「自分が正しい」と思っている人には注意!DVモラハラを引き起こす「認知の歪み」のパターンと対処法を解説します

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

職場でのセクハラ・パワハラの加害者や、DVモラハラ加害者の特徴として、「自分が正しい」と強く思い込んでいることがあげられます。一方、被害者は「自分が全部悪い」と思い込んでしまう傾向があります。

このような思い込みや考え方のクセは、心理学では「認知の歪み」といい、物事の捉え方が考え方が偏ってしまっている状態です。認知の歪みは、少なからず誰にでもあるものです。

しかし、認知の歪みが極端になってしまうと、心の健康を損なったり、対人関係をうまく築くことができなかったりと、さまざまな悪影響を及ぼします。自分の考え方のクセを知ることは、自分を見つめなおすきっかけになります。

このコラムでは、「認知の歪み」とDVモラハラの関係や、認知の歪みの対処法を解説していきます。

目次

DVモラハラ加害者と被害者に共通する思考パターンは?

加害者と被害者は、「加害者」と「被害者」という全く違う立場ではありますが、その根底に共通した思考パターンがあります。

たとえば、加害者は「自分が正しい」という信念を持つ一方で、被害者は「相手が正しいから自分が悪い」と考えるような思考パターンが形成されます。双方が現実を偏った形で認識している=「認知の歪み」があるという点が共通しています。

さらに、加害者が感情的な行動を正当化し、「相手に対する怒りや苛立ちは当然のことだ」と思い込む一方、被害者はその行為を受け入れ、「相手を怒らせた自分が悪いんだ」と感じる傾向があります。このように、両者の認知の歪みがお互いの認知の歪みをより強固なものにし、結果的にDVやモラハラという不健全な関係性が悪化してしまいます。

こうした考え方の偏りを認識し、両者がそれぞれの認知の歪みに気付くことが、DVモラハラ問題の解決に向けた第一歩となります。

認知の歪みとは?

認知の歪みとは、物事を捉える際に現実とは異なる偏った視点で認識してしまうことを指します。

歪んだ認知を持っていると、起こった出来事を客観視することができず、「自分のせいでこうなった」や「相手が自分に悪意を持っている」と思い込んでしまいます。その結果、物事をすぐに悪い方向に捉え、心が苦しくなったり、些細なことで人と衝突してしまい、対人関係が悪化したりと、様々な影響が出てしまいます。

認知の歪みの10パターン

認知行動療法を発展させたと言われているアメリカの精神科医デイビッド・D.バーンズによると、認知の歪みには以下の10パターンがあると言われています。

認知の歪み具体例
1.前か無かの思考少し意見の相違があっただけで、あいつは敵なんだ!」と思い込む
2.~すべき思考「男は家庭よりも仕事を優先すべきだ」「子どもの将来のために厳しくしなければならない
3.過度な一般化一度のミスで「どうせ私は何をやっても失敗するんだ」と思い込む
4.心のフィルター9人によい評価をされても1人の悪い評価ばかり気になってしまう
5.マイナス化思考成果を上げても「これくらみんな普通にできることだ」と素直に喜べない
6.論理の飛躍「あの人は私の言葉に傷ついたに違いない」「あの時少し声が低かったから私に怒っているに違いない」と思い込む
7.拡大解釈・過小評価自分の失敗や人の成功は大きくとらえる一方、自分の成功や長所は小さく捉えてしまう
8.感情的決めつけあの人といると嫌な気持ちになる。あの人は嫌な奴なんだ!
9.レッテル貼り収入で「負け組」「勝ち組」と相手を評価する。「派手な外見だから問題児に違いない」と決めつける。
10.自己関連付け「相手が機嫌が悪いのは自分が何かしたからだと考える

これらの認知の歪みは、自分や他者に対する評価を不適切な方向へと導き、DVモラハラ行為やその被害を長引かせる要因になります。

加害者が「自分は正しい」と思い込む理由

DVモラハラやパワハラの加害者が「自分は正しい」と信じて疑わない理由は、自身の認知の歪みにあります。加害者は、「自分が正しい世界」でなければ安心できないという心理状態にあります。自身の行為を合理的だとみなすため、多くの場合、被害者の欠点や行動を過剰に問題視します。

例えば、「相手がこのような態度を取ったから自分は仕方なかった」というように、被害者の行動が暴力やモラハラの引き金になったと考える傾向にあります。また、社会的・文化的に許容されがちなジェンダー観や権力関係を利用して、「家庭や職場で自分の立場が上だから相手は従うべきだ」と思い込む場合もあります。

感情と認知を混同する「感情的決めつけ」

加害者の心理において特徴的なのは「感情的決めつけ」という現象です。たとえば、怒りや不安といった負の感情を感じたとき、その感情の原因を被害者に求め、「自分の怒りは相手の言動が原因だ」と結論付けることです。

こうした認知の歪みにより、自分の行動を制御するよりも、相手をコントロールしようとする欲求が強まります。このような状況では、自身の感情が引き起こす行動がいかに相手に悪影響を与えているかに気づくことが難しくなるため、モラハラやDVといった問題が一層深刻化する可能性があります。

DVモラハラ加害者の認知の歪みの原因は?

