【判例紹介】妻の不貞相手に嫌がらせをし,慰謝料を請求された事案

今回は興味深い判例があったのでご紹介したいと思います。

自分の配偶者が不倫していたとします。
そのような状況になると,冷静になれず怒りの矛先がその不貞相手に向かってしまうこともあります。
しかしその怒りを抑えられず,不貞相手へ嫌がらせをしてしまうとどうなってしまうのでしょうか?

目次

事件について

事案の概要

妻は勤務先の社員のと不倫していました。
それに気づいた夫(原告)は,不貞行為により精神的苦痛を受けたとして不貞相手に対し損害賠償を求めました。
また夫は不貞行為に気づいたあと,不貞相手へ深夜に電話をかけたり,不貞相手の勤務先へ架電・訪問・投書を繰り返し
不貞があったことを不貞相手の同僚や上司に知らせる等の迷惑行為を行いました。
この迷惑行為によりプライバシーの侵害及び名誉を毀損されたとして,不貞相手は夫に対し損害賠償を求めました。

原告・被告それぞれの主張

・毎週火曜と水曜に「職場の飲み会」といって妻が出かけていた。そのころから不貞をしている。
・20年以上結婚生活を続けてきたが,過去に離婚話等出たことがない。むしろ家族旅行に出かけたり,一緒に談笑したりと普通の結婚生活を送っていた。
不貞の発覚により不安障害や不眠等の症状が出た。精神的な苦痛を被っているので500万円支払え!
・不貞相手の勤務先へ行ったり,架電をしたことは認めるが,プライバシーの侵害や名誉毀損に当たるような発言はしていない。

不貞相手

・交際当初は既婚者であることは知らなかった。
・妻は夫の転職癖や暴言・浪費により精神状態が悪かった。私と交際し始めた頃にはすでに夫との婚姻関係は破綻している。
・夫は私の勤務先へ度々架電や訪問を行い,「早く妻と別れろ」等不貞行為について,勤務先に知らせていた。
・私に対しても夫は架電を繰り返し恫喝を行った。
一連の夫の行為はプライバシーの侵害・名誉毀損に該当するので200万円支払え!

裁判所の判断

上記事案において裁判所は

  • 婚姻関係の破綻の原因は,妻の不貞行為が原因である。慰謝料は150万円が相当といえる。
  • 夫は妻の不貞行為により精神状態が悪化したと主張しているが,元々の夫の性格等に起因するものとも考えられるため,慰謝料の150万円を超える損害が発生しているとは言いがたい。
  • 不貞行為をしていることを不特定の者に告知することは名誉を毀損する行為であるといえる。
  • 夫から不貞相手対する迷惑行為は,そもそも妻の不貞行為が原因であるため慰謝料は10万円が相当。

と判断し,

1 被告(不貞相手)は原告(夫)に対し150万円を支払え。
2 原告(夫)は被告(不貞相手)に対し11万円及びこれに対する・・・から支払済みまで年5部の割合による金員を支払え。
3 原告(夫)のその余の本訴請求及び被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,本訴反訴ともにこれを25分し,その13を原告(夫)の負担とし,その余を被告(不貞相手)の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

との判決を下しました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
不貞行為はもちろん良くないことですが,それを理由に不貞相手に嫌がらせをしてしまうと
慰謝料を請求され,それが認められてしまうことがあります。
第三者を巻き込まず,当事者同士で解決するよう努めましょう。

監修者情報

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけている。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけている。

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