モラハラ夫・妻と離婚したい!モラハラは離婚理由になるか、離婚の切り出し方や証拠の集め方、離婚成立のためのポイント

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

モラハラは、精神的DVとして家庭内暴力(DV)の一種と認識されています。しかし、モラハラは身体的DVと違って被害が表面化しにくく、被害者も「自分が我慢すれば・・・」とずっと耐え続けてしまうという深刻なケースが多々あります。

このコラムでは、モラハラで離婚をしたいという方へ、あなた自身や子どもの安全を守るための第一歩を踏み出すためのステップを解説します。また、法的に有効な証拠を集める方法、別居の必要性、モラハラ離婚を成立させるためののポイントについて解説します。

目次

モラハラとは?

モラハラの定義と特徴

モラル・ハラスメント、通称モラハラは、言葉や態度を用いて相手を精神的に虐待する行為を指します。この行為は、ひとりの人間としての尊厳を損ない、時には深刻な精神的ダメージを与えることがあります。モラハラは、家庭内での問題として近年増加傾向にあり、モラハラをする夫や妻と離婚したいという人が増えています。

モラハラが及ぼす影響

モラハラが及ぼす影響は甚大です。被害者は、しばしば自分の価値を否定されたように感じ、心身に深刻な問題が生じることがあります。ストレスによる不眠、倦怠感、意欲低下、食欲不振、脱毛症などが生じ、モラハラ加害者から離れてからも後遺症として長期にわたり苦しむ方も少なくありません。

また、暴言などのモラハラがある家庭で育つ子どもの脳に影響があることも最近の研究で分かってきました。

モラハラを理由に離婚をするための最初のステップ

モラハラで離婚できる条件

離婚は、お互いが同意していれば離婚届けを提出することで離婚が成立します。しかし、片方が離婚を拒んでいる場合、離婚を成立させるには法的に認められるための離婚事由があることが必要です。モラハラの場合、モラハラ加害者は離婚を拒否するケースが多く、離婚成立まで一筋縄ではいかないことの方が多いです。

相手が離婚に同意せず裁判になった場合、相手のモラハラが法的な離婚事由として認められている「婚姻を継続しがたい重大な事由」であることを証明できれば、離婚することができます。そのためには、モラハラを日常的に受けていることや、被害者が受けた具体的な被害を示す証拠が重要です。

第三者に相談し、モラハラ被害を客観的視点で見る

「妻や夫のモラハラにこれ以上耐えられそうもないけれど、離婚までは迷っている」「自分が受けているのは本当にモラハラなのか」という迷いがある場合は、一度モラハラの専門家に相談することをお勧めします。相談先は、友人や親族でもよいですが、公的機関医療機関弁護士等、モラハラについての適切な知識のある専門家に相談することで、的確なアドバイスをもらうことができます。

公的相談機関に相談する

モラハラは立派な「精神的DV」なので、DV相談の窓口で相談することができます。公的機関は匿名で相談できるので、「離婚まではいかないけど相談したい」「話を聞いてもらいたい」「被害を受けているけどどうしたらよいか相談したい」等、第一ステップとしての相談先としておすすめです。

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相談機関特徴
DV相談+(プラス)電話・メールは24時間365日対応。チャットは12:00~22:00。
外国語相談にも対応(チャット)。
DV相談ナビ#8008(はれれば)にかけると、発信地等の情報から最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談できる。
配偶者暴力支援センター配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、相談機関の紹介やカウンセリング、一時保護や自立支援等を行います。

心療内科・精神科等の医療機関に相談する

モラハラによるストレスで不眠や食欲不振、抑うつ状態など心身に症状が出ている場合は、我慢せずに心療内科や精神科等の医療機関に相談することをおすすめします。精神的苦痛を和らげるための対応をしてくれますし、通院歴や診断書はモラハラの証拠にすることができます。

弁護士に相談する

モラハラによる離婚を考えている場合、弁護士の選び方は非常に重要です。法律知識だけでなく、モラハラ加害者の心理や手口についての経験が豊富な方を選ぶことが大切です。モラハラに精通している弁護士に相談することで、証拠の整理や離婚調停時の交渉を適切に進める手助けをしてくれます

