避妊してくれない旦那はDVモラハラ?性的DVと多産DVの背後にある危険な心理

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

女性に妊娠の意思がないにも関わらず、避妊を行わず意図的に妊娠と出産を強要することで引き起こされる問題は「多産DV」と呼ばれます。また、避妊をしてくれない、拒否しているにも関わらずセックスを強要する、セックスを断るとキレるといった行為は「性的DV」と呼ばれます。

このコラムでは、性的DVと多産DVの定義や具体例、加害者の背後にある心理について解説していきます。

目次

性的DVとは何か

DVの種類と特徴

ドメスティックバイオレンス(DV)は、家庭内で発生する暴力行為を指しますが、その種類は多岐にわたります。一般的なDVには、身体的暴力、心理的暴力、経済的暴力、性的暴力などが含まれます。身体的暴力は、殴るや蹴るといった直接的な暴力行為を含み、心理的暴力はモラルハラスメントや脅迫による精神的圧迫を指します。経済的暴力は、相手の経済的自由を奪うような行為を指し、性的暴力には同意のない性行為の強要や避妊を拒否される行為が含まれます。

性的DVの具体例と定義

性的DVは、パートナー間における性的行為に関連した支配や暴力を指します。具体例として、以下があげられます。

  • 性行為を強要する
  • 避妊に協力しない
  • 嫌がっているのに性的な写真・動画を撮ろうとする
  • 性行為を拒むと不機嫌になる

このような行為は、女性の身体的および精神的健康を脅かします。性的DVは、自尊心を奪われるだけでなく、妊娠や感染症のリスクを伴うため、女性にとって重大な問題です。また、夫が性的欲求のはけ口として妻を扱い、妻の意向を無視することは、モラハラの一環としても認識されます。性的DVの被害者は、周囲に相談しにくく、一人で苦しむことが多いため、問題の早期発見と支援が重要です。

多産DVとは何か

多産DVの定義と背景

多産DVとは、夫が妻に対して避妊の意思を尊重せず、避妊なしの性交を強要することで、妻に望まない妊娠(または中絶)を繰り返させる性的DVの一種です。男性が性的支配を行うための手段とみなされ、日常生活における支配を強化するために行われます。

多産DVは、夫婦間の問題なので「内輪の問題」として片付けられてしまうことがあります。しかし、実際には多産DVは深刻な人権侵害であり、法的な介入が必要です。

また、「多産は幸せの証」といった文化的な偏見がある一方で、望まない妊娠の強要は女性の身体的負担を無視した行為であり、DVの一部として認識されるべきです。多産DVとモラハラが絡み合うことで、被害を受ける妻は自身の意志を抑圧され、逃れることが困難になる場合があります。

多産DVの特徴

多産DVには以下のような特徴があります。

  • 妊娠中や出産直後の女性に対しても、無理に性交渉を求める
  • 短期間に続けて妊娠を繰り返させる
  • 避妊についての話し合いを求めても夫から避妊の拒否をされる
  • ピルなどの避妊手段を取ることに反対する
  • 産ませるだけ産ませて子育てに協力しない

夫が避妊に協力的でない場合、女性が自由に妊娠のタイミングを決められなくなります。さらに、夫が妻を思いやることなく、自分の欲求を優先する行動から、妻は自分の意見が無視され続けるという精神的な苦痛を感じることがあります。このような状況は、心理的には女性に恐怖感や無力感を与え、逃げ場のない状況に追い込むことが多いです。

多産DVがもたらす影響

身体的影響

多産DVは、妻に多くの身体的影響を及ぼします。度重なる妊娠と出産は、女性の体に大きな負担をかけ、健康を損なうリスクがあります。特に、短期間で続けて妊娠を重ねると、貧血や栄養不足、血圧の問題などが生じる可能性があります。

また、経産婦の体は大きな変化にさらされ、回復が追いつかないことが多いです。さらに、複数回の帝王切開による手術は体への負担を増し、術後の癒着などを引き起こすリスクもあります。こうした身体的負担が積み重なることで、女性の長期的な健康に深刻な影響を与えることがあります。

