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家族にだけすぐキレる夫や妻は病気?「間欠性爆発性障害」など怒りの原因と対処法について解説します

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

夫はささいなことですぐキレて、手が付けられなくなります。「なんでこんなことで?!ということで突然爆発するんです。何かの病気なのでしょうか?

妻は思い通りにならないと尋常じゃない怒り方をして、殴ったり物を投げたりして暴言を吐かれます。本人も、怒り出したら止められないと言っていて、やってしまった後には後悔しているようです。家族はどのように接すればよいでしょうか。

人間、誰しも怒りを感じることがあります。特に、家族は距離が近い分、イライラすることもあるでしょう。しかし、「一度キレると止められない」「自分では制御できない強い怒りで物を破壊したり、人を殴ったりしてしまう」といった、大人の癇癪は背景に「間欠性爆発性障害」、「うつ病、双極性障害」「パーソナリティ障害」「発達障害」等の病気や障害が隠れている場合もあります。

このコラムでは、「間欠性爆発性障害」とその他の考えられる病気、家族にだけイライラしてキレてしまう原因や怒りの対処法について解説していきたいと思います。

目次

間欠性爆発性障害とは?

間欠性爆発性障害は、主に衝動制御の問題として定義され、急激な怒りや攻撃的な行動を繰り返す特徴を持つ精神疾患です。例えば妻や夫が些細な出来事で突然キレることがある場合、この障害が原因として考えられることがあります。家庭や社会生活において、他者との関係が悪化し、深刻な場合には離婚に至るケースもあるため、早期の理解と対応が重要です。

どんな症状?

間欠性爆発性障害の症状は、些細なことでも急激に怒りが爆発し、その結果として強い後悔や自己嫌悪を感じるというものです。

「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」では、以下の診断基準となっています。

  • 周囲に対し怒鳴る、罵声を浴びせるなどの口頭での攻撃が1週間に2回、少なくとも3か月間発生する。
  • 物を破壊したり、周囲の人にけがを負わせるような爆発が1年に3回以上ある。
  • 些細と思われるようなことでも尋常でない程怒りを爆発させ、原因と怒りの表出がひどく不釣り合いになっている。
  • 爆発は衝動や怒りに基づいたもので、計画性や目的がない。
  • 爆発によって、本人が苦痛を感じていたり、仕事や対人関係、家計に影響が出たり、警察の関与などの結果が生じている。
  • 6歳以上である。

その他の特徴として、以下があげられます。

  • 怒りの爆発は通常30分以内には収まり、短期間である。
  • 他の精神疾患(うつ秒、双極性障害、パーソナリティ障等)や、医学的疾患(アルツハイマー、頭部外傷等)、薬物乱用、適応障害等によるものではないこと

どうして発症するの?

間欠性爆発性障害の発症メカニズムは完全には解明されていないものの、脳内の神経伝達物質の異常が関与していると考えられています。間欠性爆発性障害の人の脳を調べると、感情を制御する前頭葉辺縁領域の灰白質が少ないとの研究結果があります。また、ストレスやトラウマ経験が引き金となり、症状が悪化することもあるとされています。

他の疾患と併発しやすい

間欠性爆発性障害はしばしば他の精神障害と共存することがあります。例えば、双極性障害やパーソナリティ障害などが併発することが知られています。また、家族に同様の症状を持つ者がいる場合、遺伝的な要因も考慮されます。

間欠性爆発性障害が周囲にもたらす影響

家族の安全と安心が守られない

間欠性爆発性障害の人が家族にいると、その家族は日常生活での安全と安心を脅かされることが多くなります。頻繁な衝動による怒りの爆発は、言葉の暴力として現れることがあり、その影響で夫婦の関係が悪化することがあります。これにより、家庭内でのコミュニケーションが減少してしまったり、DV・モラハラ・虐待につながってしまうこともあります。家族は、常にこの病気による精神的なストレスにさらされることがあり、家庭の雰囲気がギスギスしてしまう要因ともなります。

