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共同親権でも逃げていい?「無断別居は違法」と言われたときの正しい判断基準

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士 東京弁護士会所属

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士 東京弁護士会所属

勝手に子どもを連れて出ていくのは違法だ」
そう言われて、動けなくなっていませんか。

共同親権が始まったことで、無断別居はできないのではないかと不安に感じている方も少なくありません。

では、DVやモラハラから逃れるための別居も、違法と判断されてしまうのでしょうか。

目次

DV・モラハラ避難は違法ではない

結論から言えば、DVやモラハラから逃れるために子どもを連れて別居することは、直ちに違法と評価されるものではありません。

2026年4月1日に施行された民法改正では、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子どもの利益のために互いに人格を尊重し、協力しなければならないとされています。

また、法務省は、「父母双方が親権者である場合において、その一方が正当な理由なく他方に無断で子の居所を変更するなどする場合」には、この人格尊重・協力義務に違反すると評価される場合があるとしています。

もっとも、同時に、

「DVや児童虐待から避難する必要がある場合には、他方の親に無断で子を転居させたとしても、それらの義務に違反するものではない

法務省  民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕 Q&A形式の開設資料より

とも明記されています。

つまり、DVや虐待がある場合には、子どもや自身の安全を確保するための別居は、例外的に正当な行為として位置づけられています。

もっとも、「DV・モラハラがあった」と主張すれば必ず認められるわけではなく、実際の場面では、その必要性や経緯が争われるケースも少なくありません。

殴られていない場合でも無断別居は認められない?

「殴られるような身体的DVではないから、無断別居は認められないのではないか」
そう不安に感じる方も少なくありません。

しかし、法務省は、DVや虐待からの避難を「急迫の事情があるとき」としたうえで、次のように説明しています。

  • DVや虐待からの避難(子の転居などを含む)をする必要がある場合
    現に被害にあっているときやその直後に限られず、加害行為が行われていない間も、急迫の事情が継続することがある
  • ここでいう「DVや虐待」は、殴る・蹴るといった身体的暴力に限られない
法務省  民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕 Q&A形式の開設資料より

つまり、継続的な威圧や支配、精神的な負担を与える言動であっても、状況によっては「避難が必要な状態」と評価される可能性があります。

もっとも、「どの程度であればDV・モラハラにあたるのか」「本当に避難が必要だったのか」は、個別の事情に応じて判断されます。

そのため、身体的暴力がない場合には、後から別居の必要性を説明できるかどうかがより重要になります。

DVモラハラを立証できる証拠がないとだめですか?

「証拠がないと、無断別居は認められないのではないか」
そう不安に感じる方も多いと思います。

この点について、法務省は次のように説明しています。

  • 無断で子を転居させた場合に、DVや児童虐待の事実を立証しない限り、人格尊重・協力義務違反に当たると判断されるものではない
  • 加害者、被害者の双方がDVの認識を欠いている場合があることも踏まえ、個別の事情に応じて判断される
法務省  民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕 Q&A形式の開設資料より

つまり、「証拠がなければ直ちに違法になる」というものではありません。

もっとも、実際の場面では、
「DVがあったのか」「なぜ別居が必要だったのか」が争われることが多く、結果として、説明できる材料があるかどうかが重要になります。

特に、モラハラのように外から見えにくいケースでは、後から振り返っても状況を説明できる記録があるかどうかで、評価が大きく変わることがあります。

DV・モラハラ避難でも、なぜ「連れ去り」と言われるのか

DVやモラハラ、虐待からの避難であっても、
「連れ去りだ」「実子誘拐だ」と主張されるケースは少なくありません。

その背景には、いくつかの事情があります。

まず、DV・モラハラの加害者は、自分の言動を「加害」と認識していないことが多く、むしろ「自分が被害者だ」と捉えている場合があります。

そのため、子どもを連れて別居されたこと自体を、「一方的に子どもを奪われた」と受け止め、強く反発する傾向があります。

また、第三者から見ても、身体的な暴力が明確でない場合には、状況が分かりにくく、「どちらが問題なのか」がすぐには判断できないこともあります。

さらに、実際に、親の一方が正当な理由無く子どもを無断で連れ去り、そのまま会わせないといった事案も存在しており、こうしたケースと混同されることで、正当な避難であっても「連れ去り」と主張されることがあります。

