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【判例紹介】パートナー関係にある男女間の慰謝料請求は認められるのか?
最近は“事実婚”や“セカンドパートナー”など男女関係や夫婦のあり方も多様化してきています。
事実婚・・・法律上の婚姻手続きを取らないまま,男女が夫婦同様の生活を送ること。
セカンドパートナー・・・配偶者以外の人間と恋愛関係をもつこと。
では,そのような法律上婚姻関係にない男女間でトラブルが発生した場合に,慰謝料を請求しそれが認められることはあるのでしょうか?
今回は実際にあった判例をもとに解説したいと思います。
事件について
事案の概要
当初男性と女性は結婚するつもりで交際をしていましたが,入籍手続直前で婚約を解消しました。
しかし“特別の他人”として籍を入れることなく,近所に住み、交際を続けていました。
両者は同居することはありませんでしたが,互いの住居に泊まったり,旅行に行ったりしていました。
そのようなパートナー関係を続けているうちに男性は子どもをもつことを強く望むようになりました。
女性は出産に消極的だったものの,男性が子の養育や金銭面について責任を持つと約束したため,出産することを決めました。
そして,子が法律上不利益を被ることのないよう,出生の日に婚姻届を提出しその3ヶ月後に協議離婚の届出をしました。
男性と男性の親は出生した子を引き取り養育し,そして妊娠・出産にかかった医療費やその他の費用を女性に渡し,女性が子の養育にかかわることはありませんでした。
数年後,再度男性と女性の間に子供ができ,出産しました。
第一子同様,出生と同時に入籍しその数日後に協議離婚しました。また男性から女性へ出産等にかかった費用を渡し,子は男性が引き取りました。
女性が第二子を妊娠している頃から,二人の関係は悪化し,男性から女性への暴力行為等がありました。
出産後両者は一時絶交状態にありましたが,その後関係が修復し,互いの仕事を手伝うこと等がありました。
しかし数年後,男性は勤務先の従業員と交際することとなり,その2年後に,女性との間に子供が2人いることを話し理解してもらった上で,その従業員と結婚することを決めました。
男性は「今後は今までのような関係をもつことは出来ない。」等記載した手紙を女性に渡し,他の女性と結婚する旨を告げ,女性との関係を解消しました。
女性は,男性が突然かつ一方的に両者の間の「パートナーシップ関係」の解消を通告し,他の女性と婚姻したことが不法行為に当たり,精神的損害を被ったことから,慰謝料の請求を求めました。
地裁・高裁の判決
第一審では,慰謝料の請求は認められなかったため,女性は高等裁判所へ控訴しました。
その結果高等裁判所では,以下のように判断されました。
- 法律婚として法の保護を受けることや同居・扶助義務を否定した関係であるため,その解消に当たっては,互いに損害賠償責任は生じない。
- 一方で両者は16年間にわたり上記のような関係を継続し,子どもをもうける等,互いに“特別の他人”としての立場を保持してきたことも認められる。
- 上記のことから両者の間で,格別の話し合いもなく,パートナー関係を一方的に破棄し,それを破綻させるに至ったことについて,女性における関係継続についての期待を一方的に裏切るものである。
とのことから,男性に対し慰謝料を支払うことを命じました。
最高裁判所の判決
高等裁判所の判決を不服とし,男性は最高裁判所へ上告しました。
その結果,最高裁判所は以下のように判断しました。
上告人(男性)と被上告人(女性)との間の関係については,婚姻及びこれに準ずる者と同様の存続の保証を認めるよりがないことはもとより,上記関係の存続に関し,上告人(男性)が被上告人(女性)に対して何らかの法的な義務を負うものと下することは出来ず,被上告人(女性)が上記関係の存続に関する法的な権利ないし利益を有する者とはいえない。
そうすると,上告人(男性)が長年続いた被上告人(女性)との関係を突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻するに至ったことについて被上告人(女性)が不満を抱くことは理解し得ないではないが,
上告人(男性)の上記行為をもって,慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することは出来ないというべきである。
として,女性の請求を全て棄却しました。
(最高裁 平成16年11月18日判決)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
男女あるいは同性同士でも様々な関係性があり,それが肯定されてきつつある世の中ですが,
パートナー関係について細かに定めた法律はなく,男性がパートナー以外の別の女性と結婚することは不法行為にあたらないとされ,
本事例では慰謝料の請求は認められませんでした。
パートナー関係を結ぶことになった場合には,子供のことや金銭のこと,男女関係等今後トラブルになりそうな事項については,
互いに取り決めをしたうえで生活を送ることが望ましいといえるでしょう。