言葉なく静かなモラハラ~サイレントモラハラについて~

「サイレントモラハラ」という言葉を知っていますか?
一般的にモラハラと聞いて思いつく行為は,暴言や侮辱,罵倒など言葉の暴力かと思われます。
一方でサイレントモラハラは,「空気による暴力」「静かなモラハラ」と言われ,空気感で相手を追い詰め支配するモラハラです。
本コラムでは,サイレントモラハラについてご紹介したいと思います。
こちら下記のコラムはモラハラをタイプ別にご紹介しております。本コラムと併せてぜひご覧下さい。
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目次
サイレントモラハラとは?

前途で述べたように,サイレントモラハラは空気による暴力と言われ,直接的な態度は取らないものの,相手に気を遣わせるような雰囲気を出して精神的な負担をかける嫌がらせです。
不機嫌な態度で相手の心を惑わせる,相手が自分に責任を感じるような誘導をするなど巧妙な手口をとり,相手を不安にさせます。
空気感によるモラハラという点で,被害者はモラハラを受けていると自覚しにくいのです。
サイレントモラハラの特徴
では,どのような行為がサイレントモラハラに該当するのでしょうか。
- 話しかけてもずっと無視する
- 聞こえるようにため息や舌打ちをする
- 不機嫌な表情をする
- 何も言わずに睨みつける
- そっけない態度をとる
- 返事をしない
- ひとり言のように文句や不満を言う
サイレントモラハラは,直接的に暴言やひどい態度をとられないため,モラハラに該当しているのか否かの判断が難しい場合があります。
しかし,相手との間に重たい空気や相手の不機嫌な雰囲気によって息苦しい思いをして生活している場合,サイレントモラハラの被害を受けている可能性があります。
サイレントモラハラの心理
サイレントモラハラをしてくる人は,受動攻撃性パーソナリティ障害(パッシブ・アグレッシブ)を持つ場合があります。
受動攻撃性パーソナリティ障害(パッシブ・アグレッシブ)
イライラや不満,怒りを相手に直接ぶつけることはせず,相手を困らせるような言動をして反抗の意思を伝えるような障害。
※受動的行動の代表的な例として「無視」があります。
つまり暴力や暴言で相手を攻撃せず,無視をして相手を感情的に不安にさせることで自分の思い通りにしていこうと作為的にコントロールします。
受動攻撃性パーソナリティ障害の原因は,生い立ちや環境,性格要因などがあると言われていますが,
幼少期に感情を直接表現することが許されない環境で育ったり,生まれ持った性格が控えめで積極的に意見をするタイプでない場合,怒りを直接表現できずに受動攻撃性を持つことがあるとも言われています。
健康的なメンタルを持つ人であれば,無視したり不機嫌を巻き散らかしたりせず,相手に配慮して自分の気持ちを伝えるはずです。
しかしこういったモラハラ加害者は,自分の思い通りにいかない時やパートナーが自分にしたことが気に入らない場合は無視して相手に罰を与えます。
サイレントモラハラの問題点

サイレントモラハラの問題点は,相手の人格を否定する暴言や罵倒がほとんどないため,被害者はモラハラを受けていると自覚しにくいのです。
そのうえ,被害者は「ただ機嫌が悪いだけかもしれない」「自分のせいでまた機嫌を損ねてしまった」と罪悪感を抱いてしまうこともあります。
また,モラハラ加害者は他人の目や評価を非常に気にする傾向が強く,外では良い顔をします。一般的なモラハラ以上に目に見えにくいサイレントモラハラですので,周囲に加害者のことを話しても,なかなか理解してもらいにくいのです。
周囲にも気づかれないうえに,相手が何に怒っているのかも分からずため息や舌打ち,不機嫌な表情をされ続け,日常的に相手の顔色や機嫌をうかがって生活していくため,精神的なダメージが蓄積していきます。
サイレントモラハラを理由に離婚したい!注意するべき点は
サイレントモラハラを理由に離婚を考える場合,注意すべきポイントは以下です。
- 感情的に動かない:まずは冷静に状況を整理しましょう。
- 証拠を集める:後述しますが,サイレントモラハラは証明が難しいため,証拠確保が必須です。
- 専門家に相談する:弁護士,離婚カウンセラーへの相談が心強い味方になります。
- 子どもの問題を考える:親権や養育費の問題も早い段階で検討しましょう。
相手の態度に振り回されず,着実な準備をすることが成功への鍵です。
サイレントモラハラの協議離婚は難しい
サイレントモラハラは加害者自身モラハラをしている自覚がないうえ,「話し合い」を避ける傾向が強いため,協議離婚は非常に難航するケースが多いです。
無視を続けたり,建設的な話し合いができないため,調停や裁判に発展することがよくあります。
サイレントモラハラを理由に離婚するには
サイレントモラハラを理由に離婚を成立させるためには,次のステップが重要です。
- 1 証拠を集める
-
サイレントモラハラは目に見える暴力ではないため,日記やLINEのスクリーンショット,無視された録音など,客観的な証拠をしっかり準備しましょう。
- 2 離婚理由を整理する
-
「無視され続けて精神的に追い詰められた」「夫婦関係が破綻した」など,法律上の離婚理由(民法770条)に該当する形で整理しておくことが大切です。
- 3 弁護士に相談する
-
サイレントモラハラは立証が難しいため,離婚交渉や裁判になった場合に備え,弁護士に相談してサポートを受けましょう。
- 4 協議→調停→裁判の流れを意識する
-
協議離婚が難航する場合は,家庭裁判所に調停を申し立て,さらに裁判へ進むことも視野に入れておきましょう。
ポイントは,感情論ではなく,客観的な証拠と論理的な主張で離婚を進めることです。
サイレントモラハラはモラハラの証明が難しい
調停や裁判で離婚する場合には,サイレントモラハラを証明できる証拠が必要です。
しかしサイレントモラハラは特定の行動や非言語的な態度が多いため証拠を残すことが難しいです。
被害者が訴えても,加害者は「やってない」「記憶にない」とモラハラが認定できないという事態も想定できます。
サイレントモラハラの証拠となり得るもの
・モラハラ行為を詳細に書いた日記やメモ(日時や場所もあると良い)。
・モラハラ行為を動画に残す。
サイレントモラハラは録音は難しいですが,動画でモラハラの動作や行動を残すと有力な証拠となります。
・モラハラ行為があるメールやライン等。
・モラハラが原因で精神科に通院した場合,通院履歴や診断書も証拠となり得ます。
モラハラで離婚する場合,証拠がとても重要です。
離婚を考える場合,日頃から証拠を集めておく必要があります。
サイレントモラハラに悩まれている場合、弁護士にご相談下さい。

サイレントモラハラは一般的なモラハラ以上に陰湿といっても過言でありません。
言葉もなく相手を静かに追い詰め,被害者側に自分が悪かったと思わせ,自分は正しいという認識でいます。
暴力を受けたり,罵倒されている訳じゃないから・・・と考えいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし,パートナーといるのが辛い,苦しいと思う場合には,モラハラ被害にあっている可能性が十分に考えられます。
少しでもモラハラ加害者と離婚したい,離れたいと考えている場合には,弁護士や第三者機関に相談することをおすすめします。
モラハラに強い弁護士に相談することで適切なアドバイスやサポートが受けられると考えます。