営業時間:平日9時〜18時
長期間親子交流が断絶されていた状態から直接的面会交流を実現させた事例
事件の概要
家族構成
依頼者・・・父
相手方・・・母
子供・・・2人
ご依頼までの経緯
依頼者である父と相手方である母は,子どもがそれぞれ3歳と1歳の時に,子どもたちの親権者を母と定めて離婚しました。
その際,離婚協議書を作成し,父は子どもたちとの面会交流は原則行わない。但し①子どもたちが18歳以下の時点において子どもたちの意思により強い面会の希望があった場合
②子どもたちが18歳以上となり,子どもたちが希望する場合は協議の上面会を可能とする。と定めました。
また離婚協議書には記載されていなかったのですが,父母間において,母が年4回フォトアルバムを送付するといった
口頭での取り決めがあり,初めは実施されていましたが,途中から実施されなくなってしまいました。
そういったこともあり,離婚後2年以上経過した頃,父は3・4か月に1回,1回30分程度から面会を始めたいと希望し,ご自身で面会交流の調停を申し立てました。
しかし調停での話し合いは合意に至らず,一度裁判所が調停に代わる審判という手続で,面会交流についての判断を示すこととなりましたが,
その結果は,離婚当時1歳の子が父について記憶を有しておらず,離婚からかなり時間が経っていることから
子どもらの誕生日やクリスマスに,父からメッセージを添えたプレゼントの送付,母が父へ年2回子どもたちの写真を送付するといった間接交流しか認めませんでした。
その内容が不服であるとして,当事務所へご相談されご依頼を受けることとなりました。
1度目の面会交流審判
調停に変わる審判に異議を申し立て,正式な審判手続きが開始されました。
子供達の状況を確認するため,家庭裁判所調査官によって,保育園,小学校の担当教諭との面接等の調査が行われました。
しかし,裁判所は,一般的に,実親が存在することの真実告知の時期としては,
10歳前後が適切であること,
別居親が長期離別していた事案では,再度関わりを持つに当たって,同居親が別居親との関わりに疑念を抱いたり,その能力に疑問を持ったりしやすく,
別居親には感情面でのサポートが必要なことが多く,子は混乱したり感情的に揺れ動いたりしやすいこと等から
いきなり直接交流に踏み切るべきではないとして,調停に代わる審判と同様の間接交流のみ認めました。
調停に代わる審判を担当した裁判官が,審判をするため,その結論は変わることはないとは予想されましたが,そのとおりになってしまいました・・・
即時抗告(不服申立)
審判で直接交流が認められなかったことを不服とし,高等裁判所に即時抗告を申し立てました。
その中で,長期間交流が断絶した事案の親子関係の再構築に関する研究論文や,
実親であることを子が認識していない場合の真実告知等について考察した研究論文を提出し,
長期間断絶していたものの直接交流が認められた多数の判例との比較検討を詳細に行うなどして,直接交流が認められるべきであることを強く訴えました。 それに対し,即時抗告審である高等裁判所では,
「・・・子が実親の存在を認識していないことをもって,直ちに実親と子との間の直接的な面会交流の実施を否定することは相当ではなく,
実親の存在の記憶がない子に対しては,当該子の状況に応じて,できる限り早期に記憶のない実親の存在を認識させた上,直接的な面会交流の当否を検討することが相当である。
・・・したがって,本件については,抗告人(父)と未成年者らとの面会交流として定めるべき内容を判断するためには,
・・・家庭裁判所調査官による未成年者らの心情等の調査を実施するなど必要な調査を尽くして,未成年者らの実情を把握することが必要であるというべきであるが,原審は,こうした調査をしていない
と判断し,さらに審理を尽くさせるため,本件を差し戻すことが相当として原審判を取り消しました。
2度目の面会交流審判
高等裁判所で調査不足として,審理差し戻しの決定を得たため,再び,家庭裁判所において,審判が開始されました。
この時は1回目の審判とは異なる裁判官が担当となり,4人の調査官(1回目に担当した調査官を含まず)で,調査が行われることになりました。
調査の結果,真実告知を速やかに行うことがふさわしいとの意見が調査官から出されましたが,母は真実告知によって,子が精神的に不安定になる恐れがあるとして,躊躇していました。
しかし,裁判官及び説得のもと,真実告知が行われ,その結果,子らは複雑な感情を抱いてはいたものの,
父と会うことに前向きな姿勢を示していたため,裁判所で試行的面会交流を行うことになりました。
試行的面会交流では充実した父子交流が行えましたが,その一方で,子らが父子交流に関して漠然とした不安を抱いていることも判明しました。
その結果を踏まえ,裁判所は
①最初の半年間は2ヶ月に1回,1回あたり1時間
②次の1年間は,2ヶ月に1回,1回当たり2時間
③次の1年間は,1ヶ月に1回,1回あたり3時間
④その後は,1ヶ月に1回,1回あたり4時間との段階的な直接交流を認める
という内容の審判を出しました。
この審判には父も母も不服申立をせず確定し,現在では上記審判に基づいて直接的面会交流が実施されています。
弁護士による解決のポイント
本件は当初,弁護士がついていなかったため
調停で十分な主張や証拠が提出されておらず,適切な情報が裁判所に伝えられていなかったことや,
家庭裁判所の審理の進め方の不備などに気付けなかったため,非常に不利な審判がなされてしまいました。
しかし途中で弁護士が介入したことで,家庭裁判所の不備等が高等裁判所で認められ,
改めて,審理が行われることになり,軌道修正を図ることが出来ました。
弁護士が介入していなければ,誤った家庭裁判所の判断を覆すことは難しかったでしょう。
ご自身で調停,裁判などを行っている方もおられますが,感情が前面に出た1人よがりの主張になってしまっていることが多々あります。
(本来なされるべき法的主張が欠けていることが非常に多いです)。
また,適切な証拠が提出されずに終わってしまうこともあります。
裁判所を説得するには,法律,裁判実務,判例などの知識が不可欠です。
現在裁判所での手続きを行っている方は,取り返しのつかなくなる前に,自分の行っている主張等が間違っていないか,
どうすれば,裁判所に分かってもらえるかなど,弁護士の助言を受けながら進めるのがいいと思います。
調停等を申し立てる際に弁護士に依頼するか迷っている方は初めから弁護士に依頼されることをお勧めします。
本件でも早いタイミングで弁護士が介入したため,なんとか軌道修正することが出来ましたが,後になってこの審判を出すことは困難だったと思います。