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生活費をくれない夫は経済的DV?チェックリストや倹約との違い、対処法について解説!
夫から生活費をもらえない、自分は趣味にたくさんお金を使っているくせに「贅沢するな」と少しの娯楽も許してもらえない、働きたいのに働かせてもらえない・・・。
それは「経済的DV」かもしれません。
このコラムでは、経済的DVの特徴や倹約家との違い、経済的DV加害者の具体例や心理、対処法について解説します。
経済的DVとは
経済的DVとは、配偶者間や家庭内で、生活費を十分に渡さない、通帳や給与明細を隠す、外で働くことを制限するなどの行為を通じて、経済的に相手を追い詰める行為を指します。このような状況は、経済的依存を強いられるだけでなく、精神的な苦痛をもたらすため、DV(ドメスティック・バイオレンス)の一種として考えられています。
経済的DVは暴力の一種であり、配偶者が「ケチだから」といったレベルでは済まされない重大な問題です。
倹約と経済的DVの違い
倹約と経済的DVには一見似ている部分があります。しかし、その動機と目的には大きな違いがあります。倹約は家庭の安定や目標達成を目指すための前向きな取り組みであり、家族全体の合意が前提となります。
一方で経済的DVは、一方的な支配を目的とする行為であり、被害者の自由を奪うことで力関係を強調する性質があります。この相違点を理解することが、両者を正しく区別する第一歩です。
共働きにも潜む経済的DVの実態
経済的DVは一見、収入のない専業主婦がターゲットになりやすいと思われがちですが、実は共働きの夫婦間でも発生することがあります。
- 妻の収入をすべて家計に入れることを強制する
- 夫が自由に浪費をしながら、妻の支出を厳しく制限する
といった行為も共働き夫婦における経済的DVの典型例と言えます。このような状況では、収入があっても妻は自分の金銭的自由を奪われ、精神的にも追い詰められることがあります。共働きだから経済的DVがないという思い込みは危険です。
経済的DVがもたらす影響
生活苦と精神的な苦痛
配偶者から十分な生活費が渡されない、または収入や支出の全てを厳しく管理されることによって、買い物や医療費の支払いなど、必要最低限の生活にも支障をきたす恐れがあります。
また、自由に使えるお金を制限されることで、行動範囲が狭まり社会との繋がりが薄れることがあります。
このような状況は、自己肯定感の低下や不安感の増大など、精神的な負担として表れることが特徴です。経済的負担が長期化すると、自分で選択する力を奪われる感覚に陥り、結果として抑圧感や閉塞感を感じることも少なくありません。
子供の生活環境や将来への影響
子供がいる家庭の場合、生活環境や将来に大きく関わります。例えば、家計が逼迫しているために子供の学費が払えなくなるケースや、生活費が足りないために栄養バランスの取れた食事を提供できないケースが挙げられます。
さらに、親の一方が経済的DVを受けている姿を目の当たりにすると、子供は不安やストレスを抱える可能性があります。その影響は、学業成績や対人関係の問題として現れることもあります。
経済的DVに気づくためのチェックリスト
パートナーから収入や支出を隠されている
- 夫が給料の詳細を教えない
- 家計にどれだけの収入があるのか妻に知らせない
収入や支出の透明性が欠けることで、家族全体の生活設計が不可能となり、不安やストレスが増大します。特に共働きの場合でも、パートナーが家計の管理を一方的に支配することは経済的DVに該当する可能性があります。
生活費や必要経費を十分にもらえない
- 少なすぎる生活費しか渡してくれない
- 「テレビで月3万でやりくりしている人を見た」と非現実的な家計管理を強要する
「生活費をこれ以上渡せない」「これで十分だろう」と言い渡されると、家計が破綻するだけでなく、日常生活そのものも困窮する可能性があります。また、生活費が足りない状況に陥っているにもかかわらず、協力を拒まれる場合は深刻なモラハラの一環と言えるでしょう。
働きたい意思を認めてもらえない、もしくは圧力をかけられる
- 「家庭を守るのが母親の仕事だろ」と言われる
- 「仕事のせいで家事育児を少しでも怠ったら許さないからな」と脅される
働きたい、収入を増やして家計を補いたいという意思をパートナーが認めない場合、これも経済的DVの一形態に該当します。
過剰な節約や浪費を強制される状況
- 自分は酒タバコ、趣味に浪費して「俺の金なんだからどうしようと俺の勝手だろ」と言う
- 「働いてないのだから贅沢するな」といって、衣服代や少しの娯楽費も出してもらえない
「生活に必要な買い物すら贅沢」と断じられ費用を渡されない過剰な節約生活を強いられる、「小遣い」を過度に制限される一方、パートナー自身が浪費や借金を繰り返すケースも見られます。
経済的DV加害者の心理とは?