証拠集めの重要性

モラハラを理由に離婚したいと考えている場合、証拠集めは極めて重要なステップです。証拠は離婚調停や訴訟において、主張を裏付けるための決定的な材料となります。特に、精神的虐待に対する証拠は目に見えにくいため、しっかりとした根拠作りが欠かせません。証拠が不十分だと、調停が不利に進んだり、慰謝料の請求が認められなかったりする可能性があります。そこで、証拠集めの戦略と注意すべき点を詳しく解説していきます。

証拠の種類

  • モラハラ被害の内容が書かれた日記、メモ等
  • 動画や録音した音声
  • モラハラ加害者からのメールやLINE
  • 親族や友人等、第三者の証言
  • モラハラ相手が壊した物等の写真
  • 公的機関への相談履歴
  • 医師の診断書やカルテ、精神科や心療内科の通院履歴

これらの証拠は、モラハラによる精神的苦痛を受けたとして離婚の際慰謝料請求をする場合に特に重要になります。

モラハラ被害の内容が書かれた日記、メモ等

配偶者から受けたモラハラの内容を記録した日記やメモなどは証拠となります。

  • モラハラされた日時場所の記録
  • モラハラの内容(何を言われたか、何をされたか)

できる限り詳しく記録してください。記録した日時がわかるようにすることもおすすめします。

また、時間が経ってから書こうとすると記憶が不鮮明になる場合があるので、時間が経たないうちに記録しておいたほうが良いでしょう。

手帳や紙に手書きの場合、改ざんを疑われないためにも消せないタイプのペンで書く、書いた内容を修正しない等の注意が必要です。

日記はLINE投稿で書く方法もおすすめです。LINEに自分1人だけのグループルームを作成し、その中でモラハラ被害の内容等を投稿しておきます。そうすると日時や投稿した内容を後から書き換えることができませんので、信憑性の高い記録となります。

また、その記載内容についてはなるべく実名で投稿するなどして、投稿内容が自身と配偶者のやりとりに関するものと第三者にも分かるようにしておくのがいいでしょう。

動画や録音した音声

モラハラの言動を映像や音声で残すことは、強力な証拠となります。モラハラ相手も自分の声がしっかり残っているため言い逃れできません。

また、録音する際は前後の会話も録音しておくこと、1回だけでなく繰り返し録音することが重要です。

日常的にモラハラが繰り返されていたという有力な証拠となります。

モラハラ加害者からのメールやLINE

モラハラ加害者からのメールやLINEの中に、モラハラ発言が含まれていることもあると思います。そのため、相手とのメールやLINEのやり取りは削除せず、すべて保存しておくことをすすめます。

モラハラ加害者が壊した物等の写真

モラハラ加害者が感情的になり、壁や物にあたるといった行動を取る場合もあります。そういった場合、壊した物の写真も証拠になりますので、撮影しておくことをおすすめします。

公的機関への相談履歴

モラハラ被害を警察行政機関などに相談した履歴は、モラハラ被害を裏づける証拠となる場合があります。

医師の診断書やカルテ、精神科や心療内科の通院履歴

モラハラ被害の影響で心身ともに不調となり、精神科や心療内科を受診された場合は、「モラハラにより精神的に不調になっている事実」を医師に話しておくことが大切です。相談内容を記録したカルテや、モラハラが原因で精神疾患に陥ったことが記載されている」診断書なども証拠になります。

また、領収書や通院の証拠となるものも破棄せず保管しておきましょう。

離婚に向けた心構えと準備

代表弁護士の写真(ヒアリングの様子)

離婚を切り出す前に弁護士に相談する

モラハラ妻・夫との離婚を考えている場合は、離婚を切り出す前にぜひ一度弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。離婚の切り出し方や、何を伝えて何を伝えない方がよいか等、的確なアドバイスを受けることができます。

DVモラハラ加害者との離婚は初動が大事ですので、自分が動く前に弁護士に相談することで、不利な行動をすることをできるだけ少なくすることができます。

別居の重要性

モラハラ妻・夫との離婚を考えている場合、まずは安全な別居を計画することが重要です。別居においての最優先事項は自身の安全を確保することです。具体的には、予め信頼できる友人や家族に相談し、安全な避難場所を確保することが必要です。

場合によっては、弁護士や警察の協力を得て、法的な保護命令を受けることも検討しましょう。また、別居のタイミングや方法については弁護士等の専門家に相談しながら慎重に計画を立て、急な動きは避け、安全を確保したうえで行動に移すよう心がけると良いでしょう。

