【慰謝料】離婚で慰謝料を請求できる具体的なケースとは?慰謝料が認められる条件や相場について解説します。

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

相手が原因で離婚する場合、相手に慰謝料請求をしたいと思う方は少なくありません。また、離婚の際に相手から慰謝料請求されて困っている方もいらっしゃいます。

このコラムでは、離婚の際に慰謝料を請求できる条件や、いくらもらえるのかについて、実際の事例を紹介しながら解説していきます。

目次

離婚慰謝料とは?

離婚慰謝料とは、離婚によって生じた精神的な苦痛を補償するために支払われるお金のことです。

この慰謝料は、主に離婚原因を作った配偶者が支払うことになります。例えば、不貞行為(浮気・不倫)、DV・モラハラ、悪意の遺棄などが挙げられます。これらの不法行為があった場合に、被害者は慰謝料を請求することができます。

慰謝料の役割と目的

離婚慰謝料の役割は、主に以下の二つの目的を果たすことです。

  • 離婚そのものによって被った精神的苦痛に対する損害賠償請求
  • 離婚原因となった有責行為による精神的苦痛に対する損害賠償請求

実際に慰謝料請求をする際は、実務では両者を明確に区別しないことが多く、①②をあわせて「離婚慰謝料」として請求します。

慰謝料を請求できる条件

有責行為があること

夫婦間において、離婚原因となる婚姻関係を破綻させる行為のことを「有責行為」といい、有責行為を行い、離婚原因を作った配偶者を「有責配偶者」といいます。

離婚の原因となる有責行為については、民法770条1項で定められています。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

※令和6年5月17日に成立した民法改正で、「4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」は削除されましたが、施行までは現行の民法が適応されます。

不貞行為や悪意の遺棄などにより離婚せざるを得なくなり、そのために精神的苦痛を被った場合に慰謝料請求が認められることがあります。
そのほか、DVやモラハラがあった場合などにも、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として慰謝料請求が認められることがあります。

慰謝料が発生する有責行為の具体例

不貞行為(浮気・不倫)

一夫一婦制のもと夫婦は相互に貞操義務を負っており、それに違反することは、夫婦間の信頼関係、協力関係を破壊し、婚姻の破綻に繋がると考えられ、離婚慰謝料の請求が認められる主な理由の一つです。慰謝料請求が認められる不貞行為は、「性的関係」であり、性的関係があったことが証拠として認められない場合は、慰謝料請求は困難になります。ですので、不貞行為の慰謝料請求には、客観的証拠が非常に重要となります。

具体例

  • 夫が職場の同僚と肉体関係を持ったことで夫婦関係が破綻した
  • 夫が性交渉ありの風俗店に通っていることで夫婦関係が破綻した(性交渉なしの風俗は不貞行為にあたりませんが、その行為により精神的苦痛を被った場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。)
  • 妻が同性間で性交渉を持ったことで夫婦関係が破綻した(同性での性交渉も不貞行為となります)。
  • 妻が収入を得るため売春行為をしていたため、夫婦関係が破綻した

離婚事由としては認められないケース

  • 性交渉を強要された被害者(不貞行為に当てはまりません)
  • 一度きりの不貞行為(慰謝料請求はできますが、その後関係を切った等、関係の継続性が無い場合、一時的な気の迷いとして夫婦関係の修復は可能と判断されることが多い)

悪意の遺棄

配偶者が勝手に家を出て行った、家を追い出された、生活費を支払わないなど、配偶者が悪意をもって夫婦の同居・協力・扶助の義務に違反する行為をすること。

具体例

  • 夫が他の女性と同居して久しく家に帰らない。
  • 妻が正当な理由無く夫と子を残して家出し長期間帰ってこない
  • 家出した夫が勝手に借金をした上、生活費も送ってこない
  • 半身不随の妻を自宅に置き去りにし、長期間生活費も送らない

悪意の遺棄と認められないケース

  • 冷却期間を設けるために夫婦で合意の上別居した場合。
  • 単身赴任や病気療養などで別居している。
  • 不貞行為や暴行・虐待など、同居に耐えられない正当な理由があった場合

婚姻を継続し難い重大な事由

婚姻を継続しがたい重大な理由は、抽象的離婚原因とよばれ、具体的な条件はありません。裁判所が個々の事案に対し、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないと判断した場合、離婚原因として認められます。慰謝料請求が認められる離婚原因は以下のようなケースです。

具体例

  • DVモラハラ・虐待
  • 性的不能・性交渉の拒否・性的異常
  • 犯罪行為・服役
  • ギャンブル・アルコール・薬物等の依存で多額の浪費や暴力・暴言があった

