能性があります。

物に当たる配偶者への対処

相手と物理的に距離を置く

もめ事のたびに物に当たってしまう人には,口頭で改善を促しても中々直らないことがほとんどです。
このまま一緒に生活を続けていては,あなた自身や子どもに対して暴力を振るってくるようになるかもしれません。
そうなる前に,物にあたるようなパートナーとは別居する等物理的に距離を置くことをおすすめします。

壊されたくないものは隠しておく

普段からあなたが大切にしている物や,花瓶など壊れた時に破片が飛び散り怪我の恐れがあるものなどは極力生活スペースには置かないように心がけましょう。
そうすることであなたの大切な物や,あなたが怪我を負うリスクを軽減させることができます。

相談窓口へ相談してみる

夫婦やパートナーの問題は身内や友人には話しづらいことだと思います。
そういった場合は役所で行っている相談やその他行政が行っている相談事業などを利用しましょう。
また,配偶者の暴言・暴力・物へ当たる行為に嫌気がさし,離婚したいとお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。

女性の人権ホットライン

法務省管轄の機関で,夫・パートナーからの暴力やその他ハラスメント等女性に関する相談を受け付けています。
法務局職員または人権擁護委員が相談をうけてくれます。
詳しくはこちら

配偶者暴力相談支援センター

配偶者暴力の防止と被害者の保護を目的とする機関です。
配偶者からの暴力を受けている方の相談や,被害者及びその家族の一時保護,今後の生活に関する情報の提供やその他援助を行っています。
詳しくはこちら

まとめ

物を投げられたり壊されたりする行為は、直接的な暴力行為とは違いますが、立派な身体的・精神的暴力の一つです
DV・モラハラ行為は治すことが難しいと言われています。
今後あなた自身や子どもへ直接的な暴力(DV)が振るわれる可能性もあります。
ですから,激しく物に当たるような配偶者とは早急に距離を置くことをおすすめいたします。

そしてそのような行為に耐えきれず離婚を決意した場合、必ず証拠を残しておきましょう。
証拠はいざというときにあなたの強力な味方になります。
ここ最近では「民事不介入」と言われていた警察でも、夫婦喧嘩から起こる暴力には介入するようになりました。
あまりにも配偶者の行動が酷い場合には警察に相談することも視野にいれておきましょう。

監修者情報

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけている。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけている。

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