「俺を怒らせるお前が悪い」その言葉に苦しんでいませんか?DV・モラハラ加害者の怒りは“その人自身の問題”です

「また怒らせてしまった…私が悪いのかな?」
「もっと気をつけていれば、あの人を怒らせなかったのに」
「私さえ完璧にできれば、平和に過ごせるはず」
そんなふうに思い詰めていませんか?
DVやモラハラの関係にあると、日々怒りをぶつけられ、「自分が悪い」と思わされてしまうことがあります。
「お前が俺を怒らせたんだろ」——この言葉を何度も聞かされ続けると、本当に自分が原因のような気がしてきますよね。
でも、ちょっと待ってください。
それは、完全に間違っています。
怒りという感情は、相手の心の中から生まれるものであって、あなたが「作り出した」ものでも「引き起こした」ものでもありません。
この記事では、DV・モラハラ加害者がよく使う「お前が悪い」という支配の仕組みを、心理的観点からわかりやすく解説します。
読み終わる頃にはきっと、「私は悪くなかった」「この怒りは、あの人の問題なんだ」と思えるはずです。
目次
「俺を怒らせたお前が悪い」は加害者の常套手段

これは「ガスライティング」という精神的虐待です
DVやモラハラの加害者がよく使う「お前が悪い」という言葉。実はこれ、ガスライティングという精神的虐待の典型例です。
ガスライティングとは?
もともと1944年の英米映画『ガス灯(Gaslight)』に由来します。
近年、欧米を中心に注目されるようになった心理的虐待の一種で、相手の現実認識や感覚を巧妙に否定・操作し、精神的に追い詰める行為を指します。
具体的には、
- あなたの記憶や感覚を否定する
- 「それは君の思い込みだ」と現実をねじ曲げる
- あなたに「私がおかしいのかな?」と思わせる
- 最終的にあなたの判断力を奪う
こうして、加害者はあなたの判断力を奪い、混乱させ、コントロールしやすい状態に追い込んでいきます。
あなたが「私がおかしいのかな?」と疑い始めるのは、まさにこのガスライティングの罠なのです。
本当は自分の感情をコントロールできない未熟な人
健全な大人なら、イライラしても、
- 「ちょっと疲れてるから、後で話そう」
- 「僕はこう感じたんだけど、君はどう思う?」
- 「お互い冷静になってから相談しよう」
こんな風に話し合いで解決しようとします。
しかし、怒鳴りつける人は、
- 自分の気持ちを言葉にできない
- 相手の話を聞く余裕がない
- 威圧することでしか問題を「解決」できない
つまり、大人としてのコミュニケーション能力が不足している人なのです。
怒りの正体:実は「二次感情」にすぎない

怒りの奥には別の感情が隠れている
心理学では、怒りを「二次感情」と呼びます。なぜなら、怒りの奥には必ず別の感情があるからです。
本当に感じている一次感情:
- 不安:「思い通りにいかない、どうしよう・・・」
- 寂しさ:「理解してもらえない、悲しい」
- 恥ずかしさ:「馬鹿にされた気がする」
- 無力感:「自分には価値がないのでは・・・」
健康な心を持つ大人なら、こうした一次感情を素直に伝えられます。
「不安だから相談したい」「寂しいから話を聞いてほしい」といった具合に。
未熟な人は全部「怒り」に変換してしまう
感情を上手に表現できない人は:
- 不安になっても「怒る」
- 寂しくても「怒る」
- 恥ずかしくても「怒る」
- 無力感を感じても「怒る」
なぜなら、怒ることで相手を黙らせれば、一時的に楽になれるからです。
しかしこれは、感情的に子どものまま大人になった人の対処法なのです。
「感情は自分のもの」——他人にコントロールされるものではない

あなたには他人を怒らせる魔法の力はありません
もしあなたに「人を怒らせる力」があるなら、嫌いな人を怒らせて困らせることもできるはずです。
しかし、実際はそんなことできません。
なぜなら、感情はその人自身が決めるものだからです。
同じ出来事を経験しても、人によって感じ方は違います。
- Aさんは怒りを感じる
- Bさんは心配になる
- Cさんは「大丈夫」と笑う
- Dさんは何も感じない
このように感情は、その人の心の内側から生まれるものなのです。
「怒らせたお前が悪い」は完全な責任転嫁です
「お前が俺を怒らせた」と言う人は、
- 自分の感情の責任を他人に押し付けている
- 感情をコントロールできない自分を隠している
- あなたに罪悪感を植え付けて支配しようとしている
本来ならば、例えば「僕は○○なことで不安を感じているから、一緒に考えてほしい」と伝えるべきなのに、それを「お前が悪い」と責任を転嫁してしまうのです。
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怒りは「無力感」の裏返し
DV・モラハラ加害者に多く見られる共通点のひとつが、内面の深い無力感です。
「自分には価値がない」「誰にも認めてもらえない」といった、言葉にできない劣等感や不安を、心の奥に抱えています。
その苦しさを隠すために、次のような行動に出るのです:
- 相手を威圧して「強い自分」を演出する
- 怒りで相手を黙らせて優位に立とうとする
- 「お前が悪い」と言い続けて、自分を正当化する
つまり、怒りを振り回す人ほど、内面は弱く、傷つきやすく、不安定であることが多いのです。
それを認める勇気も、向き合う力もないから、怒りという攻撃でごまかしているにすぎません。
対話ができない=大人として未完成
健全な人間関係では、たとえ意見が食い違っても、こうした対話が可能です:
- 「僕はこう思ってるんだけど、君はどう?」
- 「どうしたらお互い気持ちよく過ごせるかな?」
- 「これから気をつけるから、一緒に考えてくれない?」
しかし、怒鳴ったり威圧的になる人は、こうした対話を拒みます。
- 相手の意見を聞く気がない
- 一方的に自分の要求だけを押しつける
- 怒りの力で問題を“なかったこと”にしようとする
これは、人と向き合うための成熟したコミュニケーション力が欠けている証拠です。
怒ることで物事を支配しようとするのは、大人として未完成であるというサインでもあります。
DV・モラハラの「暴力のサイクル」を知っておこう

