財産分与とは?専業主婦でももらえる“5つの財産”と注意点

離婚を考えたとき、多くの専業主婦が不安に感じるのが「財産分与」です。
「夫名義の家でも私に取り分があるの?」「貯金や年金、退職金はどうなる?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実は、専業主婦であっても結婚生活の中で築かれた財産には、正当な権利があります。
このコラムでは、離婚時に専業主婦でも受け取れる財産の種類や、財産分与の具体的な内容、注意点までわかりやすく解説します。
不利な条件を飲まされる前に、ぜひ知っておいてほしい情報をまとめました。
目次
財産分与とは?誰がもらえるのか

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際に公平に分け合うための制度です。
専業主婦であっても、財産分与の対象になります。なぜなら、収入を得ていなくても、家事や育児、介護などの家庭を支える役割が、夫婦の財産形成に大きく貢献していると認められるからです。
目に見えにくいこうした労働も、夫婦の共同作業として財産形成に寄与したものと評価されます。
専業主婦でももらえる!財産分与の対象になる5つの財産

財産分与の対象は、「婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産」です。 以下のような財産が含まれます。
- 預貯金
生活費の残りや貯金も共有財産となります。 名義が夫でも、婚姻中に貯まったものであれば対象です。 - 不動産(マイホームなど)
住宅ローンがあっても分与の対象です。 評価額からローン残高を差し引いた「純資産」が分けられます。 - 自動車・家具・家電などの動産
高額な車や家電も対象。 生活に必要なものであっても、資産価値があれば考慮されます。 - 退職金
将来支給予定でも、勤続年数の割合などによっては分与の対象に。 会社員・公務員問わずケースによって判断されます。 - 株式・保険・年金など金融資産
株や投資信託、生命保険の解約返戻金、年金分割の対象となる厚生年金なども忘れず確認を。
財産分与はいつからいつまでの財産が対象?
財産分与の対象となるのは、「婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産」です。
つまり、結婚してから離婚するまでに増えた財産が分けられるということになります。
しかし、実際には「財産分与の基準時」が重要で、一般的には夫婦が別居を開始した時点が基準時とされます。
基準時とは「ここまでの財産を分ける対象とする」と決めるタイミングのことです。
そのため、別居後に相手が新たに貯めたお金や増えた資産は、共有財産ではなく『特有財産(個人の財産)』と判断される可能性が高いのです。
なお、財産分与の請求は離婚成立後2年以内に行う必要があります。
この期間を過ぎると、請求権が消滅してしまうため、早めの対応が大切です。
共有財産にならないものは?
財産分与の対象は「婚姻期間中に夫婦で協力して築いた共有財産」ですが、すべての財産が分けられるわけではありません。以下のようなものは、一般的に共有財産にならないとされています。
- 結婚前から持っていた財産
結婚前にどちらかがすでに所有していた貯金や不動産などは、基本的にその人の「特有財産」です。 - 相続や贈与で得た財産
婚姻中に相続や贈与によって得たお金や物も、財産分与の対象にはなりません(ただし、これらの財産を夫婦共有の口座に移したり、夫婦の生活費などに使っていた場合は、「共有財産とみなされる」可能性もあります。)。 - 別居後に増えた財産
夫婦が別居してから増えた貯金や資産は、共有財産ではなく特有財産とみなされることが多いです。 - 個人の慰謝料や損害賠償金
離婚に関する慰謝料や損害賠償として受け取ったお金は、特有財産として扱われます。
これらの財産については、分与の対象外となる場合が多いので注意が必要です。
財産分与の計算方法
財産分与の金額は、夫婦で築いた共有財産の総額から、借金などの負債を差し引いた「純資産額」が基準になります。
基本的には、この純資産を夫婦で「2分の1ずつ」分けるのが法律の原則です。
つまり、専業主婦であっても、婚姻期間中に築いた財産の半分を受け取る権利があります。
ただし、話し合いや調停で合意したり、事情によっては分配割合が変わることもあります。
住宅ローンが残っている場合はどうなる?

「家はあるけどローンが残っている…」という場合、以下のような扱いになります。
- 家の評価額(時価)を調べる
- そこからローン残高を引いて、「プラス」ならその価値を分ける
- 「マイナス」なら、清算不要・または話し合いで調整
また、家を一方が住み続ける場合は、名義変更やローンの支払い方法について合意が必要です。
「退職金」「年金」も対象になる?
退職金は、「退職予定が近い」あるいは「会社で支給規定が明確」な場合、対象になることがあります。
つまり、まだもらっていなくても「将来もらう予定の退職金」も、婚姻期間中に積み上げたものであれば共有財産として分けることが可能です。
また、厚生年金などは「年金分割」として手続きできる制度があります(年金分割請求)。
専業主婦であっても、婚姻期間中に夫が厚生年金に加入していた場合、その一部を分割して受け取れる可能性があります。
ただし、年金分割の請求には「離婚後2年以内」という期限があるため、忘れずに手続きを行うことが大切です。
退職金や年金は見落としがちなポイントですが、将来の生活に大きく影響します。しっかり確認しておきましょう。
財産分与を確実に進めるために

財産分与をしっかり受け取るためには、証拠の準備と早めの行動がカギです。
証拠を集めておく
- 通帳や資産の名義・残高の確認
給料振込口座や貯蓄用口座の通帳や、銀行からの残高証明書を用意しましょう。 - 不動産の登記簿謄本や評価証明
不動産の登記簿謄本は、法務局で取得できます。
また、不動産の評価については、一般的に不動産会社が作成する査定書や、不動産鑑定士による評価報告書が利用されます。
これらの資料は、財産分与の話し合いや裁判で重要な証拠となるため、早めに準備しておくことをおすすめします。 - 退職金規定や保険証券
勤務先の就業規則や退職金規定を確認し、退職金の見込み額を把握します。
また、生命保険や医療保険の証券も手元に用意しておきましょう。
弁護士への相談
- 「何がもらえるのか」明確にしてから動く
- 財産隠しが疑われる場合にも対応してくれる
話し合いが難しいときは調停・審判も視野に
財産分与についての話し合いがうまく進まない場合、家庭裁判所の調停や審判といった法的手続きを利用することができます。
「専業だから…」と遠慮する必要はまったくありません。夫婦で築いた財産に対する権利は、誰にでも平等にあります。正当な権利として、きちんと請求することが大切です。
また、専門知識のある弁護士に相談すれば、法的なアドバイスを受けられるだけでなく、相手との話し合いの代理や調停手続きのサポートもしてもらえます。これにより、安心して手続きを進めやすくなります。
離婚や財産分与で悩んでいるなら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
おわりに
専業主婦であっても、夫婦で築いた財産には「半分の権利」があります。
「自分は働いていないから…」「家計を任せっきりだったから…」と引け目を感じる必要はありません。家事や育児といった日々の見えない労働も、家庭を支える大切な役割として、法律上きちんと評価されています。
離婚は、感情的にも経済的にも大きなエネルギーが必要な出来事です。その中で、財産分与について自分から声を上げることに、勇気がいる方も多いかもしれません。
けれど、財産分与は「権利」であって、わがままではありません。
自分や子どもの将来を守るために、知識を持ち、適切な準備をしておくことは、とても大切なことです。
もし何をどうすればいいか分からない…というときは、離婚に詳しい弁護士に早めに相談してみてください。
あなたの状況に合わせて、どの財産が対象になるのか、どんな証拠が必要か、具体的にアドバイスを受けることができます。
不安を一人で抱え込まず、少しずつでも「前に進む準備」を始めてみましょう。