【モラハラ】問題のある非監護親との面会交流は認められる?【DV】

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

元夫(元妻)からのDVやモラハラが原因で離婚された方は
「元夫の暴言暴力が怖いから,離婚後の面会交流はあまりさせたくない・・・」
「面会中に子どもに暴言を吐いてトラブルになったらどうしよう・・・」
「面会交流を通じて嫌がらせをしてこないか不安・・・」
など様々な懸念から離婚後の面会交流に消極的な方が多く見られます。
また,DV・モラハラ以外でも婚姻期間中に問題があった非監護親との面会交流に悩んでいる方もいらっしゃると思います。
今回は問題のある(あった)非監護親との面会交流の実施について解説していきたいと思います。

目次

DV・モラハラ行為のあった非監護親との面会交流

非監護親がモラハラ加害者である場合

妻(夫)へのモラルハラスメント(以下モラハラ)も子に深い精神的被害を与えます。
モラハラ加害者は,モラハラ被害者の気持ちを理解出来ず,自身が加害者であることの自覚がないことが多いため,同じようなモラハラを繰り返す傾向があります。

従って,モラハラ加害者には,自己の行為について反省し,その行為が,子や監護者を傷つけたことを理解する必要があり,今後もモラハラを継続するおそれがある場合には,面会交流は認めるべきではないと考えられています。
ただし,審判において,相手のモラハラを証明することは困難なため,モラハラのみを理由に面会が否定されるケースは少ないと思われます。

非監護親がDV加害者である場合

児童虐待の防止等に関する法律では,「児童が同居する家族における配偶者に対する暴力その他児童に著しい心理的外傷を与える言動」を児童虐待としています。
現在は,警察でも,面前DVは児童虐待との認識が広まっています。子に対する暴力がなくても,監護親への暴力は子に恐怖心を抱かせる等,子の心身に重大な影響が及んでいると考えられているからです。


その一方で,非監護親の監護親に対する暴力があったとしても,非監護親と子の心理的・情緒的つながりがあり,子も非監護親との面会交流に拒否していないということもあります。
子自身は,自分にとっては大切な親であり,その愛情を望んでいるということもあるのです。
このように子への影響は,複雑な事情が絡みっているため,その判断は難しく,暴力の程度,子の年齢や発達の度合い,子と非監護親との精神的な交流等が慎重に考慮されます。
他方,監護親が非監護親と接触等することによって,監護親に大きな影響が及ぶ場合,
例えば,非監護親が暴力や威圧的,侮辱的言動に及ぶ恐れが高いときや,非監護親との接触により監護親に大きな精神的な悪影響等を与えるときには,
面会交流が禁止,制限されるのもやむを得ないと考えられています。

非監護親が監護親に暴力を振るっていた件における裁判所の判断

平成14年1月16日,横浜家庭裁判所は,同居中,夫が妻に対し,繰り返し暴力をふるい,骨折を伴うような重大な障害を与えていた事案で,別居後,妻が夫に対し,強い恐怖心を抱き,所在を知られることによって,再び暴力を受けるかもしれないという危惧感を持っており,他方,夫の方は暴力を振るったことを反省せず,妻が嘘をついている等といって詫びを求めていること等を踏まえ,別居後の妻と子の安定した生活を守るため,夫による面会交流の申立てを却下しました。

平成14年5月21日,東京家庭裁判所は,離婚の原因は,元夫の元妻に対する暴力にあったところ,元夫が加害者としての自覚が乏しく,元妻を対等な存在として認め,その立場や痛みを思いやる視点に欠けていること,元妻がPTSDの診断され,精神安定剤等の投与を受けるなど心理的な手当が必要な状況にあること等から,元夫と元妻が対等な立場で面会交流について協力し合えるような状況にないこと等を踏まえ,元夫に対し,間接的な面会交流も認めませんでした

