【2026年4月施行】離婚後の共同親権|単独で決められることと両親の同意が必要なこと

2026年4月から、離婚後の共同親権が導入されます。
この制度について、よくある誤解が「共同親権=何をするにも相手の同意が必要になる」というイメージです。
でも実際には、単独で決めてよいことと父母の同意が必要なことは、分けて考えられています。
この区別を知らないままだと、「勝手にやったら違法なのでは?」「相手に確認しないと怒られるのでは?」と、必要以上に行動を縛られてしまうことがあります。
このコラムでは、共同親権のもとで「一人で決めていいこと」「原則として同意が必要なこと」を解説していきます。
目次
共同親権でも「日常の子育ては単独で判断できる」

まず大前提として、共同親権になっても、すべての判断を父母で同時に決めるわけではありません。
改正民法では、親権は原則共同で行使するとしつつ、日常の監護・教育に関する行為については、一方の親が単独で行うことが認められています。
つまり、「日常的な子育て」と「子どもの人生に大きく影響する判断」は、区別して考えられています。
単独でできること一覧(服装・食事・習い事など)

共同親権であっても、次のような行為は、原則として一方の親が単独で行えます。
たとえば、
- 食事や服装の選択
- 短期間の観光目的での旅行
- 心身に重大な影響を与えない医療行為
- 通常の予防接種
- 習い事の選択
- 高校生の放課後等のアルバイトの許可
これらは「日常の監護・教育」にあたる行為です。
毎回相手の同意を取らなければ子どもの生活が成り立たなくなるため、単独での親権行使が認められています。
両親の同意が必要なこと一覧(転居・進学・重要医療など)
一方で、次のような行為は、原則として父母双方の同意が必要とされます。
- 子どもの居住地を大きく変える転居
- 進学先の変更など、教育方針に重大な影響がある判断
- 心身に重大な影響を与える医療行為(緊急時を除く)
- 子どもの財産に関する重要な処分や契約
これらは、子どもの将来や生活に長期的な影響を与えるため、一方の親だけで決めることは想定されていません。
緊急や子どもの利益優先で単独判断できる例外

父母で話し合ったり、家庭裁判所の判断を待っていては間に合わず、子どもに不利益が生じるおそれがある場合、一方の親が単独で親権を行使できます。
具体的には、
- DVや虐待から避難する必要がある場合(被害直後に限られません)
- 子どもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
- 入学試験の合格発表後、入学手続の期限が迫っている場合
などが考えられます。
ただし、「緊急性があるかどうか」は個別の事情を踏まえて判断されるため、相手の同意を得ない場合は、「正当な理由があったこと」を後から説明できる資料を残しておくことが重要だと考えられます。
意見が対立した場合の家庭裁判所の関与
共同親権のもとで、どうしても意見が対立し、協議が成立しない場合には、家庭裁判所が関与する仕組みがあります。
父または母の申立てにより、特定の事項について、どちらか一方を親権行使者として指定する制度です。
指定された親は、その特定の事項に限って単独で判断・対応できるため、話し合いが進まず子どもの生活が滞ることを防ぎます。
離婚時に「決め方」まで話し合っておくことが大切
共同親権を選択する場合、「何が単独でできるか」を知ることと同じくらい、離婚時にどこまで協議しておくかが重要になります。
たとえば、
- どのような事項は、できるだけ事前に話し合って決めたいのか
- どのような事項は、原則として相手の同意を得るのか
- 日常の判断について、どこまでを相手に任せるのか
こうした点を整理し、養育計画として書面に残しておくことで、後から「聞いていない」「勝手に決めた」といった紛争を防ぎやすくなります。
共同親権は、父母の意見が常に一致することを前提とした制度ではありません。
だからこそ、感情やその場の力関係ではなく、あらかじめ判断のルールを決めておくことが、
子どもの生活を安定させることにつながります。
まとめ

- 共同親権は、すべての判断を父母で同時に決める制度ではない
- 日常の監護・教育に関することは、一方の親が単独で行える
- 子どもの将来や生活に重大な影響がある事項は、原則として両親の同意が必要
- 緊急や子どもの利益を守るための例外行為は、一方で判断できる
- 共同親権を選択する際は、協議・分担・書面化が重要
なお、DVやモラハラ等、子どもの安全や利益に関わる判断は別記事で詳しく解説しています。
この区別を知ることで、共同親権でも安心して行動できるようになります。
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