対人トラブルを引き起こしてしまう

間欠性爆発性障害は、社会生活にも重大な影響を及ぼします。特に職場での人間関係において、周囲に対する強い怒りや攻撃的な行動が頻繁に現れることがあります。

例えば、営業職に就いている場合、お客さんに対して暴言を吐くなどの行動が原因で解雇されることもあります。このように、社会的信頼を損ねる行為は、経済的困難やキャリアの停滞にもつながりかねません。

また、突発的な怒りの表現が原因で、警察への通報がなされたりすることもあり、公的なトラブルを引き起こすリスクも存在します。このような状況に陥ることで、患っている本人も後悔や自己嫌悪を強く感じ、社会生活における孤立感を深めることになります。

間欠性爆発性障害の原因は?

遺伝が関係している可能性

間欠性爆発性障害は、その特異な衝動性や感情の爆発性が親族内で見られることから、遺伝的要因が関連している可能性があると考えられます。このため、妻や夫がすぐキレる場合、家族歴を確認することが重要です。その背景には、衝動的な行動を引き起こしやすい遺伝子の存在が考えられており、夫婦間や親子間での遺伝的な影響を意識しながら早期の対応を検討することが必要です。

ストレスフルな状況による影響

間欠性爆発性障害の発症には、環境要因も大きな影響を与えます。例えば、幼少期に受けた虐待や家庭内のストレスフルな状況が、衝動的な行動を引き起こすリスクを高めるとされています。また、社会的なプレッシャーや職場での過度なストレスも原因となり得ます。妻や家族との人間関係が緊張状態にあると、一層症状が悪化することがあるため、適切な環境を整えることが大切です。このような要因を減らし、安定した心理状態を保つことが、間欠性爆発性障害の発症や再発を予防する鍵となるといわれています。

治療法と対策

衝動的な怒りを抑える薬物療法

間欠性爆発性障害の治療法の一つとして、薬物療法が挙げられます。衝動的な怒りの爆発を抑えるために、抗うつ薬や抗不安薬を使用することがあります。これらの薬は、感情のコントロールを助け、家族がすぐキレるといった症状を和らげる効果が期待できます。ただし、薬物療法は専門の医師による診断と処方を受けることが大切です。

怒りのコントロールを学ぶ心理療法

心理療法も、間欠性爆発性障害の治療において重要な手段の一つです。認知行動療法(CBT)では、怒りを引き起こす思考パターンを認識し、より建設的な反応を学ぶための技法(アンガーマネジメント)を学ぶことができます。また、カウンセリングを通じて、日常生活でのストレスの解消法や家族とのコミュニケーションの改善を図ることができます。このような治療を通して、怒りが家族や夫婦間での障害を引き起こさないようにすることが目指されます。

家族が周囲ができるサポート方法

怒りの背景にある病気の可能性を考える

間欠性爆発性障害は、妻や夫といった家族や周囲の人へ多大な影響を与える病気です。例えば、夫がすぐキレる状況が頻繁に発生する場合、家族は絶え間ない緊張感や不安を感じることがあります。これにより、夫婦関係の悪化や場合によっては離婚の原因となることもあります。

家族としては、衝動的な怒りや爆発的な行動の背景にある間欠性爆発性障害という病気について理解を深めることが重要です。理解が進むことで、適切な対処をすることができるでしょう。また、症状が現れた際には冷静な対応を心がけることが、家庭内の平和を保つために大切です。

医療機関・支援機関に繋がる

間欠性爆発性障害の症状で悩んでいる場合、専門的な支援を受けることが重要です。まず、精神科医や心理カウンセラーに相談することで、適切な治療につながることができます。

また、地域で提供されているアンガーマネジメント講座や、アンガーマネジメントを取り入れたカウンセリングルーム等につながることで、怒りの適切な対処法、家族のサポート方法などを学ぶことができます。

