【判例紹介】性的不能を告げずに婚姻。離婚と慰謝料の請求が認められた事案

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

今回は夫婦間のセンシティブな問題を取り上げます。

結婚してから実はパートナーが性的不能だったと知った場合,結婚を維持していくことが難しくなることもあります。

結婚生活に求めるものは人によって様々でしょう。
しかし将来子どもを授かりたい。という場合,パートナーの性的不能により性交渉が全く出来ない,医学的な治療を受けても治らない,もしくは治療すること自体拒否されてしまえば,自分の求める家族像の実現はできなくなってしまいます。

そういった場合,離婚を考えたとしてもおかしくはない話です。

今回は以下の判例をご紹介したいと思います。

婚姻に際し妻に自己の性的不能を告知せず,またその後も性的不能が続いている場合には,「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとされた事例
(京都地方裁判所判決 昭和62年5月12日)

目次

事件について

結婚指輪

・夫婦はお見合いをして出会い,約4ヶ月後に結納を取り交わし,その後,結婚式を挙げる。

・結婚式の後,9日間の日程でヨーロッパへ新婚旅行へ出かける。

・新婚旅行から帰った後,夫の住所地で婚姻生活をスタートさせる。

・婚姻生活をスタートしてから約3年半後,妻は実家に帰り同居を解消する。

妻は,新婚旅行中も同居していた約3年半の生活中も,夫婦間には全く性交渉がなかった,と主張しています。
事実,妻と夫は約3年半の間夫婦として同居していたにもかかわらず,子供も生まれておりません。

妻(原告)の主張

結婚式の後,9日間の日程でヨーロッパへ新婚旅行へ出かけたが,その間性交渉は一度もなかった。
新婚旅行から帰ってきた後,夫の住所地において生活を始めたが,同居を解消するまでの約3年半の間,全く性交渉がなかった。
私たちは,夫の性的不能を直すため,京都府立医科大学病院,関西性科学研究所等で診察を受けたが,夫の性的不能状態に変化はなかった。

以上は,民法770条1項5号の「その他,婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する。
夫は自らが性的不能であることを妻に秘して婚姻し,それにより私は多大の精神的苦痛を被った。よって慰謝料500万円を請求する。

夫(被告)の主張

新婚旅行に出かけたことや同居していたことは事実だがその他は否認する。「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には該当しない。

夫は新婚旅行中や同居期間中,夫婦の間に性交渉がなかったことを否認していました。また,自らが性的不能であることを告げずに結婚し,妻に精神的苦痛を負わせたという妻の主張も否定しています。

裁判所の判断

証拠によると,同居期間中,被告(夫)はいくつかの泌尿器科を受診,また,精神科への通院,性科学研究所へ行き検査,カウンセリングを受けたことが認められ,この事実を考慮すれば,原告・被告間の性交渉が正常に行われていなかったことを推認することができる。
また,原告・被告の間には子供が生まれていないこと,原告(妻)の体には子供ができない疾患は特にないこと,被告(夫)に性的興奮や性的衝動が生じていないことが認められる。

上記の各事実と原告・被告間の性交渉が正常に行われていなかったことを総合すると,被告(夫)が性的に不能であって,新婚旅行中も,約3年半の同居生活中も性交渉がもたれなかったことを推認することができる。

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは,婚姻中における両当事者の行為や態度,婚姻継続の意思の有無など,当該の婚姻関係にあらわれた一切の事情から見て,婚姻関係が深刻に破綻し,婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込がない場合をいい,婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり,そこにおける性関係の重要性に鑑みれば,病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り,婚姻後長年にわたり性交渉のないことは,原則として,婚姻を継続し難い重大な事由に該るというべきである。

そうして,上記の認定事実は,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断されました。

慰謝料について

封筒に入った慰謝料

原告の精神的損害を慰藉するには,金二〇〇万円をもってするのが相当である。

原告(妻)の慰謝料請求は200万円が認められました。

被告(夫)の性的不能により婚姻生活が破綻していること,被告(夫)が自分が性的に不能であることを秘して婚姻したこと,これらにより原告(妻)が精神的苦痛を被ったことが認められました。

婚姻前に自己に不利な事情を告知しないことは不法行為?

婚姻前に結婚の条件として自分に不利な事情をあえて告知しないのが通常人の心情であり,一般的には事実の単なる消極的不告知が不法行為となることはないというべきですが,告知されなかった結婚の条件が,婚姻の決意を左右すべき重要な事実であり,その事実を告知することによって婚姻できなくなることが予想される場合は,この不告知は,信義則上違法で,不法行為責任を肯定すべき場合があります。

性的不能の不告知は,婚姻生活における性関係の重要性,さらには,性交不能は子供をもうけることができないという重要な結果に直結することからすれば,婚姻に際して相手方に自己が性的不能であることを告知しないということは,信頼関係を裏切る行為といえ,不法行為を構成するといえるでしょう。

事件の証拠資料

性的に不能であり性交渉がなかったことを立証する資料
【例示】・診断書 ・鑑定書 ・録音,録音データ ・パソコン,携帯電話のメール ・LINEのトーク履歴 ・日記 ・陳述書等

夫が妻と婚姻するに際し自己が性的に不能であることを秘していたことを立証する資料
【例示】・陳述書 ・パソコン,携帯電話のメール ・LINEのトーク履歴 ・日記 ・録音,録画データ等

赤西芳文『事例解説 当事者の主張にみる婚姻関係の破綻』

まとめ

この事件は,性的不能により性交渉が長期間に及びできなかったこと,結婚前に性的不能であることを告知せず夫婦の信頼関係を裏切るものとして「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとし,離婚・慰謝料の請求が認められました。

ただし性的不能の状態が治療等により回復する場合もあります。そのため,性的不能により性交渉ができないことが何度かあったことで,「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるのではなく,性的不能により性交渉が長期間にわたってできないことや,今後も性交渉を行うことが期待できないことが,婚姻関係の破綻を主張できると考えます。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

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