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非監護親は,子ではなく監護親に暴力を振るっていたのですが,面会交流は認められてしまうのですか?
児童虐待の防止等に関する法律では,「児童が同居する家族における配偶者に対する暴力その他児童に著しい心理的外傷を与える言動」を児童虐待としています。現在は,警察でも,面前DVは児童虐待との認識が広まっています。子に対する暴力がなくても,監護親への暴力は子に恐怖心を抱かせる等,子の心身に重大な影響が及んでいると考えられているからです。
その一方で,非監護親の監護親に対する暴力があったとしても,非監護親と子の心理的・情緒的つながりがあり,子も非監護親との面会交流に拒否していないということもあります。子自身は,自分にとっては大切な親であり,その愛情を望んでいるということもあるのです。
このように子への影響は,複雑な事情が絡みっているため,その判断は難しく,暴力の程度,子の年齢や発達の度合い,子と非監護親との精神的な交流等が慎重に考慮されます。
他方,監護親が非監護親と接触等することによって,監護親に大きな影響が及ぶ場合,例えば,非監護親が暴力や威圧的,侮辱的言動に及ぶ恐れが高いときや,非監護親との接触により監護親に大きな精神的な悪影響等を与えるときには,面会交流が禁止,制限されるのもやむを得ないと考えられています。
以下,非監護親が監護親に暴力を振るっていた件における裁判所の判断をいくつか紹介いたします。
平成14年1月16日,横浜家庭裁判所は,同居中,夫が妻に対し,繰り返し暴力をふるい,骨折を伴うような重大な障害を与えていた事案で,別居後,妻が夫に対し,強い恐怖心を抱き,所在を知られることによって,再び暴力を受けるかもしれないという危惧感を持っており,他方,夫の方は暴力を振るったことを反省せず,妻が嘘をついている等といって詫びを求めていること等を踏まえ,別居後の妻と子の安定した生活を守るため,夫による面会交流の申立てを却下しました。
平成14年5月21日,東京家庭裁判所は,離婚の原因は,元夫の元妻に対する暴力にあったところ,元夫が加害者としての自覚が乏しく,元妻を対等な存在として認め,その立場や痛みを思いやる視点に欠けていること,元妻がPTSDの診断され,精神安定剤等の投与を受けるなど心理的な手当が必要な状況にあること等から,元夫と元妻が対等な立場で面会交流について協力し合えるような状況にないこと等を踏まえ,元夫に対し,間接的な面会交流も認めませんでした。
平成27年2月27日,東京家庭裁判所は,同居中,夫が,口論の際,立腹して,ガラスのコップを割る,掛け時計を素手で殴打して壊す,コードレス電話の子機を床に投げつけて壊す,携帯電話を壁に投げかけて壊すなど物にあたったり(その際,子が割れたコップの破片で怪我をしたこともあった),子供達の前で妻を激しく罵倒することを繰り返していたため,妻が子供二人(1歳5ヶ月,3歳)を連れて別居をした事案で,夫が,別居後も,調停,裁判等の場で,妻を激しく非難し続けたため妻が心的外傷後ストレスによる通院治療を余儀なくされ,子供達も妻の不安定な精神状態の影響を受けて,情緒不安定になっていたこと等を踏まえ,妻が夫とやりとりしなければならないような面会交流(間接交流を含む)を禁じ,4ヶ月に1回程度,妻が子の近況を撮影した写真の送付する面会交流のみを認めました。