平成27年2月27日,東京家庭裁判所は,同居中,夫が,口論の際,立腹して,ガラスのコップを割る,掛け時計を素手で殴打して壊す,コードレス電話の子機を床に投げつけて壊す,携帯電話を壁に投げかけて壊すなど物にあたったり(その際,子が割れたコップの破片で怪我をしたこともあった),子供達の前で妻を激しく罵倒することを繰り返していたため,妻が子供二人(1歳5ヶ月,3歳)を連れて別居をした事案で,夫が,別居後も,調停,裁判等の場で,妻を激しく非難し続けたため妻が心的外傷後ストレスによる通院治療を余儀なくされ,子供達も妻の不安定な精神状態の影響を受けて,情緒不安定になっていたこと等を踏まえ,妻が夫とやりとりしなければならないような面会交流(間接交流を含む)を禁じ,4ヶ月に1回程度,妻が子の近況を撮影した写真の送付する面会交流のみを認めました。

婚姻期間中,子どもと関わりの少なかった非監護親との面会交流

調停において,監護親の側から,同居中,非監護親は,子と関わっていなかったのだから,面会など必要ないといった主張がされることがたまにあります。
しかし,同居中に非監護親が子とほとんど関わりを持っていなかったとしても,同居しているだけで,同じ家族の一員であると子に示していたことから,子にとって,その存在がいなくなることは,ある種の喪失感等をもたらすと考えられています。
そこで,通常は,何らかの形で,面会交流は認められることになります。

非監護親による子の連れ去りが懸念される場合

別居中に連れ去りがあった場合や連れ去りを試みようとした行為(準備行為)があった場合には,連れ去りの恐れがあるとして,原則,面会交流は認められません。
真摯に反省し,連れ去りが子や監護親に与えた影響を理解し,裁判所の判断に従う意思を示すなど,連れ去りの危険がなくなるまで,面会交流を認めてもらうのは困難です。

例えば,監護者指定の審判に従って,任意に子を監護親に返還した場合には,裁判所の判断に従う姿勢があり,将来,面会交流の際に子を連れ去るおそれは少なくなったと考えられています。ただし,監護親がそういった態度を示したとしても,監護親の不安が払拭出来ない場合には,第三者機関の立会いが条件とされることがあります。

子どもに対し暴力や暴言があった非監護親との面会交流

過去に子どもへ暴力を振るったことがある場合

酷い暴力によって子が深刻な精神的苦痛を感じているような場合,面会交流によって,子に過去の暴力を思い起こさせ,心身に重大な悪影響を及ぼす可能性があるため,面会交流は認められません。
その一方で,暴力の程度が軽微で,子がそれほどの精神的苦痛を感じていないような場合には以下の条件を満たせば面会交流が認められることがあります。

  • 今後,暴力等の可能性がないこと
  • 過去の暴力等が,子に恐怖心,嫌悪感等の被害感情を与えていないこと,あるいは,その被害感情が回復していること。

①のためには,非監護親が十分反省していることが必要であり,その反省は,非監護親が,その過去の暴力等が子に与えた被害を理解し,再発防止のために,また,信頼を回復するために,何をするかを具体的に提示することが必要です。
②に関しては,時間や段取りが必要との見解があり,暴力等が深刻な場合には,調査官による調査や試行的面会交流が必要となる場合もあります。

非監護親が子に性的虐待をしたことがある場合

非監護親が子に対して重大な性的虐待をした場合や,重大と言えなくても(性的虐待にまでは至らない性的不適切行為も含みます),それが繰り返されるおそれがある場合,面会交流は認められません。
ただし,性被害については,かなりセンシティブな内容のため,調査官も子に真相を確認しづらく,
また,子の方でも調査官に本当のことを言わないこともあるため,審判等で,性的虐待行為を証明するのは困難と考えられています。特に,子が小さい場合には,被害にあったこと自体を認識していないこともあり,特にその証明は困難です。

所長弁護士 渡辺

実際,私が行った事案でも,女児が母親には被害事実を話してはいたものの,調査官には,真相を全く話さなかったため,性的虐待の事実が認められなかったということがあります。