幼少期の影響

DVモラハラ加害者を形成する要因のひとつに幼少期の体験が挙げられます。家庭環境が厳格であったり、情緒的なふれあいが不足していた場合、自分の感情の適切な対処や表現ができなくなることがあります。

例えば、親からの過度な期待、「自分を肯定してくれた」という経験の不足は、子どもの自己肯定感の低下や、他者との関係性における問題行動を引き起こすことがあります。こうした背景を持つ人々は、他者をコントロールしなければ自分を守れないと感じる傾向にあり、後にモラルハラスメントの加害行為を行う場合があります。

自己愛性パーソナリティとの関連

DVモラハラ加害者には自己愛性パーソナリティ特性が認められる場合があります。この特性を持つ人々は、自分中心の認識を抱き、他者からの承認や賞賛を過剰に求める傾向があります。自己愛が満たされないとき、認知の歪みを利用して「自分の考えが正しい」と無理に自己正当化を行います。

例えば、被害者に非があるという思い込みを強調することで、自らの行為を正当化するのです。これにより、加害者は自分の言動に対して罪悪感を抱きにくくなります。

DVモラハラ被害者が陥る認知の歪み

罪悪感と自責感情が植え付けられる

モラルハラスメント(モラハラ)の被害者は、多くの場合、自分自身に問題があると感じる「自責感情」を抱きやすい傾向があります。加害者が巧みに被害者の欠点を指摘したり、「自分が正しい」という態度を示すことで、被害者は自分が状況を悪化させているという誤った罪悪感を内面化してしまいます。このような心理的圧力は、被害者が問題の原因が自分自身にあると信じ込む「認知の歪み」を強化します。

例えば、「自分がもっと努力していれば加害者を怒らせずに済んだのではないか」といった思考が典型的です。これにより、被害者は自分の価値を過小評価し、加害行為に対し適切な抵抗や対処ができなくなります。

認知が歪みが強化され、無力感や生きづらさを感じやすくなる

育った環境に認知の歪みがある人がいたり、認知の歪みがあるDVモラハラ加害者から被害を受け続けると、自分も同じように認知の歪みが起きてしまいます。マイナス思考になりやすくなったり、「自分は何をやってもダメなんだ」と自己肯定感が低くなり、生きづらさを感じるようになってしまいます。

また、繰り返される否定的な体験によって、「何をしても状況は変わらない」と無力感を学習してしまいます。

その結果、対人関係がうまくいかなくて苦しんだり、今度は自分より弱い立場だと思う人に対して加害者と同じような行動をしてしまうことがあります。

認知の歪みを改善する方法

認知行動療法(CBT)を受けてみよう

認知行動療法(CBT)は、モラハラにおける加害者や被害者の「認知の歪み」を改善するために非常に効果的な手法です。この方法では、偏った物事の捉え方や否定的な思考パターンに焦点を当て、それを客観的かつ現実的な視点に置き換えることを目指します。

たとえば、加害者が「自分が正しい」と思い込む認知パターンに気づき、それが相手に対してどのような悪影響を及ぼしているのかを理解するプロセスが重要です。

一方で、被害者は「自分が悪いから攻撃されている」といった思い込みを是正し、DVモラハラの責任が自分にあるわけではないことを認識する訓練を行います。CBTは、専門家のサポートを受けながら実践することでDVモラハラによるメンタルヘルスの問題改善にも貢献します。

自分の感情や考え方を振り返ろう

日常生活の中で認知の歪みを減らすには、自己認識を高めることが不可欠です。具体的には、日記やメモを使って自分の感情や考え方を記録し、その中で極端な思考パターンや決めつけがないかを振り返ることが効果的です。

また、他者と積極的に対話することによって、自身の歪んだ認知に気づく機会を増やすことも重要です。健康的な食事や良質な睡眠、適度な運動といった規則的な生活習慣も、ストレスを軽減し認知を安定させる要因となります。これらの取り組みは、モラハラやパワハラを引き起こさない健全な人間関係の形成にもつながります。

家族やパートナーと冷静に話し合う習慣をつけよう

モラハラを防ぐためには、家族やパートナー間での良好なコミュニケーションが鍵となります。具体的には、相手の意見や感情を否定せずに受け入れる「傾聴」の姿勢を持つことが重要です。

また、「いつも〜だ」「絶対に〜しない」など、極端な言葉を避け、冷静に話し合う習慣をつけることも効果的です。喧嘩や意見の対立が起こった際には、感情に左右されず、相手を攻撃しないよう心がけましょう。

さらに、定期的にパートナーとの関係について話し合う時間を設けることで、お互いの認知の歪みを防ぐと同時に、健全な関係を維持することができます。

まとめ:認知の歪みを理解し、相手の言動や自分の感情に冷静に対処しよう

DVやモラハラの渦中にいると、被害者は違和感や苦しみを抱えているのにも関わらず、「相手の言っていることが正しいんだ」と相手の認知の歪みに巻き込まれてしまうようになります。

そのようなときは、認知の歪みのパターンに気づくことで、お互いの言動を客観的に見ることができるようになるかもしれません。

また、認知の歪みは自分では気づきにくいものです。信頼できる第三者や、心理カウンセラー、DVモラハラ支援を行う専門家に相談することで、無意識のうちに自分を苦しめていた認知の歪みに気づくことができます。

法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。相手がDVモラハラなのか分からないけど苦しい、相手の言動は本当に正当なのか分からなくて混乱しているという方は、お気軽にお問合せください。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。

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