このように、「連れ去り」と言われる背景には、単なる法律の問題だけでなく、認識のズレや事実関係の見えにくさといった要素が重なっています。

連れ去りと言われないためにやるべきこと

まず前提として、どれだけ正当な理由があっても、「連れ去りだ」と主張されること自体を完全に防ぐことはできません。

DVやモラハラの加害者は、自分の言動を加害と認識していないことが多く、むしろ「自分が被害者だ」と考えているケースも少なくありません。

そのため、子どもを連れて別居した場合には、「連れ去り」と主張される可能性があることは、あらかじめ想定しておく必要があります。

重要なのは、「言われないようにすること」ではなく、「言われたときに説明できる状態を整えておくこと」です。

具体的には、次のような対策が考えられます。

  • DVやモラハラの言動を日付が分かる形で詳細に事実を記録する(LINE等のやりとり、メールソフトで日記を書いて自分に送信する、録音など)
  • 別居に至るまでの経緯を時系列で整理しておく
  • これまで自分が子どもの監護を担ってきたことが分かる記録を残す
  • 子どもの生活環境(学校・生活リズムなど)を維持できるよう準備する
  • 子どもの安全が保たれる場合は、親子交流の意思があることを伝える
  • 警察や配偶者暴力相談センター、病院の診断書等、相談していたことを裏付ける資料を残す

また、感情的に突発的な行動をとってしまうと、後から経緯の説明が難しくなることもあります。

「なぜそのタイミングで別居したのか」「他に方法はなかったのか」といった点を説明できるよう、事前に状況を整理しておくことが重要です。

「連れ去り」と言われるのが怖い場合、話し合ってから別居すべき?

一概に「話し合うべき」とは言えません。

本来、子どもに関する重要な判断は、父母で話し合って決めることが原則とされています。
そのため、一方的に子どもを連れて別居することには、慎重な判断が求められます。

もっとも、ここで重要なのは、これまで相手と対等に話し合いができていたかどうかです。

過去のやり取りを振り返ったとき、
話し合いが「お互いに意見を出して決める場」ではなく、
「相手の意向に従う場」になっていなかったでしょうか。

DVやモラハラがある関係では、「話し合い」と言いながら、実際には一方の意見が押し通される構造になっていることも少なくありません。

また、これまでの話し合いの中で、
暴言や威圧的な態度があった、物に当たる行為があった、あるいは恐怖を感じたことがある場合には、事前に別居の意思を伝えることで、かえって状況が悪化したり、安全が脅かされる可能性もあります。

「話し合うべきか」「伝えずに動くべきか」は、関係性や過去の経緯によって判断が大きく分かれる部分です。

一方で、相手との間で冷静な協議ができており、強い威圧や支配関係が見られない場合には、事前に別居の意思を伝えておくことで、後のトラブルを防げるケースもあります。

そのため、自分のケースではどちらの対応が適切なのか、早い段階で弁護士等の専門家に相談し、具体的な進め方を整理しておくことが重要です。

別居したあと、相手に子どもを会わせないと不利になりますか?

一切会わせない状態が続くと、不利に評価される可能性があります。

親子交流(面会交流)は、原則として子どもの利益の観点から重要と考えられています。
そのため、正当な理由なく一切の交流を拒否している場合には、「子どもの利益に配慮していない」と評価されることがあります。

もっとも、DVやモラハラがある場合には、交流の方法や頻度を慎重に検討する必要があります。
直接会わせることが危険な場合には、第三者機関を利用する、オンライン交流にするなど、安全を確保した方法を検討することが重要です。

子どもに事情をどこまで説明すべきですか?

子どもの年齢や理解力に応じて、必要な範囲で説明することが望ましいと考えられます。

一方の親を否定するような伝え方は、子どもにとって大きな負担になる可能性があります。
そのため、「安全のために環境を変える」といった形で、子どもが安心できる説明を意識することが重要です。

また、別居後の生活について見通しを持たせることで、子どもの不安を軽減することにもつながります。

まとめ

共同親権のもとでも、DVやモラハラからの避難としての別居は、直ちに違法と評価されるものではありません

もっとも、無断別居が許されるかどうかは一律に判断されるものではなく、関係性やこれまでの経緯、別居の必要性など、個別の事情を踏まえて判断されます。

また、実際の場面では、「連れ去りだ」「違法だ」と主張され、監護者指定や子の引き渡しをめぐる争いに発展するケースも少なくありません。

そのため重要なのは、「違法かどうか」だけで判断するのではなく、

・なぜ別居が必要だったのか
・その経緯を説明できるか
・DVモラハラの状況を裏付ける資料や記録があるか

といった点を整理し、準備したうえで行動することです。

共同親権だからといって、子どもや自身の安全を犠牲にする必要はありません。
一方で、十分な準備がないまま感情的に行動してしまうと、後から不利に評価される可能性もあります。

状況によって適切な対応は大きく異なるため、不安がある場合には、早い段階で専門家に相談し、自分のケースに合った進め方を確認することが重要です。

子連れ別居について過去の裁判例を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考になります

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法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約19年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。
離婚相談件数750件超。極真空手歴約20年。
悩んでいる被害者の方に「自分の人生を生きてほしい」という思いから、DVモラハラ加害者との対峙にも決して怯まない「知識・経験」と「武道の精神」で依頼者を全力でサポートすることを心がけています。離婚・DV・モラハラでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約19年にわたり、「DV・モラハラ事件」に積極的に携わっており、「離婚」等の家事事件を得意分野としている。離婚相談件数750件超極真空手歴約20年。
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