【子連れ別居】配偶者に内緒で,子どもを連れて別居することは違法?

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

これはトラブルになるケースが非常に多いです。

そして,他方配偶者に内緒に,子を連れて別居をした場合に,他方配偶者から子の返還を求める裁判(監護者指定,子の引渡しの審判)を起こされた場合などに,違法な連れ去りと主張されることが多いです。

確かに,勝手に子を連れ出た以上,他方配偶者からすれば連れ去られたと考えるのも理解は出来ます。

この点,子が年齢が高くなればなるほど,子の意思で動いているため,連れ去りとされる可能性は低いといえます(一緒について行くのが嫌であれば,ついては行かないのが普通です)。

目次

子の年齢が低い場合は?

子の年齢が低い場合にも,事情によっては(例えば,従前,専ら子の監護を行っていた親が子を連れて家を出た場合など),子連れ別居をしたことについて非難できることでないと考えられています。

別居は,多くの場合,他方配偶者がいないときに実行されますが,その際,子を連れて出るか,子を置いて行くかの二者択一を迫られます。

ここで,仮に置いて行くという選択をした場合はどうなるでしょう。

他方配偶者から連れ去りという非難は免れますが,逆に,子を置いていったこと自体が,育児放棄と評価されることがあります。

子が幼い場合などは,子だけを置いていくことは,その親に頼り切っていた子の依存関係や子の安全等を考えた場合には,むしろ許されないとも考えられています。


他方配偶者側からは親権を取るために子を連れて行ったということも主張されることもあり,確かにそういった面もあるのかもしれませんが,従前の監護状況からして,他方配偶者に任せられないから連れて行くというのも大きな理由になっていると思われます。

裁判所の判断

同居中,子の主たる監護者であった側が子を連れて別居

平成17年6月22日,大阪高等裁判所は,同居中,主たる監護者であった妻が子を連れて別居をしたことについて,

「・・・相手方(妻)は,未成年者の出生から抗告人(夫)との別居までの間,未成年者の監護を主として担っていたものであるから,そのような相手方(妻)が抗告人(夫)と別居するに際して,今後も監護を継続する意思で。未成年者とともに家を出るのは,むしろ当然のことであって,それ自体,何ら非難されるべきことではない

と判断しています。

結局のところ,子を連れて出るという選択が適切であったかは,以下の裁判例のように,子の年齢,従前の監護状況,子を連れて家を出る際の事情,その手段,その後の監護状況,面会交流に対する態度等の経過等を考慮して判断されることになります。

平成28年8月5日,静岡家庭裁判所は,

「未成年者らの年齢(当時11歳,8歳程度)や,同人らは出生以来,主として相手方(妻)により監護養育されてきたものであること,相手方(妻)が未成年者らを連れて家を出るに当たり,未成年者らを奪い去る等の暴力的要素が存したものでないこと,相手方(妻)は,別居後,申立人(夫)と未成年者らとの接触を妨げる態度を示すことはなく,むしろ面会交流の実現に積極的であること等を考慮すると,相手方(妻)が未成年者らを連れて家を出た行為を違法と評価することはできない」

と判断しています。

以上とは逆に,同居中,子の監護をほとんど行っていなかった側が小さな子を連れて別居をした場合,子の利益を害する恐れた強いため,不適切と判断され,子を返還しなければならなくなることが多々あります。

