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【DV】DV加害者が暴力を振るう理由とDV被害が減らない理由を弁護士が解説
2001年のDV防止法の成立・施行がきっかけでDVという言葉が周知されるようになり,現在では”DV”という言葉の意味を知らない人はほとんどいないのではないかというような状況にあります。
しかし,法律が整備されてきているにもかかわらず,DVに関する警察への相談件数は増加の一途をたどっており,
警察庁によれば2023年のDV相談件数は全国で約8万8600件あり,その前年と比較して4000件増加し,DV防止法施行以降最多件数となったそうです。
またこのような背景から2024年4月1日より「改正DV防止法」が施行されました。
しかしDVへの関心が高まる一方で,相談件数が年々増加しているのはなぜでしょうか?
また世間でもDVの認知は高まっているにもかかわらず暴力を振るってしまう理由とはなぜでしょうか
なぜDV加害者は暴力を振るうのか
まず,なぜDV加害者は配偶者やパートナーに暴力を振るうのかということについて解説します。
その理由は簡単に言えば「暴力を振るうとおいしい思いができるから」です。
ドラマや映画などでDVをする人物は「ついカッとなって手が出る」,「怒りの感情が爆発して殴ってしまう」というイメージがあるかと思います。
しかし本当にカッとなってすぐに手が出てしまう人ならば,相手が誰であろうとも反射的に手をあげているはずです。
それがたとえ職場の上司・同僚でも,たまたま入った店の店員でも,近所の人であってもです。
DV加害者はどんなにストレスを感じても,そのような人たちに対しては手を出しません。DV加害者はちゃんとTPOをわきまえた行動が出来る自制心を持っています。
つまり,DV・モラハラ加害者は,配偶者や交際相手,あるいは子どもには「暴力を振るってもいい」と判断して,相手を選んでDVを行っているのです。
DV加害者は,被害者を対等な存在であるとは思っておらず,むしろ「支配できる人」だと思っています(無意識にそう思っている場合もあります)。
DV加害者はたいていの場合,被害者より収入があったり,身体的な力の差から被害者を見下しており,服従させるためなら暴力もいとわないというような発想を持っています。
また,暴力を振るっても「収入がないから,自立する力がないから逃げないだろう」と考えるため,暴力を選ぶことが出来るのです。
そして被害者はこれ以上暴力を受けたくない一心で,我慢して加害者の言うことを聞いてしまいます。
暴力を振るえば,簡単に相手に言うことを聞かせてしまえるのですから,加害者にとってこれほどおいしいことはありません。支配欲を満たすことも出来ます。
そして暴力を振るっても相手は逃げないと考えているため,加害者にとってデメリットは全くありません。
こうして,DV加害者は力の差を盾に,被害者に言うことを聞かせるために暴力を振るうことを「積極的に選択」しているのです。
DV被害が減らないのはなぜ
これまで“DV”というと夫から妻,彼氏から彼女など主な被害者は女性でした。
しかし,DVの認知が高まるにつれて,妻や彼女から暴力を受けていると男性からの相談も増加し,現在ではDV被害相談の3割が男性というデータもあります。
また子どもについて直接的被害はなくとも,両親が子どもの前で”喧嘩する・暴力を振るう・物を壊す”といった面前DVの認知も高まってきています。
平成16年10月に改正された児童虐待防止法では面前DVは心理的虐待に該当すると明確化され,平成25年には警察がDV事案へ積極的に介入する体制を確立しました。その結果,警察から児童相談所へ面前DVを通告する事案が増加しました。
2019年度の面前DVの調査においては,心理的虐待で児童相談所へ通告をされた児童のうち6割が面前DVの被害を受けているというデータも浮かび上がってきました。
件数的にみると,面前DVの項目を設けて統計を取り始めた2012年と比較すると7年で約8倍も増加しているとのことです。
つまり従来の女性からの相談だけでなく男性からの相談数の増加や面前DVの通告もDVの件数として計上されているため,DV全体の相談件数が増加していると考えられます。
DV被害者に公的機関は何をしてくれる?
もし今あなたがDVの被害に悩んでいるのであれば,第三者へ相談しましょう。
DV被害者の保護や支援をしてくれる機関を以下にまとめました。
配偶者暴力相談支援センター
- DV被害の相談・援助・保護
- カウンセリング
- シェルター・母子生活支援施設等での一時保護
- 緊急時の安全確保
- 自立支援,保護命令制度等についての情報提供や助言など援助
警察
- DV被害の相談・援助・保護
- DV被害発生防止のために必要な措置及び援助
(居住地を知られないようにするための措置,加害者への被害防止交渉など) - 緊急対応
(緊急の場合は110番通報もしくは最寄りの警察署に駆け込めば,加害者の検挙・暴力の制止・被害者の保護等必要な措置を行ってくれます。)
地方裁判所
DVの被害を受け警察や配偶者暴力相談支援センターに相談すれば,地方裁判所へ保護命令の申立を行うことができます。
保護命令とはDV被害者が,生命や身体に重大な危害を受ける可能性がある場合,加害者に対して裁判所が被害者への接近禁止命令(6ヶ月間)や退居命令を発令することができます。
加害者が保護命令に違反した場合は刑事処分を受けることになります。
DV被害は外からはわかりにくい!必ず第三者へ相談しましょう
DV被害は家庭内で発生します。そしてDV加害者の大半は外面がよい点が特徴です。
そのためDV加害者をよく知る身内や友人に相談をしても理解を得にくい場合があります。
1人でDV被害に悩んでいらっしゃるのであれば,まずは電話相談窓口での相談をおすすめします。
DVの主な相談先はこちら
相談機関 | 特徴 |
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DV相談+(プラス) | 電話・メールは24時間365日対応。チャットは12:00~22:00。 外国語相談にも対応(チャットのみ)。 |
DV相談ナビ | #8008(はれれば)にかけると、発信地等の情報から最寄りの相談機関の窓口に電話が自動転送され、直接相談できる。 |
また男女共同参画局のホームページには配偶者暴力の被害者の支援情報がまとめられたページがあります。
上記に掲載した以外の相談機関の情報やDVに関するデータ・資料なども掲載されていますので参考にしていただければと思います。