DVモラハラから抜け出せない共依存夫婦とは?共依存の特徴と怖さ、抜け出すための第一歩

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

「DVやモラハラを受けていても、なかなか相手から離れることができない」、「付き合う相手がいつもモラハラな人だ」、「親が暴力的な人だったので、自分は絶対優しい人と結婚しようと思ったのに、結婚相手はDVモラハラ男だった。」。

そのような関係は「共依存」という「関係性の依存症」によるものかもしれません。このコラムでは、共依存の意味と、DVモラハラ加害者と被害者が共依存関係になりやすい理由、共依存から抜け出すための方法について解説していきます。

目次

DVモラハラと共依存の本質

共依存とは?

共依存とは、片方が他方に過度に依存し、依存される側もそれを受け入れることで成り立つ相互依存の状態を指します。共依存という関係は、夫婦間だけではなく、 恋愛関係友人関係親子関係など人間関係全般に現れ、人に依存してしまう「関係性の依存症」と言えます。

共依存夫婦においては、依存関係が夫婦生活の中心となり、健康的なパートナーシップが損なわれます。その特徴として、常に相手の機嫌や行動に敏感に反応し、離れた状態では強い不安を感じることが挙げられます。その結果、個々の自己肯定感の低さがさらに強調され、感情的な苦痛が積み重なることになります。このような状況では、例えば相手の暴力的な行動にも目をつむり、離れる選択ができなくなるケースが少なくありません。

共依存夫婦の主な特徴:支配と服従の関係

共依存の夫婦関係においては、しばしば「支配」「服従」という二つの極端な側面が見られます。一方が徹底的に主導権を握り、相手を制御しようとするのに対し、もう一方はその指示や要求に従うことで関係を維持しようとします。この状況では、相手に対して執着が生まれやすく、過剰な束縛や干渉が日常的になりがちです。

また、離れているときに頻繁に連絡を求めたり、相手の気分や行動に過敏に反応することも特徴的です。このように、関係性が一方的または相互的な依存によって支配されることで、夫婦としての本来あるべき健康的な支え合いが失われるのです。

なぜDVモラハラと共依存はセットになりやすいのか

DVモラハラと共依存の組み合わせは非常に多く見られる現象であり、これは両者の性質が互いを強化し合うためです。DVモラハラの加害者は、相手を支配し、自分だけに依存させることで安心感を得ています。一方、被害者側は、自己肯定感の低さや孤独への恐れから、加害者に対して従属的な態度を取りがちです。

このような関係では、「自分がいなければ相手はどうなるのだろう」「自分さえ耐えれば関係は維持できる」という心理が働き、結果として加害者の暴力や束縛を受け入れる形になってしまいます。こうした相互作用は、関係をますます悪循環に陥らせます。

共依存関係が進行するメカニズム

共依存が進行する背景には、心理的な要因とともに夫婦間の習慣やパターン化された行動が深く関係しています。例えば、夫婦のどちらかが自己肯定感が極端に低い場合、相手の承認や依存に喜びを感じることで、どんどん共依存関係を深めてしまうことがあります。

また、日常の中で「私がいないとこの人は駄目になる」「この人がいないと私の人生は成り立たない」という心理状態が強まり、それを相手に求めるようになります。こうして一方が支配し、もう一方が服従する形が固定されてしまうのです。これにより、いつしか感情的な負担が増大し、関係の修復がますます困難になります。

DVモラハラが共依存関係に陥りやすい理由

依存関係がもたらす心理的要因

DVモラハラの関係から抜け出せない大きな要因の一つに「依存関係」が挙げられます。被害者は加害者に対して精神的または心理的に強く依存していることが多く、自分一人では行動を起こせない状況に陥りがちです。この依存関係は、幼少期の愛情不足自己肯定感の低さなどの背景から築かれることが多く、モラハラが続く中でさらに強化されます。

さらに、共依存関係では加害者が被害者を心理的に支配し続ける一方、被害者も「自分がいなければ相手が生きていけない」という誤った思い込みを持ち、実際の状況を冷静に判断できなくなることがあります。その結果、関係を終わらせることへの恐怖や不安が優先され、抜け出す行動を起こしにくくなります。

「トラウマ性の絆」による強い結びつき

健全な関係しか経験したことのない人には、「なぜ自分を傷つけてくる人から離れられないのか」と疑問に思ったり、「逃げられるはずなのに逃げないのは被害者に問題がある」と思ってしまうかもしれません。この心理現象は、DVモラハラ被害や虐待などの心の傷(トラウマ)を受けた人に自然に形成されてしまう仕組みであり、「トラウマ性の絆」と呼ばれます。

「トラウマ性の絆」とは、虐待された人と虐待した人との間に形成される、感情的に強い結びつきのことです。この絆は、「一方の権力が大きい(対等でない)」関係の中で、「報酬(アメ)と罰(ムチ)」が周期的に長期間繰り返されることによって徐々に形成されていきます。

  • 母親がすごく優しい時と、気に入らないことがあると何度も叩かれる時があった
  • 配偶者に暴力を振るわれる時と、激しい愛情表現をしてくれる時がある

といった、良い扱いと悪い扱いが繰り返されると、人間は(動物でも)相手に対して強い愛着が湧いてしまうものなのです。

人質の被害者が加害者に絆を感じてしまう「ストックホルム症候群」も、トラウマ性の絆の代表例として有名です。ですから、被害者が加害者に強い愛着や執着を感じてしまうのは、生き延びるための当然の反応であり、被害者に問題があるからではありません。

