DV・モラハラが原因の浮気、法的にはどっちが不利?

DVやモラハラの関係の中で、気づかないうちに心が追い詰められてしまうことがあります。
「もう限界だけど、逃げられない」
そんな状態で、誰かに心を向けてしまうことがあります。
不倫に至るケースも少なくありません。
これは、誰かを強く好きになったというより、この苦しさから一度でも離れたかった結果かもしれません。
ただし、どんな理由があっても、法律上は「不貞行為」として扱われ、想像以上に不利な立場になる可能性があります。
このコラムでは、DV・モラハラで判断力が低下している状態を前提に、なぜ不倫に踏み出してしまうのか、その先にどんな現実が待っているのかを、法律の視点で整理します。
目次
DV・モラハラ被害を受けていると、なぜ判断を誤りやすくなるのか

否定され続けることで「自分の判断」が信用できなくなる
DVやモラハラが続く環境では、被害を受けている側の思考は、少しずつ狭められていきます。
日常的に否定され、責められ、「お前がおかしい」「お前が悪い」と言われ続けると、物事を自分の軸で判断することが難しくなります。
その結果、「今の状況から抜け出せるなら、方法は何でもいい」という心理状態に近づいていきます。
DVが続くと、浮気は「恋愛」ではなく「逃避」になりやすい
DVやモラハラの関係の中で起きる浮気は、恋愛感情がきっかけとは限りません。
「好きになった」というより、「ここから一度でいいから離れたかった」「普通の自分に戻れる場所が欲しかった」そう感じていた人も多いはずです。
責められない場所、否定されない時間、ただ人として扱われる感覚を与えてくれる相手に心が動くのは自然です。
DV・モラハラで弱っているときに近づく男性が危険な理由
ただし注意が必要です。判断力が落ちているときに近づいてくる相手は、あなたの将来まで考えているとは限りません。
「守ってあげる」
「助けてあげる」
「俺が全部なんとかする」
その言葉が本気だったとしても、法的な責任や現実的なリスクまで引き受けてくれるケースは、ほとんどありません。
DV・モラハラが理由でも、不貞は法的に不利になる

DV・モラハラがあっても、不貞行為は「違法」と評価される
DVやモラハラを受けていたとしても、配偶者以外と肉体関係やそれに近い関係を持てば、法律上「不貞行為」として扱われます。
不貞行為は民法上の違法行為で、離婚や慰謝料請求の際、非常に不利に評価される可能性があります。
- 「夫(妻)がDVだったから仕方なかった」
- 「心身ともに限界だった」
その事情が考慮されることはありますが、不貞行為そのものが違法でなくなるわけではありません。
直接的な証拠がなくても不貞は認定される
不貞行為は、直接的な証拠がなくても、以下のような間接証拠から認定されることがあります。
- 自宅前に特定の相手の車が頻繁に停まっている
- 相手の最寄り駅への交通系ICカードの履歴
- メールやLINEのやり取り
- 領収書やクレジットカードの明細
- 深夜や休日の継続的な外出
「一緒にいるところを撮られなければ大丈夫」という考えは、現実的ではありません。
「婚姻関係が破綻していた」主張は通らないことが多い
不倫が問題になったとき、「もう夫婦として終わっていた」「心は離れていた」と主張するケースがあります。
しかし、法律は気持ちでは判断しません。見るのは生活の実態です。
たとえば、次のような場合、原則として「婚姻関係が破綻していた」とは認められません。
- 同居して食事や洗濯などを共同で行っている
- 子どもの学校行事やイベントに一緒に出かけている
- 親戚づきあいが続いている
- 子どもの生活について、LINEなどで日常的にやり取りしている
嫌々であっても、表面的に夫婦生活が維持されていれば、法律上は婚姻関係は継続と判断されます。
DVやモラハラの関係でも、子どものため、生活のために最低限のやり取りを続けているケースがほとんどです。
そのため、「心が離れていた」「夫婦関係は終わっていた」と感じても、法律上は別物だと理解しておく必要があります。
不貞が認定されると「有責配偶者」とされ、離婚ができなくなることがある
不貞行為は、夫婦の信頼関係を壊す行為として、法律上は不法行為のひとつと位置づけられています。
そのため、不貞が認定されると、「離婚の原因を作った側」、いわゆる有責配偶者と判断される可能性が高くなります。
ここで、もっとも知っておいてほしいのが、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないという点です。
DVやモラハラを理由に離婚を考えていた場合でも、不貞があることで、立場が一気に逆転することがあります。
相手が離婚に応じない場合、
- 別居期間が相当長期間に及んでいる
- 未成熟の子どもがいない
- 離婚によって相手が著しく困窮しない
といった条件がそろわない限り、裁判で離婚が認められないことも珍しくありません。
その結果、本来は被害を受けていた側であっても、離婚条件で不利な立場に立たされるという状況に追い込まれてしまうことがあります。
モラハラ慰謝料は少額になりやすく、不貞慰謝料は高額になりやすい
DVやモラハラを理由とする慰謝料は、事案によりますが、おおむね50万円~300万円程度が多いです。
身体的暴力が深刻で、証拠が揃っていれば高額になる場合もあります。
一方、モラハラのみの場合は、証拠が残りにくく、録音や記録があっても「性格の不一致や口論」と判断されることも少なくありません。
そのため、不貞慰謝料を上回る金額を得るのは難しい傾向があります。
これに対して、不貞行為が認定され、離婚原因と判断されると、慰謝料は200万円~300万円程度、事案によってはそれ以上になることもあります。
結果として、DVやモラハラの被害者であっても、不貞があると立場が一気に不利になる可能性があるのです。
不貞に踏み出す前に知ってほしい「壊れない選択」