その他のイライラに隠れた病気の可能性

大人の発達障害の可能性

子どもの頃に発達障害の確定診断まではいかなかったグレーゾーンや、医療につながる機会が無かったけれど、大人になってから社会生活や対人関係等の困りごとが出てくる、という場合があります。

例えば、ASD(自閉症スペクトラム)の人は柔軟な思考が難しい、相手の立場に立って考えることが難しいといった特性があり、ADHDは感情や行動のコントロールが難しく衝動的な行動をしてしまうといった特性があります。このような特性により、対人関係が上手くいかず悩む方が多いです。特に家族の前では、自分の弱点やストレスを隠しきれず、イライラや不機嫌が爆発しやすいと言われています。

発達障害は、脳の各部位の機能や神経伝達回路がうまく機能していないことが原因であると考えられます。また、遺伝や環境、さまざまな要因が影響し合っているため、特定の原因は解明されていません。

発達障害による怒りの治療には、薬物療法や心理療法、困りごとに配慮した環境調整などがあります

双極性障害やうつ病との関連性

双極性障害やうつ病も、家庭内での感情の爆発に関連している場合があります。双極性障害では、過度な高揚感(躁状態)と激しい気分の落ち込み(うつ状態)が交互に現れるため、感情のコントロールが難しく、家族に感情をぶつけてしまうことがあります。

また、うつ病は症状として代表的なものは「抑うつ」ですが、イライラしやすくなり家族に対して攻撃的になってしまうという症状が出ることもあります。家族にこうした感情をぶつけてしまう場合、病気の兆候を見逃さず適切に対応することが大切です。

双極性障害やうつ病の原因は、脳内の神経伝達物質の変化と考えられていますが、まだはっきりと解明されていません。ストレスが発症のきっかけになったり、悪化の原因になることがあります。

治療法には、休養や薬物療法、精神療法などがあります。

月経前症候群(PMS)や更年期の影響

ホルモンバランスが乱れることで、感情が不安定になり、家族にイライラしてしまうケースもあります。更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下し、イライラや不安を感じやすくなります。

女性だけでなく男性も、更年期には男性ホルモン(テストステロン)が減少し、イライラしやすくなる、怒りっぽくなるなどの症状が表れるようになります。

治療法には、ホルモン療法や漢方薬、生活習慣の改善、薬物療法などがあります。

パーソナリティ障害との関連性

パーソナリティ障害とは、本人の認知や考え方に偏りがあることで、本人や周囲が苦しんでいる場合に診断される精神疾患です。

「自己愛性パーソナリティ障害」の人は、「自分が優れている」と感じているため、見下している人間(=妻や夫などの身近な人)が思い通りに行動しなかったり、なにかを指摘されたりすると激しく攻撃することがしばしばあります。

また、「境界性パーソナリティ障害」の人は、見捨てられ不安から、感情をコントロールすることが困難です。家族などの身近な人のささいな言動に激しく反応し、怒りを爆発させてしまいます。

治療法には精神療法や薬物療法、集団療法などがあります。

アダルトチルドレン(AC)の問題

虐待やネグレクト、依存症や支配的な親の元で育った等、幼少期の家庭環境に問題があり、「子どもらしい感情を出すこと」ができなかった影響が、大人になって「生きづらさ」として続いている状態を「アダルトチルドレン(AC)」と呼びます。

ACの人が子育てをしていて、子どもが年齢相応の感情を出したときに、「癒やされなかった幼少期の傷」がよみがえってしまうことがあります。幼少期に親に甘えると拒絶されていた人が、自分の子どもが甘えている姿を見て、「自分は甘えられなかったのに!」と強い怒りを感じ、子どもに過剰に怒鳴ってしまうといったケースです。