幼少期のトラウマを繰り返してしまう「トラウマの再演」

家庭内に対立や不法行為、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクト等が恒常的に存在する家庭(機能不全家庭)では、子どもは親との精神的な結びつき(愛着)を形成することができず、情緒や対人関係に問題が生じてしまいます。このような家庭の中で、心に傷を負い、そのトラウマのせいで大人になってからも対人関係の問題や生きづらさを抱えてしまう状態を「アダルトチルドレン(AC)」と言います。

このようなトラウマを抱えた人は、そのようなつらい体験をしたにも関わらず、無意識のうちに同じ体験や関係を被害者または加害者の立場で再現しようとしてしまうことがあります。この一見矛盾しているような行動は、心理学では「トラウマの再演」と言われます。

  • 親に殴られて育った人が、パートナーに暴力的な人を選んでしまう
  • 親に殴られて育った人が、自分の子どもを殴るようになってしまう
  • 親に否定的な言葉を投げられて育った人が、結婚相手に自分を否定する人を選んでしまう
  • 性被害を受けた人が、売春や風俗業などの性産業を選んでしまう

上記のような行動は、被害者自身に問題があるのではなく、トラウマの再演という現象が引き起こしている行動なのですが、結果的に自分をさらに傷つける結果になったり、被害者だったはずの自分が加害者になるという、悲しい連鎖を生むことに繋がります。

共依存から抜け出すための第一歩

自己認識を深める:共依存であることを理解する

共依存やモラハラの中にいると、自分が置かれている状況を適切に把握できないことがあります。そのため、まずは冷静に自分の環境を振り返り、状況を認識することが重要です。「なぜ相手の行動に過度に左右されてしまうのか」「自分は自由に意思決定ができているのか」といった点を一つずつ考えてみましょう。自分の感情や行動が、相手の反応に過度に依存している場合、共依存に陥っている可能性が高いです。自分の置かれた状況を正確に理解し、モラハラやDVが人生に及ぼす影響を認識することが克服への第一歩となります。

信頼できる相談先を見つける

共依存から抜け出すには、一人で悩まずに信頼できる相談先を見つけることが重要です。家族や友人に話すことで新たな視点を得られる場合もありますし、専門的なアドバイスを受けるためにはカウンセラーや信頼できる相談機関を活用するのがおすすめです。

特に、モラハラやDVが絡んでいる場合、安全を確保するための支援に精通した相談窓口を利用しましょう。全国の自治体や民間団体でDV被害者の支援を行っている機関もあるため、調べて利用してみると良いでしょう。信頼できる相談先に繋がるだけでも、自分を取り戻す一歩として大きな効果が期待できます。

支援グループやカウンセリングの活用

共依存の解消には、支援グループやカウンセリングサービスの活用も有効です。共依存から抜け出す道のりは決して簡単ではありませんが、専門家や同じ問題を抱える仲間と共有し合うことで、孤立感を減らし、自分の気持ちを正直に表現できる場を得ることができます。

支援グループでは、モラハラやDVに対する具体的な対策や、心の整理方法について話し合うことができます。また、カウンセリングでは、幼少期のトラウマや、それによって歪んでしまった認知など、共依存を生み出した根本的な原因に向き合い、自分自身をどう変化させていくかについてのサポートを受けることが可能です。適切なサポートを受けることは、精神的安定を得る上で非常に有効になります。

自己肯定感を取り戻すセルフケアの方法

共依存から抜け出すためには、自己肯定感を取り戻すことが必要不可欠です。共依存的な関係では、自分の価値を見失いやすく、日常的に否定的な思考に陥ることが一般的です。これを克服するためには、まず自分自身を労わり、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

例えば、自分だけの趣味を持ったり、新しい習い事を始めるなど、自分のための時間を確保することが効果的です。また、「自分には価値がある」と繰り返し自己肯定するアファメーションも試してみましょう。さらに、健康的な食生活や適度な運動を取り入れることで、身体の調子を整え、心にも良い効果を得ることができます。

まとめ

このコラムでは、DVモラハラと共依存について解説しました。

共依存状態にある夫婦が長期的に幸福な関係を築くためには、新しい価値観を形成することが重要です。例えば、「自分自身の幸福」「相手の幸福」を分けて考えることが鍵となります。自身の考えや感情を大切にし、自分の価値観で行動することを意識しましょう。これにより、相互の成長を促し、モラハラやDVなどのリスクを回避するための土台を作ることができます。

最後に、共依存関係に悩んでいる方に効果のあるお祈りをご紹介します。このお祈りは、ドイツの心理学者フレデリック・S・パールズが創設した「ゲシュタルト療法」という心理療法の中で使われるお祈りです。

私は私のために生きる。あなたはあなたのために生きる。

私は何もあなたの期待に応えるために、この世に生きているわけじゃない。

そして、あなたも私の期待に応えるために、この世にいるわけじゃない。

私は私。あなたはあなた。

でも、偶然が私たちを出会わせるなら、それは素敵なことだ。

たとえ出会えなくても、それもまた同じように素晴らしいことだ。

フレデリック・S・パールズ

このお祈りのように、「自分」も「あなた」も大切にできる関係を築けるようになれるといいですよね。

法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。DVモラハラや共依存状態に悩んでいる方は、お気軽にお問合せください。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
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