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「子どもが生まれたら変わってくれるかも」と期待するのは危険!モラハラ夫が変わらない理由と期待するリスク
「モラハラ夫が子どもの誕生を機に改心して、いい父親、いい夫になる」
「離婚を突き付けられたモラハラ夫が改心し、夫婦が力を合わせて関係を再構築していく」
そんなドラマや書籍が話題になっていると、「うちの夫も出産がきっかけになって変わってくれるかもしれない」「私が頑張れば夫のモラハラを治せるかもしれない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、モラハラ加害者のための加害者更生プログラムや、夫婦関係修復のためのプログラムも増えきており、実際にモラハラを改善し、関係を再構築できた夫婦もいるでしょう。
しかし、そのような例は実際には「極めてまれ」であり、残念ながら「モラハラは変わらない」ことが殆どであると言えます。
このコラムでは、「モラハラ夫が変わってくれるかも」と期待することの危険性と、モラハラをする人が変わらないと言われている理由について解説します。
モラハラの始まり:きっかけと気づき
結婚前と結婚後で変わった夫の態度
結婚前は優しく思いやりに溢れていた夫が、結婚後に徐々に冷たくなったり、無意識のうちに支配的な態度を取るようになったというケースは決して珍しくありません。モラハラ夫と呼ばれる人たちの多くは、結婚前には相手に良い印象を与えるための行動を取り、人間関係に配慮します。しかし、結婚という安定した関係が生まれると、表面上の努力をやめ、本来の支配欲や自己中心的な性格が現れることがあります。「こんなはずじゃなかった」と悩む妻は少なくありませんが、これがモラハラの始まりであることに気づかない場合が多いです。
妊娠・出産が引き金となるモラハラ
妊娠や出産というライフイベントは夫婦間の関係性に大きな変化をもたらすものですが、これがモラハラの引き金になる場合もあります。妊娠期間中にホルモンの変化や体調不良に苦しむ妻に対し、「わがままだ」「怠けている」といった暴言が繰り返されることがあります。
また、出産後には妻が育児で疲れ切っている中、「子どもの世話は母親の仕事だ」として全く協力せず、夜泣きや家事を押し付ける夫もいます。
このような状況で、「子どもが生まれたら変わってくれる」と信じていた妻は大きな失望を味わいます。夫がこのような態度を取る背景には、「家庭の中心は自分だ」と思い込み、妻をサポートする意識が欠けているケースが多いです。
初めての違和感とその無視が招く結果
モラハラが始まる際の最初の兆候は、ささいな違和感として現れることが多いです。たとえば、夫が突如として妻の意見を否定したり、何気ない言葉に攻撃的なトーンを含ませたりといったケースです。しかし、妻側はその違和感が何を意味するのかを深く考えず、「大したことではない」「夫婦喧嘩の範囲内」として受け流すことがあります。
この違和感を放置してしまうと、やがてモラハラ行為が常態化し、妻はさらに深い精神的苦痛を受けることになります。「何かおかしい」と感じた時点で行動を起こすことが重要ですが、友人や家族に相談できず、一人で抱え込む妻も少なくありません。
モラハラ夫の典型的な行動パターン
モラハラ夫にはいくつかの共通した行動パターンが見られます。典型的な例として、まず「相手を見下す表現」を用いることが挙げられます。
例えば、「お前には何もできない」「母親失格だ」など、妻の自信を奪うような発言を繰り返します。また、家庭内での決定権を全て自分が持ちたがり、妻を細かくコントロールしようとする行動も特徴的です。
さらに、外面が良く、他人の前では優しい夫を演じるため、妻が相談しにくい状況を作り出すこともあります。このようなモラハラ行為がエスカレートすると、夫の変わる可能性はどんどん低くなり、結果として「離婚」が視野に入ってくるケースも少なくありません。
モラハラ被害者の葛藤と希望
「子どもが生まれたら夫は変わる」という願い
「子どもが生まれたら夫が変わる」――多くの妻たちが心の中で抱くこの希望は、モラハラ夫と向き合う日々の中で一筋の光に感じられます。
妊娠や出産といった人生の大きなステージを迎えることで、夫がこれまでの態度を改め、父親としての責任や愛情が芽生えるのではないかという期待が自然に生まれるからです。
しかし、現実にはその思いが裏切られることも少なくありません。むしろ、産後特有の妻の心身の負担が増す中で、夫のモラハラが悪化してしまうケースも見られます。
妻たちは身近な体験から「子どもが父親を変える」可能性を信じたい一方で、育児に非協力的な夫や暴言を繰り返す夫の行動に深く傷ついていきます。この段階での妻の心理的負担は計り知れず、日常の中で「夫が変わる」という願いが現実と乖離していると感じる瞬間が増えていくのです。
変わる夫に期待してしまう心理
モラハラ夫が変わる兆しを信じるのは、妻が夫と過ごした良い記憶や家族としての未来を大切に思うからです。「あの頃の優しかった夫に戻ってほしい」「子どもと一緒に幸せな家庭を築きたい」と願う心が、夫を変えようという希望に繋がります。そして、妻自身が自分を責めることで、夫の態度改善を期待し、努力を続けるパターンもよく見受けられます。
しかし、モラハラの本質は支配的な態度や考え方にあるため、妻がどれほど変わろうとしても、その努力が報われないケースが目立ちます。それでも妻たちは「次こそは」「子どものために」と前向きな期待を持ち続けますが、裏切られるたびに失望が積み重なり、精神的に追い込まれていくことがあります。