非監護親が子に対しネグレクトしていた場合

ネグレクトとして,例えば,食事を十分に与えなかったり,病気になっても放置する,炎天下で放置するといったことが挙げられます。
別居後は,子は監護親のもとで生活しているため,普段はネグレクトの心配はなくなっていますが,面会交流時に,過去のネグレクトと同じような状況になりうるような場合,例えば,食事を挟む長時間の面会や,昼間,炎天下のもとで遊ぶといった方法での面会は制限される可能性があります。

その他の問題のあった非監護親との面会交流

養育費を支払わない非監護親との面会交流

親としての義務を怠りながら,面会交流のみを求めるのは,不当であるとして,面会交流を認めるべきでないという考えもありますが,
養育費の支払いがされないからといって,面会交流が子に悪影響を及ぼすという関係はないとして,面会交流が認められるというのが現在の実務です。

養育費支払いの有無は,義務者による面会交流の可否と直接結びつくものではないし,記録によれば,相手方(夫)は,子らの養育費について支払意思を有するものの,抗告人(妻)の請求額が余りに過大であるため,子らの養育費については審判に委ねる意向であることが窺われるのであって,抗告人(妻)主張の事由は,面会交渉を拒む根拠となるものではない

平成18年2月3日 大阪高等裁判所

ただし,現在は養育費の支払を確保する方法が整備されており,未払いの解消は従前より容易になっているため,以下の方法により回収する方が迅速・確実だと思います。

非監護親がカルト宗教に没頭している場合の面会交流

非監護親がカルト宗教を信仰する一方で,監護親の方ではカルト宗教を信じておらず,それが原因で,別居・離婚に至ったような場合などが考えられます。
非監護親が子をカルト施設に連れて行くことは,子を親同士の紛争に巻き込み,子の利益を害する懸念があるため,面会交流が認められない場合があります。
面会交流の目的はあくまで,子と非監護親の親愛関係の維持形成にあり,そのための方法はそれ以外にも色々とあるため,宗教施設に連れて行かないことを条件として,面会交流実施の合意をすることもあり得ます。

非監護親の不貞により離婚した場合の面会交流

子が幼少の場合には,子はその意味を理解していないため,基本的には面会交流は認められます。
一方,子が小学生頃になると,ある程度,その意味は理解出来るようになるため,子がそれに嫌悪感を抱き,面会交流を拒否している場合には,直接的な面会交流は認められないことがあります。他方,不貞の事実を知っても子が面会を望む場合には,面会交流は認められる方向に働きます。

精神疾患のある非監護親と面会交流

非監護親の精神障害等によって,子の安全が害されるような場合には認められません
例えば,粗暴な行為に出る可能性があり,それによって子に危害が生じるおそれがある場合です。
また,子に対して,有形力を行使することはなくとも,誰彼なく攻撃的な言葉を浴びせるような精神状態にあるときには,子にも同じようなことをする恐れがあるため,面会は認められません。
さらに,鬱で自殺を仄めかすような言動があった場合,なんらかの事件に子が巻き込まれる可能性が高いようなときは,認められません。

なお,仮に面会を了承するとしても,しばらくの間,監護親が一緒に立ち会ったり,もしくは第三者に立ち会ってもらうなど,子の安全への配慮は不可欠です。

まとめ

さまざまな離婚理由により非監護親との面会に悩んでいるかたも多いと思います。
子どもが非監護親に会いたいと言えば,お互いにルールを決めたうえで面会交流を実施してもよいと考えます。
当事者同士で円滑な面会交流が難しい場合には,第三者機関の利用を検討してみるのもいいかもしれません。
反対に過去の暴力や暴言により非監護親に強い嫌悪感を持っている子については,直接面会を強要せず,写真の送付等の間接交流を実施して様子をみることが良いといえるでしょう。
いずれにせよ,子どもの利益を最優先に考え,意思を尊重してあげることが最も大切と思います。
また,非監護親から面会交流の調停を申し立てられ,「会わせたくないから・・」と拒否したり,調停に出席しなかった場合,相手の言い分が通った審判を出される可能性もあるため注意しましょう。
面会交流と子どもの意思の尊重に関してのコラムもございますので,以下も読んでいただければと思います。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。

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