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家族にだけすぐキレる夫や妻は病気?その原因は間欠性爆発性障害かも。
夫はささいなことですぐキレて、手が付けられなくなります。「なんでこんなことで?!」ということで突然爆発するんです。
妻は思い通りにならないと尋常じゃない怒り方をして、殴ったり物を投げたりして暴言を吐かれます。本人も、怒り出したら止められないと言っていて、やってしまった後には後悔しているようです。家族はどのように接すればよいでしょうか。
人間、誰しも怒りを感じることがありますが、「一度キレると止められない」「自分では制御できない強い怒りで物を破壊したり、人を殴ったりしてしまう」ほどの強い怒りを止められない状態は「間欠性爆発性障害」の可能性があります。
このコラムでは、間欠性爆発性障害の症状と原因、対策について解説していきたいと思います。
間欠性爆発性障害とは?
間欠性爆発性障害は、主に衝動制御の問題として定義され、急激な怒りや攻撃的な行動を繰り返す特徴を持つ精神疾患です。例えば妻や夫が些細な出来事で突然キレることがある場合、この障害が原因として考えられることがあります。家庭や社会生活において、他者との関係が悪化し、深刻な場合には離婚に至るケースもあるため、早期の理解と対応が重要です。
症状と診断基準
間欠性爆発性障害の症状は、些細なことでも急激に怒りが爆発し、その結果として強い後悔や自己嫌悪を感じるというものです。
「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」では、以下の診断基準となっています。
- 周囲に対し怒鳴る、罵声を浴びせるなどの口頭での攻撃が1週間に2回、少なくとも3か月間発生する。
- 物を破壊したり、周囲の人にけがを負わせるような爆発が1年に3回以上ある。
- 些細と思われるようなことでも尋常でない程怒りを爆発させ、原因と怒りの表出がひどく不釣り合いになっている。
- 爆発は衝動や怒りに基づいたもので、計画性や目的がない。
- 爆発によって、本人が苦痛を感じていたり、仕事や対人関係、家計に影響が出たり、警察の関与などの結果が生じている。
- 6歳以上である。
その他の特徴として、以下があげられます。
- 怒りの爆発は通常30分以内には収まり、短期間である。
- 他の精神疾患(うつ秒、双極性障害、パーソナリティ障等)や、医学的疾患(アルツハイマー、頭部外傷等)、薬物乱用、適応障害等によるものではないこと
発症のメカニズム
間欠性爆発性障害の発症メカニズムは完全には解明されていないものの、脳内の神経伝達物質の異常が関与していると考えられています。間欠性爆発性障害の人の脳を調べると、感情を制御する前頭葉辺縁領域の灰白質が少ないとの研究結果があります。また、ストレスやトラウマ経験が引き金となり、症状が悪化することもあるとされています。
他の疾患との関連性
間欠性爆発性障害はしばしば他の精神障害と共存することがあります。例えば、双極性障害やパーソナリティ障害などが併発することが知られています。また、家族に同様の症状を持つ者がいる場合、遺伝的な要因も考慮されます。
間欠性爆発性障害の影響
家庭内での影響
間欠性爆発性障害の人が家族にいると、その家族は日常生活での安全と安心を脅かされることが多くなります。頻繁な衝動による怒りの爆発は、言葉の暴力として現れることがあり、その影響で夫婦の関係が悪化することがあります。これにより、家庭内でのコミュニケーションが減少してしまったり、DV・モラハラ・虐待につながってしまうこともあります。家族は、常にこの病気による精神的なストレスにさらされることがあり、家庭の雰囲気がギスギスしてしまう要因ともなります。
社会生活への影響
間欠性爆発性障害は、社会生活にも重大な影響を及ぼします。特に職場での人間関係において、周囲に対する強い怒りや攻撃的な行動が頻繁に現れることがあります。
例えば、営業職に就いている場合、お客さんに対して暴言を吐くなどの行動が原因で解雇されることもあります。このように、社会的信頼を損ねる行為は、経済的困難やキャリアの停滞にもつながりかねません。
また、突発的な怒りの表現が原因で、警察への通報がなされたりすることもあり、公的なトラブルを引き起こすリスクも存在します。このような状況に陥ることで、患っている本人も後悔や自己嫌悪を強く感じ、社会生活における孤立感を深めることになります。