慰謝料の相場

不倫・浮気

不倫・浮気が原因で離婚する場合、慰謝料の相場は200万~300万とされています。金額は不貞行為の悪質度や婚姻期間の長さ、子供の有無など個別の事情によって異なります。

当事務所の不倫・不貞慰謝料の解決事例

DV・モラハラ

DVやモラハラが原因で離婚する場合の離婚慰謝料の相場は、50万円~300万円とされています。身体的暴力がある場合は慰謝料が比較的高くなる傾向があり、モラハラ等の心理的な暴力の場合は、証拠を立証することが難しいこともあり、DVよりも慰謝料が低くなる傾向があります。

モラハラの慰謝料請求についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

当事務所のDV・モラハラ慰謝料の解決事例

悪意の遺棄

裁判所で悪意の遺棄が認められた場合、慰謝料を請求することができますが、夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務違反が悪意の遺棄に当たるかどうかは、難しい判断になり、実際に悪意の遺棄で慰謝料請求が認められるケースは多くはありません。

一方が「相手が一方的に別居を開始したため夫婦関係が破綻した」と主張したとしても、もう一方は「相手が原因で夫婦関係が破綻し、別居をせざるを得なくなった」と、因果関係についての争いや、立証の難しさがあるとされています。また、遺棄の内容や悪質度によって慰謝料の額に差がありますが、過去の判例より、相場は50万~300万程度とされています。

悪意の遺棄で慰謝料が認められた判例を2点ご紹介します。

夫が、失明する難病を発症した妻と2人の小学生の子を自宅に残したまま実家に戻った上、住宅ローンを支払い停止し自宅が競売により失われかねない事態を招いたり、健康保険を使えないようにしたことで悪意の遺棄が認められ、慰謝料500万円の支払いを命じた。

(東京家裁立川支部令和2年3月12日判決)

夫の妻に対する横暴な言動により別居を続けるに至り、別居生活を続けながらもいったんは双方婚姻関係の修復を図ろうとしていたが、別居後10年ほどで夫が自宅に通うのをやめ、婚姻費用を全く支払わなくなり、慰謝料50万円の支払いを命じた。

(東京地裁平成28年2月23日判決)

裁判所で慰謝料が認められるためには証拠が必要

協議離婚・離婚調停で慰謝料を請求する場合は、双方の合意があれば慰謝料の額を自由に決めることができますが、離婚裁判で慰謝料を請求する場合には、裁判官に不貞・DV等の事実があったことを立証できるもの、あるいは客観的に事実だと推認できるような証拠を提出することが重要になります。

慰謝料請求に有力な証拠となる例

不倫・不貞の場合

  • 性交又は性交類似行為そのものを撮影した写真・ビデオ等
  • ホテルや旅館から二人が入って出てきた写真(二人の顔が明確に写っていること、入った時点と出た時点2点の写真が必要)
  • 浮気相手との旅行写真(二人の顔、場所を特定できる物が写っていること)
  • 不倫配偶者や不倫相手が、メールやLINE等で性交又は性交類似行為それ自体を認めている文章
  • 不倫配偶者や不倫相手が、性交又は性交類似行為それ自体を認めている音声やビデオ

DV・モラハラの場合

  • DVやモラハラの内容を記載したメモや日記(いつ、どのような状況で何をされたか、何と言われたかが詳細に記載しているもの)
  • DVやモラハラの現場を録音・録画したデータ(ボイスレコーダー等)
  • 暴れた家の様子・壊れた物の写真
  • DVやモラハラ加害者が送ってきたメール、LINE
  • 医師からの診断書、医療機関への受診歴(怪我・症状とDVモラハラの関連性が記載されているもの)

まとめ

離婚の際に慰謝料が請求できるケースと、必要な証拠について解説しました。慰謝料請求には、メリットとデメリットがあり、婚姻生活で大きな精神的苦痛を負った場合、離婚慰謝料を支払ってもらうことで、気持ちの区切りがつき、前向きにこれからの人生を歩んでいけるというメリットがあります。

一方、協議離婚や調停でできるだけ早く相手と離婚したい、円満に離婚したいという場合、慰謝料請求は「慰謝料を請求を受け入れる=有責行為を認めるかどうか」でまず相手との争いが大きくなりますし、慰謝料の額の落としどころを決めるためにその分話し合いや期日が多くかかるため、慰謝料の金額によっては、慰謝料請求しない方が結果としてメリットが大きくなることもあります。

慰謝料請求をしたいとお考えの方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

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