友人や家族に相談できない孤独感
モラハラ夫を持つ妻の多くは、他人にその悩みを相談できないという深い孤独感を抱えています。「夫婦の問題は外に出すべきではない」「こんな話をしたら恥ずかしい」といった思いが、相談の一歩を踏み出せない理由になるのです。また、夫が世間体を気にするタイプの場合、外では穏やかで良い夫を装うため、周囲にも信じてもらえないという不安がさらに妻の孤独を深めます。
このような状況の中、友人や家族に本音を打ち明けることができず、自分だけでモラハラ夫に向き合おうとする妻たちは、現実との板挟み状態に陥ります。その結果として、心身に負担がかかり、うつ状態に陥るケースも少なくありません。
「変わる期待」を抱くことのリスク
モラハラをする人間が変わることは非常にまれ
悲しい事実かもしれませんが、モラハラ夫が自らの行動を改めるケースはほとんどありません。そもそも、モラハラをする人間はモラハラをしているという自覚がなく、「自分は正しいことをしているのだから治す必要がない」と考えています。また、モラハラは人間の根本的な価値観、考え方の歪みから発生しているので、自覚したとしてもそれを正すのには長期間の相当の努力が必要です。
「変わるかも」という期待は、一筋の希望に思えますが、変えられないものに期待することはリスクとなることがあります。裏切られるたびに妻自身が心身のストレスを蓄積し、精神的なダメージを深めていく可能性が高いのです。
また、夫がモラハラ行動を変えない状態で「いつか」「そのうち」と期待し続けることで、問題が長引く可能性もあります。そのため、妻は夫が本当に変われるのかを冷静に見極める勇気と覚悟を持つことが必要です。
子どもがモラハラ環境に置かれるリスク
モラハラ夫との環境下で子どもを育てることは、深刻なリスクを伴います。親からの暴言や冷たい態度は、直接的な被害を受けるわけではなくとも、子どもの心理に悪影響を及ぼします。
子どもは家族内の不和や緊張感を敏感に察知し、健全な自己形成に支障をきたす可能性があります。また、長期的には、親のモラハラ行為を見て育つことで、それを模範としてしまうことも懸念されます。
こうしたリスクを避けるためには、夫とのコミュニケーションを試みるのはもちろんのこと、状況が改善しない場合には毅然とした態度で対応する必要があります。別居や離婚は極端な選択のように感じるかもしれませんが、最終的には自分や子どもの安全な環境を守るために重要な手段となります。
夫の変化を信じるか、自分と子どもを守るかの選択と覚悟
夫の変化を信じるのか、それとも自分と子どもを守るために別居や離婚を選ぶのか。この決断は、モラハラ夫と暮らす妻にとって最も難しいものです。
例えば、「子どもの成長には父親が必要だ」という考えが妻の気持ちを縛ることがあります。一方で「このままでは私が壊れてしまう」と我慢が限界をむかえたり、子どもがモラハラの影響を受けていることに気づき、「変わらない夫を待つのではなく、自分で人生を決断しなければならない」と覚悟が決まった時、離婚や別居への第一歩を踏み出すことになります。
自分の人生は自分が決断できる
離婚は終わりではなく新しい始まり
離婚には不安や恐怖がつきものです。しかし、離婚は決して「人生の終わり」ではありません。それはむしろ、新しい始まりを意味します。モラハラ夫との関係を断ち切ることで、自分自身と子どもの安全や幸福を守ることができます。そして、自由を得ることで本来の自分を取り戻すことが可能になります。離婚後に見える世界は、離婚前の苦しい環境では想像もつかないほどの可能性に満ちています。
子どもと自分自身の幸せを守る選択肢
モラハラの環境にいると、子どもにどのような影響が及ぼされるのか、母として深い葛藤が生まれます。
しかし、子どもを健全な環境で育てることは、親としての最も重要な責任の一つです。モラハラから抜け出す決断をすることは、自分だけでなく子どもにとっても幸せへの大きな一歩となります。この選択肢は逃げではなく、子どもの未来と安全、そして母親自身の心の平穏を守るための大切な道です。
まとめ
つらい状況から抜け出すための第一歩
モラハラや精神的なDVを受けていると、どんなに苦しい状況でも「子どもが生まれたら夫が変わってくれる」と期待してしまうものです。
しかし、その期待が裏切られ続けると心は消耗し、問題の解決が遠のいてしまいます。一歩を踏み出すためには、まず「自分の苦しみを認識する」ことが大切です。その苦しみを他人のせいにするのではなく、自分の生活を取り戻すためのスタートラインとして受け止めましょう。
一人で悩まない、相談することで開ける道
悩みを抱えると「こんな問題は誰にも相談できない」と思いがちですが、それは間違った考えです。誰にでも問題を抱える時期はありますし、専門家や周囲にいる信頼できる人はあなたのために力になりたいと考えています。
離婚弁護士に相談するだけでなく、自治体や民間の支援団体を活用することで、具体的な方法が見えてきます。一人で抱え込まず、勇気をもって一歩を踏み出すことで、新しい未来が開けるのです。相談し、周囲のサポートを得ることは、弱さではなく、強さの表れです。
法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。モラハラで離婚したいとお悩みの方、離婚した方がいいのか悩んでいる方、自分がモラハラを受けているかもしれないと悩んでいるは、お気軽にお問合せください。