間欠性爆発性障害の原因
遺伝的要因
間欠性爆発性障害は、その特異な衝動性や感情の爆発性が親族内で見られることから、遺伝的要因が関連している可能性があると考えられます。このため、妻や夫がすぐキレる場合、家族歴を確認することが重要です。その背景には、衝動的な行動を引き起こしやすい遺伝子の存在が考えられており、夫婦間や親子間での遺伝的な影響を意識しながら早期の対応を検討することが必要です。
環境要因
間欠性爆発性障害の発症には、環境要因も大きな影響を与えます。例えば、幼少期に受けた虐待や家庭内のストレスフルな状況が、衝動的な行動を引き起こすリスクを高めるとされています。また、社会的なプレッシャーや職場での過度なストレスも原因となり得ます。妻や家族との人間関係が緊張状態にあると、一層症状が悪化することがあるため、適切な環境を整えることが大切です。このような要因を減らし、安定した心理状態を保つことが、間欠性爆発性障害の発症や再発を予防する鍵となるといわれています。
治療法と対策
薬物療法
間欠性爆発性障害の治療法の一つとして、薬物療法が挙げられます。衝動的な怒りの爆発を抑えるために、抗うつ薬や抗不安薬を使用することがあります。これらの薬は、感情のコントロールを助け、家族がすぐキレるといった症状を和らげる効果が期待できます。ただし、薬物療法は専門の医師による診断と処方を受けることが大切です。
心理療法
心理療法も、間欠性爆発性障害の治療において重要な手段の一つです。認知行動療法(CBT)では、怒りを引き起こす思考パターンを認識し、より建設的な反応を学ぶための技法(アンガーマネジメント)を学ぶことができます。また、カウンセリングを通じて、日常生活でのストレスの解消法や家族とのコミュニケーションの改善を図ることができます。このような治療を通して、怒りが家族や夫婦間での障害を引き起こさないようにすることが目指されます。
家庭での対応策
家庭での対応策としては、理解と忍耐が何より重要です。家族としては、本人の症状が病気によるものであることを理解し、怒りが爆発したときは一歩引くことが効果的です。また、定期的に冷静な時間を設けて、お互いの気持ちを話し合うことも助けになります。さらに、家族全体でストレスを減らす環境作りを心がけると、衝動が起こりにくくなります。家庭でのこうした取り組みが、離婚などの深刻な問題を未然に防ぐことにも繋がります。
間欠性爆発性障害の理解とサポート
周囲の人への影響と理解
間欠性爆発性障害は、妻や夫といった家族や周囲の人へ多大な影響を与える病気です。例えば、夫がすぐキレる状況が頻繁に発生する場合、家族は絶え間ない緊張感や不安を感じることがあります。これにより、夫婦関係の悪化や場合によっては離婚の原因となることもあります。
家族としては、衝動的な怒りや爆発的な行動の背景にある間欠性爆発性障害という病気について理解を深めることが重要です。理解が進むことで、適切な対処をすることができるでしょう。また、症状が現れた際には冷静な対応を心がけることが、家庭内の平和を保つために大切です。
医療機関・支援機関の紹介
間欠性爆発性障害の症状で悩んでいる場合、専門的な支援を受けることが重要です。まず、精神科医や心理カウンセラーに相談することで、適切な治療につながることができます。
また、地域で提供されているアンガーマネジメント講座や、アンガーマネジメントを取り入れたカウンセリングルーム等につながることで、怒りの適切な対処法、家族のサポート方法などを学ぶことができます。
すぐキレる妻・夫との離婚を考えている方へ
ささいなことで暴言を吐いたり、物を破壊するほどの怒りを爆発させてしまう人が家族にいる場合、家族は絶え間ない緊張感や不安を感じます。このコラムでは、間欠性爆発性障害という疾患について紹介しましたが、家族への攻撃性はさまざまな要因や疾患でも現れるため、専門家でない人で識別することは困難です。
間欠性爆発性障害を持つ家族のサポートを続けていて、相手の暴言・暴力によって、自分や子どもの心身に不調(抑うつ状態・体重の減少・不眠等)があらわれている場合は、自身と子どもの心身の安全を第一に優先し、距離をとることも選択肢の一つです。
法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。DVモラハラや相手の暴言にお悩みの方は、お気軽にお問合せください。