【面会交流】面会交流において子どもの意思はどれくらい尊重される?

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

親同士が面会交流することに合意していても,子どもがなかなか非監護側の親に会いたがらなかったりすることもしばしばあります。

今回は面会交流実施において,子どもの意思はどれくらい尊重されるのか
また子どもの年齢が低いうちに離婚しその後面会交流をする場合の配慮について解説してまいりたいと思います。

目次

面会交流と子の心情

面会交流に子どもの意思は尊重される?

面会交流の可否やその内容や条件を検討するときには,子の意向を把握し,これを尊重すべきと考えられています。
しかし,子の意思を的確に判断することは,実際には非常に難しいです。
なぜなら,子の思考力や言語能力には非常な個人差があり,これが子の意思形成やその意思表示に影響していることがあり,
子が親との別居や離婚により相当の精神的負担を負い,自分の意思を表明することが困難な心身の状況に陥っていることもあるからです。

さらに,子は自らの意思を表明すれば,両親のいずれかを裏切ることになるとして,何としてもそれを避けたいという忠誠葛藤の状態に陥りやすく,そのため,非監護親に会いたいという気持ちを有していたとしても,監護親に本心を明かすことをためらう傾向があるからです。

所長弁護士 渡辺

子の意思を把握する際には,子の表面的な言動にとらわれずに,両親の離婚をめぐる紛争の経緯,両親と子の関係性,子の年齢,発達段階,心身の状況,子の言動等の背景事情を十分考慮すべきと考えられています。

子どもが非監護親に会いたくないと言っている場合

面会交流は将来にわたって継続的に行うことが重要と考えられています。
現時点で,子が面会交流を拒否する意向を示していたとしても(その意向が真実であっても),その意思に従うことが必ずしも良いとは考えられていません。

むしろ,一時的に親子関係が悪化していても,定期的に面会交流することで,それを修復したり,再構築して行くことが子にとって利益になると考えられています。

ただし,子が,拒否する原因によっては,面会交流によって,子が傷つくということがあるため,面会交流が禁止または制限されることなります。

面会の禁止または制限の具体例

  • 非監護親の暴力
  • 子の拒否する原因が子の安全(身体的・精神的)に関わり,それを除去出来ない場合
  • 正当な理由はないが子の拒否感情が強い場合

このような場合は直接交流は当面回避して,可能な間接交流を検討して,子の感情の変化を待つこともあります。

子どもに精神的な疾患がある場合の配慮

子に精神的な疾患があり,面会交流が,その治療に支障を来す事情がある場合,面会交流は制限されることがあります。
監護親から,面会交流を拒否する理由として挙げられる子の病気としては,
解離性障害,パニック障害,発達障害など様々なものがありますが,
面会交流をすることで,どういった支障が生じるのかを,専門医のカルテの情報などをもとに,主張することが重要です。

平成11年11月11日,長野家庭裁判所上田支部は,子が,長期間にわたって,精神科の治療を受けていた事案で,子が父母の離婚にまつわる紛争によって,心を痛め,そのことが精神的に悪影響を及ぼしていること等を踏まえ,子の治療を最優先させて子の精神状態の安定をはかるべきとして,父の子に対する面会交流を認めませんでした。

面会交流と子どもの年齢

子どもが小さい時に離婚し,その後非監護親から面会交流の申出をされるケースも少なくはありません。
面会交流では子どもの年齢に応じた配慮が必要になることがあります。

面会交流の場では子の年齢に応じてどのように配慮すべきか?

子が1歳程度までの場合の面会交流

非監護親が主たる監護者として専ら養育してきた場合や父母共同して子を監護してきた場合を除けば,子は監護親から離されると,著しい不安を覚えることが多いと考えられています。
そこで,その不安を除去するためには,監護親が面会に付添うことが考えられます。
その場合でも,子が人見知りをして,顔を見ただけで泣き出してしまう状態にあるときには,短時間で面会を終わらせるなどの工夫も必要です。

子が2~3歳の場合

非監護親に養育や面会交流の実績があったり,子との関係が良好で,子が監護親との分離による不安を示すことがない場合や一時的に不安を感じても,非監護親がこれに適切に対応出来る場合には,付添人なしでも面会交流は可能と考えられています。
他方,非監護親が養育等の実績が十分でなく,子が監護親との分離に強い不安を感じたり,面会交流中の子の監護に適切に対応できない場合は,監護親や第三者機関の付添いが必要と考えられています。
一方で以下のように直接の面会交流が認められなかったケースもあります。

子は未だ3歳と幼年であり,これまでも母親である相手方から一時も離れることなく成育されてきたものであって,相手方(母)の手から離れ,異なった環境の中で,申立人(父)と時間を過ごすということは子に少なからぬ不安感を与えるものであると思える。現に,子が申立人(父)と面接した後には情緒不安定な徴候がみられることを考えると,現段階での,申立人(父)との面会交流を認めることには躊躇えざるを得ない

(平成8年3月18日:岐阜家庭裁判所大垣支部)
就学前の子との面会交流

子が就学前の段階は,多くの場合,子が幼稚園等に通学しているため,基本的には,面会交流に監護親の付添いは不要と考えられています。
しかし,子と非監護親との交流がしばらく途切れていたような場合には,子も不安感を抱くため,
はじめのうちは,監護親が付添って,短時間の交流を何度か重ね,子が一人でも安心出来るようになった段階で,付添いをなくし,時間も延長するなどの工夫も必要と考えられています。