浪費や借金が原因の場合
夫が生活費を渡さない背景に、自身の浪費や借金問題が隠れているケースは少なくありません。夫が収入を無計画に使ってしまったり、ギャンブルや趣味への過剰な支出が原因で家計が圧迫されることがあります。このような場合、妻からすると必要な生活費が足りないと感じることとなり、家計を支える上で大きな負担となります。
また、夫が借金を抱えている場合、家庭の支出を隠し、家計を管理することで事態を収拾しようとすることがあります。しかし、結果的には妻や家庭に経済的な困窮をもたらし、関係がさらに悪化してしまいます。このような状況では、夫婦間で家計の透明性を高めることが重要ですが、それが難しい場合は専門家への相談やサポートを検討するべきです。
支配欲とコントロールの欲求
経済的DVを行う加害者の心理の裏には、配偶者や家族を自分の支配下に置きたいという強い欲求があることが分かっています。経済的な自由を奪うことで、相手の行動をコントロールし、自身の優位性を保とうとしているのです。
これは、単に金銭に厳しい「倹約家」とは異なり、相手に自由や選択の余地を与えないという特徴を持ちます。この支配欲は、他者に対する信頼感の欠如や過去の経験からくる不安感とも結びついていることが多いです。
経済的DVを「倹約」と正当化する理由
経済的DVの加害者は、自分の行動を「家庭のため」「倹約のため」と正当化しがちです。「家計の管理を徹底するため」と称して生活費を極端に絞ったり、相手が稼いだお金を取り上げる行為は、健全な倹約とは言えません。加害者自身がその行動を善意だと考えている場合も多く、この思い込みが問題をさらに悪化させる要因となっています。
経済的DVで別居・離婚を考えている場合
婚姻費用を請求する
夫婦には、民法第752条で規定されている「同居・協力及び扶助の義務」に基づき、婚姻生活にかかる費用を分担する義務があります。この費用のことを法律では「婚姻費用」と言います。婚姻費用は夫婦それぞれの年収や子どもの数により、「養育費・婚姻費用算定表」が裁判所によって定められています。婚姻費用は、別居中の夫婦が請求する事例が一般的ですが、同居していても請求することができます。
婚姻費用に含まれる費用は、以下のものになります。
- 衣食住の費用(家賃、食費、衣服代、水光熱費など生活にかかる費用)
- 出産費用
- 医療費
- 養育費(子どもの生活にかかる費用)、教育費(学費、習い事等)
- 交際費・娯楽費
生活費をくれない夫には、婚姻費用の算定表を見せることにより、夫婦には生活費を支払う法的な義務があることを説明してみるのも一つの手です。
それでも生活費を支払おうとしない配偶者には、「婚姻費用分担調停」を申し立てることにより、調停委員とともに婚姻費用について話し合うか、それでも支払ってくれない場合は最終的に裁判所が相手に支払いを命じることがあります。
証拠を集める
経済的DVを理由に離婚を考えている場合は、証拠を集めることが重要です。たとえば、「生活費を十分にもらえなかった」「金銭的自由を制限された」などの事実を日記やメモに残すことが証拠収集の第一歩となります。また、銀行口座や契約書類などの経済的資料も取りまとめておくことで、後々の交渉や法的手続きに役立ちます。
同時に、信頼できる家族や友人に相談することで精神的な支えを確保することも重要です。経済的DVは精神的負担も大きいため、一人で抱え込まず周囲の協力を得るよう努めましょう。
弁護士やカウンセラーに相談する
経済的DVへの対策を進めるうえで、専門家のアドバイスを受けることはとても有効です。弁護士は、被害者の側に立ち、経済的DVを証明するための法的な助言を提供してくれます。
特に、婚姻費用分担請求や離婚時の財産分与の手続きを検討している場合、弁護士に依頼することで、DVモラハラ加害者の無理な主張にも毅然とした対応をしてくれるでしょう。
また、カウンセラーは精神的な負担を抱える被害者の心のケアを行う専門家です。自分の受けた仕打ちに正当性を見い出しにくい場合、感情を整理し、必要な判断ができる状態に導く重要な役割を果たしてくれます。専門家の力を借りることは、精神的・法的支援の両面で有効な手段です。
DV・モラハラの相談・避難先一覧
内閣府の配偶者暴力相談支援センターやNPO団体などでは、被害を受けた人が匿名で相談できる窓口が設置されています。これらの機関では、法律的アドバイス、心のケア、場合によってはシェルターの紹介などを受けることが可能です。
また、市区町村の福祉課や女性相談センターでも相談を受け付けています。
相談機関 | 特徴 |
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DV相談+(プラス) | 電話・メールは24時間365日対応。チャットは12:00~22:00。 外国語相談にも対応(チャット)。 |
DV相談ナビ | #8008(はれれば)にかけると、発信地等の情報から最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談できる。 |
配偶者暴力相談支援センター一覧(全国) [PDF形式:315KB]
まとめ
配偶者が十分な生活費を渡さない場合、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求」を申し立てることができ、この仕組みを利用することで生活費の支払いを法的に求めることが可能です。
別居・離婚を考えている場合、早めに弁護士に相談することで、どのような資料や証拠が必要か、請求できる婚姻費用の額はどのくらいか等の助言を受けることができ、今後の見通しが立てやすくなります。
法律事務所リベロでは、DVモラハラ事件に携わって17年の所長弁護士がご相談をお受けしております。経済的DVに悩んでいるは、お気軽にお問合せください。