↑こちらの記事では、当事務所の別居前~別居後のサポートを解説しています。

モラハラ妻・夫に離婚を切り出すときのポイント

相手と直接やりとりしない

通常の離婚の場合、「お互い納得するまで話し合って上で離婚する」のは大切かもしれません。しかし、モラハラ加害者の場合は「話し合う」=「自分の意見を認めさせる」なので、対等な話し合いをすることは非常に困難です。

また、加害者は基本的に自分の発言に責任を持たないので、その場の勢いで「悪かった、反省して心を入れ替える」と泣きつくこともあります。そこで「もう一度やり直してみよう」と思って離婚を踏みとどまると、加害者は「こいつは結局自分から離れられないな」という成功体験を持つことになり、モラハラはさらに悪化してしまいます。

モラハラ妻・夫と離婚する場合は、当事者同士での話し合いは困難だと思っておいた方がよいでしょう。

相手からの嫌がらせに注意

モラハラ妻・夫に離婚を切り出すと、相手はメール、手紙、LINE等で執拗に復縁を迫ったり、または罵倒するような文章をあなたに送ってくる可能性が高いです。それらは証拠になるので、スクショ等で保存することは大切です。

しかしあまりに酷い内容の場合は、弁護士を通して相手に注意をしてもらうか、それでもやまない場合はあなたの心を守ることを最優先に、「連絡はすべて調停で」と伝えて連絡先をブロックしましょう。

法的手続きの流れ

モラハラ妻・夫と協議離婚は難しい

モラハラ妻・夫との離婚では、協議離婚はかなり難しいと言わざるを得ません。モラハラ加害者が離婚したくないと思っている場合や、子どもの親権や面会交流の頻度等で激しく対立していると協議での離婚はかなり難しいことが多い傾向にあります。

普段の生活でモラハラ加害者と話し合いにならないと感じている場合は、協議せずいきなり調停を申し立てる方が早く離婚へ踏み出せるでしょう。

離婚調停と裁判の流れ

モラハラによる離婚を考える際、離婚調停と裁判の流れを理解することが重要です。まず、離婚調停は家庭裁判所で行われ、夫や妻と直接話し合いを持つ機会です。調停委員が仲介し、双方の意見を調整します。

調停が成立しない場合は、訴訟へと進みます。裁判では、証拠が重要であり、モラハラの具体的な行動や言葉を証拠として提出することが求められます。手続きが進む中で、親権や慰謝料、財産分与といった問題に関しても適切に対処する必要があります。

モラハラ離婚を成就させるための心構え

長期戦を覚悟する

モラハラ離婚は、通常の離婚プロセスと比べて複雑で時間がかかる場合が多いです。モラハラを受けている立場である場合、精神的な負担も大きく、離婚調停や訴訟を進める中で心が折れそうになることもあるでしょう。

しかし、ここで諦めることなく、長期戦を覚悟することが重要です。モラハラによる離婚には、証拠集めや専門家の助力が必要不可欠です。心の準備を整え、焦らず一歩一歩進めていくことが成功への鍵となります。

優先順位を決める

相手との話し合いが難航しやすいモラハラ離婚を成立させるポイントは、離婚する上でどれを優先すべきかの優先順位を決めることです。例えば、「早く相手と離婚を成立させて、子どもと安心できる生活を送りたい」ということが第一だとしたら、多少の妥協をして離婚を成立させるということも大切になってきます。

精神的支えを持つことの重要性

モラハラ離婚を進めるにあたっては、精神的な支えを持つことが非常に重要です。加害者からの精神的・言葉の暴力は、長期間にわたりあなたの精神を蝕んでいたかもしれません。そんな中で、一人で戦うことは大変辛いものです。信頼できる家族や友人、あるいは心理カウンセラーや弁護士などの専門家に相談することで、精神的な負担を軽減することができます。大切なのは、あなたが孤立しないことです。

まとめ

モラハラによる離婚は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴います。しかし、適切なプロセスを経て、証拠を集め、弁護士や専門家の力を借りることで、新たな生活を始める準備が整います。

辛い経験を乗り越えた後に待っている新しい生活は、これまでの努力の賜物です。未来に向けた一歩を踏み出す勇気を持ちましょう。それが、あなただけでなく、子どもにとっても素晴らしい未来への第一歩となるのです。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。

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