小学生の子との面会交流

子が就学する年齢になれば,監護親の付添いは,原則,不要と考えられています。
ただし,この時期になると,子の意思がはっきりとしてくるだけでなく,子にとって,学校生活(宿題等),交友関係や習い事,スポーツなどが大切になってくるため,これらを妨げない配慮も必要となってきます。
例えば,スポーツクラブの練習などで,どうしても面会交流の時間がとれないような場合には,送り迎えをしたり,練習や試合を見学するといった面会交流の方法も考えられます。

小学校高学年頃になれば,低学年の子と比べてより一層子の意思や生活リズムを尊重する必要があります。

子が単独で面会交流できる年齢に達している場合

面会交流の方法などは,子の意思を十分尊重した上で決めることになります。
また,子が直接,非監護親と電話,メール,ライン等で連絡を取り合って,日時,場所,方法などを決めているケースもよくあります。

子の年齢によって,どの程度子の拒否反応を考慮すべきであるか?

子の年齢が比較的低い場合

子の年齢が低い場合,特に就学前の段階では,子が面会交流に消極的であっても,その理由が非監護親に対する恐怖心というような種類のものでない限り,監護親が面会交流の必要性を認識し,これに協力する姿勢を持つことによって,面会交流は可能になると考えられています。

子の年齢が10歳程度の場合

子の拒否反応が非常に強い場合には,その理由が正当でなくても,面会交流を強いることは子のためにならないと考えられています。

そこで,まずは間接的な面会交流により,信頼回復を図り,関係回復が図られた段階で,直接的な面会交流の可能性を探ることになります。
実際,平成29年3月17日,名古屋高等裁判所では,従前から10回にわたる試行面会を経ても,子の父に対する拒否的態度が緩解することはなく,むしろ,その拒否的態度が一層強固なものとなり,母が子に面会交流の話をしたり,これを促したりするだけで,子の心身の状況に異変を生じていた事案で,父母間で新たに協議が成立するか,これを許す家庭裁判所の審判が確定し又は調停が成立するまでの間,父が子と直接面会交流することを禁じました。

子の年齢が比較的高い場合

子の意思に従うほかないことが多いです

特に子が15歳程度になれば,誰と交流するかは,子の自由意思に委ねるべき事項になります。そこで,子の拒否的感情が強く,その変化の可能性が低い場合には,子が直接交流を受け入れる状態になるまで,手紙,メール,ライン等の間接交流に留めるべきと考えられています。また,間接交流すら拒否する場合には,それも禁止されることがあります。

子どもが非監護親を認識していない場合の面会交流はできる?

子が非監護親を親と認識していないからといって,面会交流が認められないことにはなりません。むしろ,子の利益のためには,親と子の絆を再構築する必要があるとされています。

子にとって,実親を知らずに育つより,別居親からも愛されていることを知ることの方が成長に資すると考えられているからです。
それは,監護親が再婚し,再婚相手と子が養子縁組した場合も同様です。
真実を知った場合,子がショックを受けたり,再婚相手との関係に変化が生じること等を懸念される方もおられますが,子には自分のルーツを知る権利がありますただし,真実を知らせる時期については,子の置かれた生活環境等を踏まえ,慎重な判断を必要とします。また,真実告知後,子がどういった反応を示したかによって面会交流の方法等を検討する必要も出て来ます。

例えば,子が面会に積極的でない場合には,初めから頻回,長時間の面会交流を実施するというのは困難なため,徐々に頻度,時間等を増やしていくなどの工夫が必要とされています。

所長弁護士 渡辺

私が担当した事件では,面会交流審判の事件係属中に母が子に真実を告知し,その反応を見て,裁判所で試行的面会交流を行い,その様子を踏まえ,段階的な面会交流が認められました。なお,事案によっては,真実告知をしないで,試行的面会交流を行い,その際の子の状況を踏まえ,終了後に監護親から告知するという方法もあります。

また,平成21年1月16日,大阪高等裁判所は,子が父を親と認識していない事案において

「・・・確かに,未成年者が抗告人(父)と面会交渉し,抗告人(父)への愛着を感じるようになったのに抗告人(父)が退去強制となった場合には,未成年者が落胆し悲しむことも考えられるが,未成年者が父を知らないまま成長するのに比べて,父を認識し,母だけでなく,父からも愛されてきたことを知ることは,未成年者の心情の成長にとって重要な糧になり,また,父が母国について未成年者に話すことは,未成年者が自己の存在に関わる国について知る重要な機会となる。

抗告人(父)が日本を退去強制となると,当面は未成年者との直接の面会交渉は困難になるが,手紙等の交換を通じての交流が続けば,未成年者が成長した後も親子間の交流は可能であることにかんがみると,未成年者の福祉を図るためには,現時点で抗告人(父)と未成年者との直接の面会交渉を開始する必要性が認められる」

として,直接の面会交流を認めるケースもありました。

まとめ

ここまで,面会交流について子供の意思をどれだけ尊重すべきか,また子供が面会交流に消極的な場合の配慮について解説しました。
子供の利益を最優先に考え,父・母それぞれが健全な親子関係を構築できるようサポートしていくことが面会交流において最も大切なことと思います。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
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