3つの段階を繰り返す巧妙な仕組み
DVやモラハラは、ただ怒鳴ったり責めたりするだけではありません。
「優しさ」と「暴力」を繰り返す、巧妙なサイクルによって、あなたの心を少しずつ追い詰めていくのです。
多くの被害者が陥るのが、この「暴力のサイクル」と呼ばれる3つの段階です。
STEP
【第1段階:緊張期】
- 些細なことでイライラし始める
- 言葉の端々にトゲが増え、空気が重くなる
- あなたが「怒らせないように」と必死に気を遣う
家の中にピリピリとした緊張が走り、あなたは常に地雷を踏まないように生きることになります。
STEP
【第2段階:爆発期】
- 「お前が俺を怒らせた」と責められる
- 怒鳴る、物に当たる、睨む、時には身体的な威圧
- あなたがひたすら謝り、場を収めようとする
この時、相手は自分の怒りの正当化をあなたに押しつけ、「悪いのはお前だ」という構図を作り出します。
STEP
【第3段階:ハネムーン期】
- 急に優しくなり、穏やかに接してくる
- 「ごめん。でも、君のことを思って言ったんだよ」などと正当化
- あなたは「やっぱり私が悪かったんだ」と思い込み始める
この“優しさ”に希望を感じてしまい、また頑張ろうと決意する——でも、それが次の「緊張期」の始まりになるのです。
STEP
このサイクルを繰り返すうちに…
この3つの段階をぐるぐると何度も繰り返すことで、あなたの思考はこう変化していきます。
- 「自分さえ気をつければ平和に過ごせる」
- 「あの人も本当は優しい」
- 「私がもっと頑張らないといけないんだ」
そして気づけば、自尊心や判断力が奪われ、「逃げることすら考えられなくなる」ほど支配されてしまうのです。
あなたの心と体に起きていること

長期間の精神的攻撃は、脳にダメージを与えます
「お前が悪い」「お前のせいだ」と繰り返し責められ続けると、あなたの脳と心は確実にすり減っていきます。
医学的にも、長期間のストレスや精神的虐待は、脳の働きに明らかな影響を与えることがわかっています。
たとえば、以下のような変化が脳内で起こります:
- 理性的に考える部分(前頭前野)の働きが低下
- 恐怖や不安を感じる部分(扁桃体)が過敏になる
- その結果、冷静な判断が難しくなる
これは多くの研究で確認されている現象で、あなたが弱いからでも、あなたに問題があるからでもありません。長期間のストレスによる、脳の自然な反応なのです。
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「私が悪いのかも」と思ってしまうのは自然な反応
長期間「お前が悪い」「全部お前のせいだ」と責められ続けた脳は、ストレスにより知らず知らずのうちに変化を起こします。
たとえば、次のような状態が起きていませんか?
- 考える力が弱くなる
→「これって普通?」「私の感覚は正しい?」と自分の判断に自信が持てなくなる - 感情が不安定になる
→ 些細なことで泣いたり、怒ったり、自分でもコントロールできないことが増える - 自分の価値がわからなくなる
→ 「私って何のために生きてるんだろう」と感じるようになる - 現実感が薄れる
→ 相手の言葉に振り回され、「何が本当か」がわからなくなる
その結果、「もしかして私が悪いのでは…」という思考パターンが根づいてしまうのです。
でも、それはあなたのせいではありません。
それほどまでにあなたは長い間、心と脳にダメージを受けながら、必死に耐えてきたということなのです。
相手の怒りから自分を守る方法

心の中に「境界線」を引くという意識を持とう
怒られたとき、つい「私が悪かったのかな…」と反省してしまいがちですよね。
でもまず立ち止まって、自分にこう言ってみてください:
- 「これは相手の感情。私の責任じゃない」
- 「怒っているのはその人自身の選択」
- 「私は落ち着いていていい。その人の問題には巻き込まれない」
最初はこれらの言葉を唱えることに、違和感や罪悪感を覚えるかもしれません。
でも、それはあなたがずっと自分の感情より相手の機嫌を優先してきた証です。
だからこそ、今ここで「自分を守る境界線」を引く練習をしていきましょう。
怒りに付き合わないのは「逃げ」ではありません
相手が怒っているとき、あなたがすべきことは「正面からぶつかる」ことではありません。
- 無理に言い返す必要はない
- なだめる義務もない
- その場を離れるのは立派な自己防衛
怒りに巻き込まれても、解決するどころか、むしろ状況が悪化することがほとんどです。
だからこそ、あなたにはその場から離れる自由があるし、それは「逃げ」ではなく「選択」です。
むしろ、黙って耐え続けることの方が、心にも身体にも大きな負担をかけてしまいます。
「自分の安全と心を最優先する」ことが、あなたにとって一番の正解です。
まとめ:「お前が悪い」はウソです

「お前が俺を怒らせた」
この言葉は、加害者の未熟さと支配欲のあらわれにすぎません。
もう、自分を責めるのはやめましょう。
あなたが向き合っているのは、「怒ることしか知らない子どものような人」です。
その人の未熟な感情に、これ以上あなたの人生を振り回される必要はありません。
あなたには、
- 平和で穏やかな関係を築く権利があります
- 自分を大切にする権利があります
- 尊重され、安心して生きる権利があります
そして、あなたには、あなたらしく生きる力があります。
どうかその力を信じて、本来のあなた自身を取り戻していきましょう。