実際,以下の裁判では,夫が,主たる監護者である妻に内緒で子を連れて別居したケースで,妻に子を返還するよう命じています。

同居中,子の監護をほとんど行っていなかった側が子を連れて別居

平成29年2月21日,東京高等裁判所決定

(1)相手方(妻)は,未成年者出生後,専業主婦として未成年者の監護を行い,就職した後は抗告人(夫)と協力して監護を行い,この間も食事作りは専ら相手方(妻)が行い,短時間勤務に変更後は監護の時間が増えていたのであり,抗告人(夫)と同居中は主たる監護者であったと認められる。
相手方(妻)と未成年者の関係は良好で,未成年者は順調に成育していたことも併せると,相手方(妻)には監護者としての実績, 継統性があり,十分な適格があると認められる。
これに対し,抗告人(夫)は,相手方(妻)が未成年者の前でも抗告人(夫)に対して暴力をふるい暴言を吐き,未成年者にも影響を及ぼしていたと主張する。
しかし,記録によれば,相手方(妻)が抗告人(夫)に対してメールで感情的な表現を送信した事実は認められるものの,夫婦間のロ喧嘩の域を出るものではなく,「配偶者からの暴力 (DV)」に該当するような暴言,暴力があったとは認められないし,未成年者の前で激しい口論が繰り返されていた事実も認められず,相手方(妻)の監護者としての適格に疑問を抱かせるような事情はうかがえない。
抗告人(夫)は,相手方(妻)と未成年者との関係が希薄であったとも主張するが,同居中に関係が希薄であったような事情は認められない。未成年者が相手方(妻)と離れて生活している現状において相手方の話をしないとしても,関係が希薄であることを示すものではない。

(2)抗告人(夫)は,平成28年5月以降,未成年者を監護し,未成年者の成育や生活に問題はなく,抗告人(夫)と未成年者との間に重大な問題はみられない。
抗告人(夫)は,相手方(妻)との同居中の平成26年10月から平成28年3月ころまで,タ方以降は未成年者の監護を多く行っていたことも併せると,抗告人(夫)も未成年者の監護者として一定の適格を有しているといえる。
ただし,前記のとおり,同居中の主たる監護者は相手方(妻)であったといえるし,平成28年5月以降の監護に関しては,後記(3) ( 4)の問題がある。

(3)抗告人(夫)は,・・・相手方(妻)に告げず,未成年者を連れて自宅を出て別居を始めた。
抗告人(夫)は,相手方(妻)から度重なる暴言や暴力を受けていたため危害から守るとともに未成年者の健全な育成のための別居であると主張するが,前記のとおり,「配偶者からの暴力(DV)」に該当する暴言,暴力があったとは認められず,抗告人(夫)は相手方(妻)とのいさかいが続き,非難されることに耐えられす,未成年者を巻き込んで家を出たもの認められる。
その行動には,未成年者の監護養育を第一に考え,夫婦間で真摯に話し合い,関係の修復に努力しようとする姿勢はみられず,別居を決めるに際して未成年者の福祉を考慮したとは認められない。
その結果,未成年者に環境を激変させる負担を与えたほか,相手方(妻)との連絡を絶っていることも,未成年者の成育に極めて不適切である。抗告人(夫)が未成年者を連れて家を出た行為は,抗告人(夫)の監護者としての適格について,大いに疑問を抱かせるものであり,また,平成28年5月以降の抗告人(夫)による監護がこのような経過で開始されたものである以上,その実績や継続性を尊重することはできない。

(4)・・・抗告人(夫)は近隣住民から児童相談所に通告されている。記録によれば,抗告人(夫)は児童相談所職員に対して未成年者がトイレで排泄に失敗してぐずっていたと述べた事実が認められるが,近隣に聞こえるほどの怒鳴り声をたびたび浴びせているのであり,監護者として適切な行為とは認められない。

(5)監護の補助態勢をみると,相手方(妻)が未成年者を引き取った場合,未成年者との関係が良好であった両親と同居し,日常的に援助を受けることができるのに対し,抗告人(夫)は未成年者と2人暮らしであり,父母の家は近くにはなく,また父は医師の仕事に従事しており,父母による日常的な援助や緊急の対応は困難であり,伯父夫婦の援助もどの程度受けられるのか確かでない。

 (6) 以上のとおり,未成年者の監護に関して,相手方(妻)には監護者として十分な適格があり,補助態勢も整っているのに対して,抗告人(夫)は,監護者として一定の適格を有していると認められるものの, (3) (4)のとおりの問題があり,補助態勢も十分でないから。
相手方(妻)を監護者とし相手方(妻)が未成年者を引き取って養育するのが未成年者の福祉に適うと認められる。

まとめ

以上の裁判例では,いずれも主たる監護者が妻と判断されていますが,最近では共働き夫婦が多く,また,テレワークなどで夫が在宅していることもあり,どちらが主たる監護者であるかの判断が難しいケースもあります。
また,主たる監護者といえる場合であっても,別居後の監護態勢や生活環境が,他方配偶者と比較して,顕著に劣ったり,監護中の主たる監護者による監護に重大な問題点があり,それが将来も続くような場合には,子の返還を命ぜられることがあります。

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所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

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