精神的影響

多産DVは精神的にも大きな影響を与えます。夫が避妊に協力せず、妻の妊娠を強要することで、妻は自分の体や生活が支配されていると感じることがあります。また、性行為を拒否した場合に夫が不機嫌になったり、暴力を振るう可能性があるため、女性は常に精神的に緊張を強いられることがあります。

このような状況は、うつ病や不安障害といった精神的問題を引き起こすこともあります。女性が「我慢しなければならない」と考え続けることで、実際の被害に気づかないこともあり、心理的な負担はさらに深刻化します。

多産DVにおける加害者の特徴

支配欲とその心理

多産DVを行う加害者の特徴には、強い支配欲が挙げられます。この支配欲は、妻の妊娠と出産を繰り返させることによって、妻を経済的・精神的に支配しようとするところに現れます。

加害者は、このような形で妻の人生に介入し、妻を含めた家庭内の環境を自分の思い通りにコントロールしようとします。また、妻が妊娠によって社会的活動を制限されることで、彼女が外部と関わる機会を減少させ、孤立させることによって自分に依存させようとします。

モラハラとの関連性

多産DVは、しばしばモラハラと関連付けて語られます。モラハラとは、精神的な暴力を通じて相手の自尊心を傷つけ、支配しようとする行為です。多産DVにおいても、妻に避妊をさせないという行為は、彼女の人格や意志を無視して自分の意見を押し付ける点で共通しています。

このようなモラハラにより、妻は自尊心が低下し、自己決定権が奪われる状況に追い込まれます。たとえ言葉や身体的暴力が明白でない場合でも、モラハラの形で精神的に追い詰め、暴力的な支配が行われることもあります。こうした行為が繰り返されることで、妻は避妊すべきだと思っていても、夫に対して抵抗することができなくなります。

多産DVを受けていると感じたら

相談先と支援機関

多産DVで苦しむ女性にとって、相談できる機関が多く存在します。まずは、近くの産婦人科やDV相談ナビ、DV相談+といった専門機関に連絡し、自分の話を聞いてもらうことが大切です。

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相談機関特徴
DV相談+(プラス)電話・メールは24時間365日対応。チャットは12:00~22:00。
外国語相談にも対応(チャット)。
DV相談ナビ#8008(はれれば)にかけると、発信地等の情報から最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談できる。

また、配偶者暴力相談支援センターでは、DVから逃れたい被害者に対し、具体的なアドバイスや支援を提供しています。さらに、警察への相談も、暴力を受けた場合に考慮すべき重要な手段です。

離婚を考えている場合

多産DVや性的DVは、DVの一種であり、民法で定める「法定離婚事由」のうちの「婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまる可能性があります。DVモラハラを理由として離婚する場合は、DVモラハラがあったことを証明するため、以下のような証拠を集めることが必要です。

  • 医療機関の診断書や受診歴
  • 暴力による怪我、破壊された物が鮮明に映っている写真
  • 警察や配偶者暴力相談センター等への相談記録
  • されたことや言われたことを記録した日記・メモ
  • 暴行を受けている映像や音声データ
  • 護命令が発令された記録

多産DVの場合、夫に経済的に依存せざるを得なくなったり、育児の負担によって心身ともに疲弊し、「夫がいないと経済的にやっていけないから、自分が我慢するしかない」と逃げ道を奪われてしまっている被害者の方が多くいらっしゃいます。

弁護士に相談することで、婚姻費用や養育費、慰謝料などの離婚条件や請求方法等、金銭面で具体的なアドバイスを受けることで、離婚による経済的不安を軽減できる可能性があります。

まとめ

多産DVは、避妊拒否や性的暴力を通じて被害者である女性に深刻な精神的および身体的な負担を強いる問題です。そのため、これを防ぎ、適切に対処することは社会全体にとって重要な課題と言えます。多産DVの加害者は、支配欲に駆られ、妻の意思を無視して避妊をしてくれない場合が多く、結果として女性は繰り返し望まない妊娠や出生を強いられます。

このようなDVに直面した場合、法律的な支援や相談窓口を活用することが重要です。弁護士などの専門家に相談し、具体的な対策を考えることで、主体的な生活を取り戻す手助けを得ることができます。

法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。性的DVや多産DVにお悩みの方は、お気軽にお問合せください。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。

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