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子が非監護親を親と認識していない場合,面会交流は認められますか?
子が非監護親を親と認識していないからといって,面会交流が認められないことにはなりません。むしろ,子の利益のためには,親と子の絆を再構築する必要があるとされています。
子にとって,実親を知らずに育つより,別居親からも愛されていることを知ることの方が成長に資すると考えられているからです。それは,監護親が再婚し,再婚相手と子が養子縁組した場合も同様です(ただし,特別養子縁組の場合には,実親の面会交流は認められません)。
真実を知った場合,子がショックを受けたり,再婚相手との関係に変化が生じること等を懸念される方もおられますが,子には自分のルーツを知る権利があります。ただし,真実を知らせる時期については,子の置かれた生活環境等を踏まえ,慎重な判断を必要とします。また,真実告知後,子がどういった反応を示したかによって面会交流の方法等を検討する必要も出て来ます。
例えば,子が面会に積極的でない場合には,初めから頻回,長時間の面会交流を実施するというのは困難なため,徐々に頻度,時間等を増やしていくなどの工夫が必要とされています。
私が担当した事件では,面会交流審判の事件係属中に母が子に真実を告知し,その反応を見て,裁判所で試行的面会交流を行い,その様子を踏まえ,段階的な面会交流が認められました。なお,事案によっては,真実告知をしないで,試行的面会交流を行い,その際の子の状況を踏まえ,終了後に監護親から告知するという方法もあります。
また,平成21年1月16日,大阪高等裁判所は,子が父を親と認識していない事案において,
「・・・確かに,未成年者が抗告人(父)と面会交渉し,抗告人(父)への愛着を感じるようになったのに抗告人(父)が退去強制となった場合には,未成年者が落胆し悲しむことも考えられるが,未成年者が父を知らないまま成長するのに比べて,父を認識し,母だけでなく,父からも愛されてきたことを知ることは,未成年者の心情の成長にとって重要な糧になり,また,父が母国について未成年者に話すことは,未成年者が自己の存在に関わる国について知る重要な機会となる。
抗告人(父)が日本を退去強制となると,当面は未成年者との直接の面会交渉は困難になるが,手紙等の交換を通じての交流が続けば,未成年者が成長した後も親子間の交流は可能であることにかんがみると,未成年者の福祉を図るためには,現時点で抗告人(父)と未成年者との直接の面会交渉を開始する必要性が認められる」
として,直接の面会交渉を認めました。