「俺が慰謝料を払う」は法的にはほぼ意味がない
不倫相手から「慰謝料は俺が払う」と言われたとしても、その約束に法的拘束力はほとんどありません。
実際に責任を負うのは、行為をした本人です。
約束が守られなかったとしても、それを取り戻すのは簡単ではありません。
DV・モラハラ被害者が頼るべきは個人ではなく行政支援
DV・モラハラの被害者には、行政や公的機関による支援制度があります。
DVやモラハラを受け続ける日々の中では、
「今すぐこの苦しさから離れたい」
「誰でもいいから助けてほしい」
という気持ちが強くなりがちです。
その結果、もっとも身近に見えた個人――知人や異性、優しい言葉をかけてくれた相手――に頼ってしまうことがあります。
しかし、個人の善意にすがる形で始まった関係は、法的にも生活面でも、あなたを長期的に守ってくれる保証はありません。
一方で、DV・モラハラの被害者が利用できる公的な支援は、制度として最初から用意されており、相手の気持ちや状況に左右されず利用できます。
たとえば、
- 自治体のDV相談窓口
- 女性相談センター
- シェルターや一時保護
- 弁護士を通じた安全な別居や離婚の準備
これらの支援は、すぐに心を軽くしてくれるものではありませんが、あとからあなたの生活や立場を守る、確実な選択肢です。
不倫したくなるほど辛い夫婦関係は、すでに限界
浮気や不倫に走ってしまうほど辛いなら、その夫婦関係は、すでに限界を超えています。
罪悪感や後ろめたさを抱えながら助けてもらう必要はありません。
法律や公的支援を味方にすれば、少しずつ状況を整理する道があります。
まとめ:これ以上傷つく前に

DVモラハラで追い詰められ、判断力を奪われた状態で不倫に踏み出してしまい、結果として経済的・精神的にさらに傷つく方は少なくありません。
自分を否定されてばかりの状況では、誰かに頼りたくなる気持ちも当然です。
しかし、法律は感情で判断してくれません。不貞は不貞として扱われ、立場を不利にする可能性があります。
つらい気持ちのまま、誰か個人に頼ると、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。
しかし、行政や専門家の力を使い、法的に安全な順番で動くことで、自分や子どもの人生を守れる道はしっかりあります。
こうした方法で現実的に人生を立て直せるケースは、実際に多く存在します。自分を責める前に、まずは現実を知り、安全な選択肢を取ることが大切です。
不貞行為と離婚について詳しく知りたい方は、これらの記事も参考になります。
↓↓↓
DV・モラハラ・離婚で弁護士をお探…


「夫婦関係が破綻してたら不倫しても慰謝料請求されない?」婚姻関係の破綻と不貞行為について徹底解説! |…
妻とはもう終わってるんだ。夫婦関係が破綻してる場合は慰謝料請求は無効になるし、心配いらないよ。 夫の不倫が発覚しました。問い詰めると「夫婦仲はもともと破綻してる…
DV・モラハラ・離婚で弁護士をお探…


【親権・監護権】不倫したら親権・監護権は不利になる?親権獲得できた事例・できなかった事例を解説します…
離婚の原因として民法でも認められている不貞行為。配偶者以外と不倫をすると有責配偶者となり、有責配偶者からの離婚請求は認められないなど、離婚する上では不利になって…
DV・モラハラ・離婚で弁護士をお探…


キスだけや性交渉無しでも不倫?どこからが不貞行為か、慰謝料請求が認められるケースについて解説します。…
相手の不貞行為によって離婚や慰謝料を請求した際、相手からは「性交渉は無かった」「キスだけしかしていない」等、自身の行為が不貞行為にはあたらないと反論されることが…




