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面会交流において子どもの意思が尊重された審判を得ることが出来た事例
事件の概要
家族構成
家族構成
依頼者:Aさん(専業主婦)
相手方:夫(自営業)
子ども:長男(小学生),長女(保育園児)
概要
2011 | 婚姻 |
2013 | 長男誕生 |
2018 | 長女誕生 |
2019 | 別居開始 |
2020 | 面会交流審判申立(夫) |
2021 | 審判結果 |
夫は妻と長男へ暴言や威圧的な態度等のモラハラと捉えられる行動が見られました。
その影響により,長男は夫に対し恐怖心を抱くようになり,さらには穏やかな性格の長男が幼稚園で乱暴な言葉を発するようになりました。
別居直前に夫と口論になった際,「子どもを連れて出て行け」と言われたため,妻は言葉通り子どもを連れて実家に戻りました。
別居後夫は子どもたちとの面会を求めて妻の実家や長男の幼稚園を訪れました。
妻としても夫と子どもの面会は成長過程において重要であると考えていましたが,長男が頑なに拒むため面会を実現させることが困難でした。
そのため別居から1年が経過した頃,夫から面会交流審判を申し立てられました。
解決までの流れ
面会交流審判に伴い試行的面会交流が2度行われました。
長男は上記面会において夫に対し素っ気ない態度をとり、積極的に一緒に遊ぶようなことはありませんでした。また,夫への嫌悪感も強く感じられました。
しかし試行的面会交流後に裁判所調査官が作成した調査報告書において,「継続的に面会交流を実施し,離れて暮らす父からも愛されているという実感を持たせることが長男の今後の心身の安定や健全な発達のために必要である」と指摘され(面会交流原則実施論に基づく結論),長男の心情を無視した審判(直接的面会交流を認める審判)が出される可能性がありました。
しかし,こちらが,原則的実施論が誤りであること,面会交流はあくまで子の利益のために実施されなくてはならないことを多くの裏付け資料に基づいて主張したところ,調査官の意見は採用されず,約1年半,直接的面会交流を禁止する審判が出されました。
(長女に関しては面会交流が認められました)
弁護士による解決のポイント
従前,裁判所では,DV等の事情がない限り,面会交流が実施されるべきとの考え(原則実施論)のもと,面会交流事件が進められていました。
そのため,モラハラ事件などでは,いくら妻側が子の心理状況(夫に対する嫌悪感等の拒否的反応)等を訴えても,直接的な面会交流が認められてしまうことが多々ありました。
本件でも調査を実施した東京家庭裁判所の調査官は,子の意思を軽視し,直接的面会交流を認めるべきとの意見を提出していました。
しかし,原則的面会実施論は,平成20年前後頃から東京家裁を中心に実務で採用され始め全国的にもかなり浸透していたもので,実際には,子の利益を実現するためのものではなく,多発している面会交流事件の早期に迅速したいがための裁判所のマニュアルに過ぎないと批判されているのです。
ですので,裁判所において,原則的実施論に基づいて,調停,審判が薦められそうな場合には,子の心情等について具体的根拠を示しながら,説得的に裁判所に反論を試みる必要があります。
裁判官は家庭裁判所調査官の意見をそのまま採用して,審判を出すことが多いのですが,この件は,こちらの反論内容を汲んで,調査官の意見とは反対の結論を出したという点で,極めて貴重な審判が得られたと考えております。