また、ACの人は共依存にもなりやすく、家族との境界線があいまいになり、相手に強い憎しみや怒りを感じやすくなるといった問題が出ることがあります。

ACは病気ではありませんが、二次障害として精神疾患が現れることがあるので、それに対する治療や、自助グループ、カウンセリングなどの治療法があります。

家庭内で実践できる怒りのコントロールの改善策

深呼吸やタイムアウト法を取り入れる

家庭内で感情が高ぶりそうな時には、深呼吸やタイムアウト法を活用することが有効です。深呼吸をすることで自律神経が安定し、感情的な反応を冷静に抑えることが期待できます。

また、タイムアウト法とは、感情が爆発しそうな時にその場を一時的に離れることで、怒りをクールダウンさせる方法です。このような手法を継続的に実践することは、「家族にキレる」状況を回避する助けになります。

定期的なストレス発散の機会をつくる

日常生活の忙しさの中でストレスを抱え込み、それが家族に対してのイライラや怒りにつながることがあります。

そのため、定期的に運動や趣味など、自分をリフレッシュさせる時間を確保することが大切です。家族にだけキレてしまうという現象を防ぐには、自分自身の心身をケアし、ストレスを溜め込まない生活習慣を築くことが欠かせません。

怒りの奥にある感情と向き合う

怒りは、心理学では「二次感情」と呼ばれています。二次感情とは、「さみしい」「劣等感」「不安」「恥ずかしい」「辛い」等の「一次感情」のあとに来る感情のことです。怒りは単独で湧き出る物ではなく、一次感情が大きくなった時に表出されるものです。

怒りはとても強い感情なので、自分の怒りの元になった一次感情を隠してしまいがちです。しかし、「自分は今なぜ怒っているんだろう?」と立ち止まって考えてみると、自分の本当の気持ち、例えば「自分が蔑ろにされた気がして悲しかった」「馬鹿にされた気がして恥ずかしかった」等の気持ちに気づくことができます。そして、相手に伝えるときも、怒りではなく、その元となった感情「心配している」「悲しかった」等を正直に伝えた方が、相手も受け入れやすくなります。

専門家によるカウンセリングや治療の活用

家族に対してたびたび怒りっぽくなったり、キレる状態が続く場合、精神的な問題や病気が関わっている可能性があります。

間欠爆発性障害やストレスによるうつ病など、専門家による診察やカウンセリングを受けることが改善への第一歩となります。早めに治療を受けることで、感情のコントロールを取り戻し、家庭にも笑顔が戻るでしょう。

家族内で感謝や肯定的な言葉を増やす工夫

家庭内で肯定的なエネルギーを増やすことは、怒りや不満を軽減する効果的な手段です。家族に対して「ありがとう」「助かっているよ」といった感謝の言葉を日常的に伝えることで、家庭全体の雰囲気が穏やかになる傾向があります。感謝やポジティブな言葉は、家庭を心の安らぎの場に変える重要な工夫といえるでしょう。

すぐキレる妻・夫との離婚を考えている方へ

代表弁護士の写真(ヒアリングの様子)

ささいなことで暴言を吐いたり、物を破壊するほどの怒りを爆発させてしまう人が家族にいる場合、家族は絶え間ない緊張感や不安を感じます。このコラムでは、間欠性爆発性障害を含む疾患を紹介しましたが、家族への攻撃性はさまざまな要因や疾患でも現れるため、専門家でない人で識別することは困難です。ご自身や家族が判断せず、疾患の疑いを持ったらまずは医療機関等の専門家に相談に行くことが大切です。

相手の暴言・暴力によって、自分や子どもの心身に不調(抑うつ状態・体重の減少・不眠等)があらわれている場合は、自身と子どもの心身の安全を第一に優先し、距離をとることも選択肢の一つです。別居や離婚を考える際には、弁護士等の離婚問題の専門家に相談することで、養育費や財産分与などの金銭的な不安の見通しや、離婚するための具体的な準備など、有益なアドバイスを受けることができます。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

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